故スタン・リーをマーベル作品に登場させるのは「搾取」? ─ 死者の肖像権めぐって波紋

亡くなったスタン・リーが、今後もマーベル作品に登場できる── 故スタン・リーの肖像権をマーベル・スタジオが新たに獲得したとの話題が、一部で波紋を呼んでいる。
数々のマーベル・キャラクターの生みの親であり、コミック界の伝説だったスタン・リーといえば、マーベルの実写映画作品にはほぼ必ずカメオ出演していることで知られていた。ファンの間では、劇中のどこかに登場するリーを探すのが恒例に。2018年11月に95歳で亡くなったため、出演は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)が最後となった。
マーベル・スタジオはこの度締結した新たなライセンス契約によって、スタン・リーの名前と肖像の使用権を新たに獲得。契約は2042年まで有効で、映画やテレビ番組、テーマパークを含む作品への登場や商品化が可能になるという。
ファンの間では、リーと再会できる将来を喜ぶ声がある一方で、疑問や懸念を示す意見もあるようだ。米IndireWireではそのいくつかが紹介されている。
拒否反応が示されているのは、主に死者を使った「搾取」であるという声だ。Twitter上では、「彼がIP(知的財産)化されるのを見るのは地獄のように辛い」「彼らがスタンの屍をパペットにして今後のマーベル映画に使うというわけではないにせよ、そういう手筈を整えているというわけだ」といった意見が見られている。あるファンは、「スタン・リーはもはや人間ではなく、今やマーベル・キャラクターとしてディズニーの指示通りに動くのだ」と批判している。
リーの権利を管理するGenius Brands社CEOのアンディ・ヘイワード氏は契約に際し、「敬意が払われているのであれば、歓迎します」とコメント。現に契約が締結されていることから、マーベル・スタジオ側のオファーが管理側にとって納得できるものだったと想像できる。
映像作品に登場させる場合は「デジタル技術やアーカイブ映像」になるというが、「少なくともファンが知る従来的な方法で映画にリーがカメオ復帰するという道を、必ずしも切り開くものではない」との情報もある。よって、リーのカメオ登場の伝統を継続するため、生前の姿を“デジタル蘇生”させるかどうかは不明だ。
例えば、リーの没後に製作された映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021)では、劇中の店に並ぶ雑誌表紙にリーが描かれているという形でのカメオ登場があった。こうした場合であってもリーの肖像権をクリアする必要があり、この度の契約にはそういった用途もあるのではないか。その他、リーの偉業を称えるドキュメンタリー作品や伝記作品、記念グッズ製作などの企画を検討する余地もあるだろう。いずれの場合でも、使用に関しての敬意や倫理観が伴われているかが重要となりそうだ。
Source:IndieWire