【インタビュー】「ストレンジャー・シングス」スティーブ役ジョー・キーリー、新境地のサイコスリラー『スプリー』 ─ 「この映画は風刺そのもの」


「8割が自分の運転」、特殊な撮影方法とアドリブへの挑戦
── 物語のほとんどが車内で展開されていきました。カートが設置した自撮りカメラから物語が届けられるという特殊な撮影方法でもありましたが、演じるにあたって何かこれまでの参加作との違いは感じましたか?
全然違いました。どちらかと言うと演劇のような感覚でしたね。自分自身がカメラを操る人になって、スマートフォンをいじくる。ほとんどがそれでした。カットすることも当然ありますが、大体はそこで起こっていることを1つのシーンとして続けるんです。おかげで、一般的な作品の撮影よりも没頭しやすくなります。マスターショットを撮ったり、撮影範囲を考えてクロースアップにしたり、ドアを解錠する時などの特別な撮影なんかも行ったりして。速いテンポで進んでいきました。あなたが言ったようにいつもよりユニークに感じましたね。
チェックリストを確認するのではなく、“これから4時間車のシーンの撮影をして、それから路上に設置されたカメラをチェックして、僕はボディカメラを装着しなきゃ”というように進めていったんです。毎日が全然違ってワクワクするような撮影で、とても特別に感じました。

── あなたの演技はとても自由で解放的に感じられました。アドリブシーンはあるのでしょうか?
まさにその通りなんです。良い着眼点ですね。撮影ではかなりのアドリブがありました。あとはユージーン監督とフェイクビデオみたいなものもたくさん作りました。アンボックス(編注:新しく買ったものの包みを開いて良さを確かめること)だったり、レビューだったり、人生を描くものだったり、そういったものですね。
ユージーン監督は僕をクレイジーにさせることに結構乗り気で、こういうのをカートイズム(kurtism)と呼んでました。それから彼(カート)がナーバスに陥るある社会的状況や瞬間で取る行動、ブツブツと言う言葉、そしてそれらが何を引き起こすのかなどを作り上げました。今作でのアドリブはとっても楽しかったですね。それがとても上手くいったんです。どのテイクもそれぞれ違うものに仕上がって、撮るたびに新しい何かがシーンに加わって。とっても楽しかったです。
── 劇中では激しくスリリングな運転シーンがいくつもありましたが、実際にご自身で運転されたのでしょうか?
たくさん運転しましたよ。8割は僕が自分で運転してたと思います。すごく楽しかったです。演技をしてる最中って頭のなかがいっぱいいっぱいで、すごく難しいんですけど、一番大切なことは頭の中を空っぽにすること。なので車を運転するというタスクがあったのはとっても良いことで、すごく集中できました。動作速度とかそういったのはあまり意識していませんでしたけど。
ただハリウッド・ブールバード(大通り)のシーンとか急ハンドルを切るシーンとかでは運転してないです。高速道路でのシーンも僕じゃないですよ。危険なものは運転しなかったです。それでもたくさんやりました。楽しかった。
── すごくヒヤヒヤしましたもん。
ホントですよ。

「アンチヒーロー」としてのカート、繊細なテーマ性
── ところで本作では、「SNSをどう使うか」、つまり投稿する側の視点も重要だったと思いますが、SNSを見る側の視点も大きなテーマだったと思います。事実、徐々にフォロワー(=見る側)を獲得していったカートは、彼らに扇動されて、自分の行動をエスカレートさせていくわけですから。これについてはどう思いますか?
あなたの言う通りです。彼を見ていた人たちもある種共犯ですよね。彼をそうするように煽って、後押しもして。そこには大きな主題みたいなものが隠れているんです。特に後半ではコメントスクロールのクレイジーさが度を越えていって。終盤10分では、カートに関わる全てがRedditとか4chan(※)のスレみたいな感じになっていったと思います。