【ロケ地バーチャル探訪】死体を初めて見たのはいつ?『スタンド・バイ・ミー』に出会ったあの頃の思い出
昔の映画を観返すことが、ぼくの日常の大きな部分を占めている。
新しい映画は今この瞬間にも限りなく増え続けているので、おそらくは一生の内に観ることの叶う映画作品なんてものは、ずいぶんと限られたものになるだろう。
そんなわけで、日々観返している過去の映画を振り返る連作を、時々書き記してみようと思う。奇特な誰かがもしそんな他愛もない立ち話に付き合ってくれるのなら、それは心から喜ばしいことである。
♪When The Night Has Come…
昨日の夜、ぼくの何十本かの指に入る懐かしい映画を観返した。ロブ・ライナーの『スタンド・バイ・ミー』(Stand by Me)である。原作はマスター・オブ・ホラーの異名を持つスティーヴン・キング。けれどこの物語はホラーではない。ただ、根底にある核には、おそらくキングが常に作品の中で描いている根源的な恐怖や不安、あるいは幼い頃に抱え込んでいる闇のようなものが、静かに影を潜めている作品だと感じる。
もしまだ『スタンド・バイ・ミー』を未鑑賞の方や、もう何百回も鑑賞していて台詞が空で言えるよというような両サイドの方々を考慮して、内容についてはあまり触れないようにしよう。ただ簡潔に物語の概要だけを書き加えるとすれば、舞台は1950年代、オレゴン州の小さな田舎町キャッスルロックに住む4人の少年が、「死体探し」の小さな旅に出るという物語である。
ぼくがこの映画を初めて鑑賞したのは、ちょうどアメリカの田舎町での1ヶ月間の生活を終えて帰国した直後だった。オレゴン州ではなくアイオワ州の本当に小さな小さな田舎町だったが、『スタンド・バイ・ミー』の劇中に登場するようなメインストリートがあり、昔のアメリカ映画に出てくるような古びた映画館のある町だった。そしてそんなアメリカの田舎町には日本人など一切おらず、「日本人がやって来た」と新聞に記事が掲載された。
だからこの映画を観返す度に、あの夏の、異国での短い日々のことを思い出す。
今、ぼくはベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」を何度も何度もループで聴きながら、この文章を綴っている。もしこの後を読み続ける方がいるならば、同じように「スタンド・バイ・ミー」を流しながら読んでいただければ、少しはこの文章を盛り上げてくれるかもしれないと、そう付け加えておく。
この映画に登場する4人の少年を演じるのは、ゴードン・ラチャンス役のウィル・ウィトン、クリストファー・チェンバーズ役のリヴァー・フェニックス、セオドア・ドチャンプ役のコリー・フェルドマン、バーン・テシオ役のジェリー・オコンネル。そして大人になったゴードン役をリチャード・ドレイファスが演じている。その他にも、若かりし頃のキーファー・サザーランドやジョン・キューザックなども出演者として顔を連ねている。

