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『スーサイド・スクワッド』監督、「魂こめたドラマをコメディにされた」 ─ 背景に『バットマンvsスーパーマン』『デッドプール』の存在

スーサイド・スクワッド
SUICIDE SQUAD and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. © 2016 Warner Bros. Entertainment Inc. and Ratpac-Dune Entertainment LLC. All rights reserved

DC映画『スーサイド・スクワッド』(2016)のデヴィッド・エアー監督による、自らの“ディレクターズカット版”に関するコメントが止まらない。『ジャスティス・リーグ』(2017)のザック・スナイダー監督が、当初の構想に基づく「スナイダー・カット」を製作すると告知されて以来、ファンの間では『スーサイド・スクワッド』にも同様の措置を求める「#ReleaseTheAyerCut」運動が盛んなのだ。

『スーサイド・スクワッド』は、エアー監督の構想通りではなく、再撮影・再編集によって作品が大幅に変更されたことで知られる。監督いわく、ワーナー・ブラザース&DCコミックスの幹部が『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)の不評にショックを受けたこと、折しも『デッドプール』(2016)が大ヒットを記録したことから、「魂をこめたドラマがコメディにされてしまった」というのだ。もともとは「整った、多層的かつ複雑で、美しく悲しい」作品になるはずだったという。

トッド・フィリップス監督の『ジョーカー』(2019)が、ダークすぎるという理由で撮り直され、編集し直されたらどうなるかを想像してください。『スーサイド・スクワッド』で起こったのはまさにそういうことです。僕のバージョンはうまくいってない、と直接言ってきた人間には貸しがありますよ。」

映画の前半部分、ジョーカーとハーレイ・クインのシーンも、「ダークすぎる」という理由から再撮影を余儀なくされたもの。本来のバージョンはクリストファー・ノーラン監督にインスパイアされたもので、ジョーカーは恐ろしく、ハーレイ・クインは複雑なキャラクターとして描かれ、ジャレッド・レト&マーゴット・ロビーも「素晴らしい演技だった」と明かされている。

エアー監督は、DCコミックスのキャラクターは「我々と同じように複雑で、深い感情がある。痛みや喪失感と向き合いながら、それでも善いことをするために選択していく」のが魅力だという。『スーサイド・スクワッド』は悪党たちの物語だが、きっと当初のアプローチには、こうした“エアー監督が考えるDCの魅力”が反映されていたのだろう。それにしても、『バットマンvsスーパーマン』の公開が2016年3月25日、『スーサイド・スクワッド』の米国公開が同年8月5日である。わずか4ヶ月で再撮影・再編集を行い、作品の方向性をガラリと変えたということなのだ。

ちなみに監督は、とあるファンがワーナーに対して「クリエイティブの自由を」と訴えかけるのに対して、「これは過去の話だし、関わっていた人たちは仕事を変えました。今のスタジオは素晴らしいところで、フィルムメーカーが自分のビジョンを実現するのを後押ししてくれる」とコメント。もっとも気になるのは、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』のキャシー・ヤン監督が、エアー監督に向けて「起こったことを心苦しく思います。そのつらさは私もわかります」と記したことだ。えっと……?

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Source: David Ayer(1, 2, 3, 4, 5), Cathy Yan

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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