数年前に撮影されたかつてのメンバー、そして監督のロブ・ライナーが集った際の写真がある。こういう写真をみると、嫌でも時の流れを感じざるを得ない。

ウィル・ウィトン(昔のカタカナ表記はウィートンだった気がするが)は、TVシリーズの『新スター・トレック』(Star Trek: The Next Generation)においてウェスリー・クラッシャー役を演じていたが、その後の活動については日本ではあまり知られていない。しかし現在でも映画やテレビで俳優あるいは声優としてコンスタントに活動しているということである。
Tabletop season 4 finally begins, with LANTERNS. https://t.co/MpKmMDf1CX pic.twitter.com/4BKw44LpCO
— Wil Wheaton (@wilw) 2016年11月2日
子役時代にアイドル的な人気を博したコリー・フェルドマンはその後に薬物に溺れてしまい、長い間、映画などで顔を見る機会はほとんどなくなってしまった。しかし2000年代に入り、過去に人気があった有名人が出演する「あの人は今?」的なリアリティ番組に出演しながら、徐々にキャリアを立て直しているという話を聞く。先日のハロウィン時期には過去の出演作『グレムリン』(Gremlins)のパロディ企画『グロブリン』(Groblins)に保安官役として出演している姿を目にして、やや痛々しくはあったが、少しだけ安心した。そして現在は「Corey’s Angels」というユニットで音楽活動をしているようだが・・・、迷走しないことを願っている。
HAPPY HALLOWEEN #EVERYBODY WITH LOVE FROM ME & @CoreysAngels pic.twitter.com/zkeKnQTZTY
— Corey Feldman (@Corey_Feldman) 2016年11月1日
ジェリー・オコンネルは、前述の写真を見てもわかるようにあの頃のデブキャラではなく、長身のスマートな体型へと変化を遂げている。そして現在でも俳優活動は続けているようであり、時には脚本やプロデュースも手がけているようである。ぼく自身が『スタンド・バイ・ミー』以外に観たことのある彼の出演作は『ジョーズ・アパートメント』(Joe’s Apartment)、ゴキブリをテーマにしたコメディ映画だが、なかなかの出来栄えだったと記憶している。
On @NJTRANSIT and run into @sternshow Superfan @ImMedicatedPete pic.twitter.com/1H44GRbmra
— Jerry O’Connell (@MrJerryOC) 2016年10月31日
そして、残念ながらリヴァー・フェニックスは、もうこの世にはいない。1993年のハロウィンの日の朝に、当時ジョニー・デップが共同所有者のひとりであったウェスト・ハリウッドのナイトクラブ「ザ・ヴァイパー・ルーム」の入口付近で、ヘロインとコカインの過剰摂取、いわゆるオーバードースによる心不全でこの世を去っている。その最期は親友だったレッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシスト、フリーことマイケル・バルザリーに看取られたといわれる。23歳という若さだった。もしまだ生きていれば、もしかしたらずいぶんと活躍していたかもしれないが、その姿が想像の域を出ることはない。

『スタンド・バイ・ミー』の舞台は今
では、いまあの映画の舞台になった場所は、いったいどんな風に様変わりしているだろうか。
まずは映画の冒頭で描かれているあのメインストリート、あのシーンが撮影されたのはオレゴン州のブラウンズビルにあるノース・メイン・ストリートという場所である。そして、ゴードンが雑誌を買って横切っていた町並みは、現在でも比較的その面影を残している。4人が集う隠れ家があったツリーハウスの木も、ゴードンがドラム缶に向かって銃をぶっ放したあの裏路地も、この町の中にまだしっかりと残っているそうである。時間をかけて歩き回ってよ〜く探せば、きっと見つかる筈である。
ぜひGoogleMapで、町を歩きまわってみて欲しい。https://goo.gl/maps/nMrcdyUc6eJ2

ラジオから流れてくる音楽にのせて、4人が線路の上を歩いてゆくシーン。印象的なこの橋にはもう線路は通っていないようであるが(あるいは初めからないのかもしれないけれど)、橋の面影はまだ残っている。
GoogleMapはこちらから。https://goo.gl/maps/NsH7F9fHE7U2

そしてあのガラクタだらけの自動車修理工場の廃車置場、あのシーンは映画の中でも際立って印象深い。重要キャラである犬のチョッパーも登場する。
GoogleMapはこちらからどうぞ。https://goo.gl/maps/3FrLkfLNpLB2

そしてここが、この映画のシンボルとも呼ぶべき、少年たちの旅の最大の難所。今ではもう線路は使われておらず、侵入しないようにバリケードがはられている。写真で見る限りだと、ほとんどあの映画のままのように見える。
GoogleMapで行ってみよう!https://goo.gl/maps/hA1PqiACm972

昨日の夜に観返したばかりの映画であるが、こうやって改めて振り返ってみると、またすぐに観たくなる。それが名作と呼ぶべきものだろうと、ぼくは思う。映画のラストで、大人になったゴードンがタイプライターで書き記していた言葉をもってこの文章を〆ようと思っていたが、やはりあえてここには書かないでおこう。
まだ未鑑賞の方にはぜひこの作品をオススメしたいし、すでに鑑賞済みの方にも機を見て観返すことを強くオススメしたい、そんな映画である。
それでは最後に、この曲で。
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=jRbTJRT7SRQ]