頭をカラに!秋の夜長とスティーブン・キングの『珍作』ホラー達

「みんな、そろそろピエロ・ヒステリーから目を覚まそう。ピエロの多くは善人で、子どもたちを元気づけ、人々を笑わせるものだ。」
今、全米を恐怖のどん底へと突き落としているピエロ騒動にスティーブン・キング御大の放ったツイートである。
かつて名作『IT』にて世界中の子供達にピエロトラウマを植え付けた創造主からのなんともまあ、慈愛に満ちたお言葉である。
筆者の周りでキング原作映画化作品といえば『シャイニング』『スタンドバイミー』『ショーシャンクの空』『グリーンマイル』は何かと話題に上がるのだが。
・・・いやいや、もっと語るに価するキング作品は数多く存在する。むしろキング作品の魅力は語られない作品にこそ隠されていると筆者は思う。今日はその中でも厳選した3本を取り上げよう。
『マングラー』1994年
先ずはこの作品から取り上げよう。
アメリカのド田舎クリーニング工場でひょんなことから処女の生き血を吸ったプレス機が悪魔の化身と化し、従業員達を片っ端から食べていく・・・と書いていて頭が痛くなるようなストーリーである。だが監督トビー・フーパーの徹底的なゴア描写(プレスに挟まれた死体描写は鳥肌モノ)や残忍な工場長役のロバート・イングランド(フレディ・クルーガー役でお馴染み)が悪態を吐きながら歩行器姿で歩き回る怪演には一見の価値がある。だがヤケクソになったのか映画のクライマックス、悪魔の人肉プレス機がなんとトランスフォーム(!)しヨタヨタと歩き出す。主人公らをターミネーターの如く追いかけっこする様に絶句するだろう。こんなのはまだまだ序の口である。
『地獄のデビル・トラック』1986年
こちらは好事家の間でも伝説的な作品である。何よりキング御大が自ら監督した歴史的作品であるのだから。
しかし御大自身が好き放題した結果、トップクラス級の珍作へと化けてしまった。
ストーリーと言えばこうだ、地球を謎の彗星が通過した日、突如として機械が人間達を襲い出す・・・さっきと一緒だ。
人間を襲う機械達は実にユニークで自販機が缶ジュースをぶつけてきたり、トラックが追っかけてきたり、機関銃が勝手に撃ってきたり(あえて言うが虚言ではない)
中盤に登場する新婚カップルの新婦が映画史上最高のブスだったり劇中BGMをACDCが担当していたり、といった余計なノイズもこの作品を更に引き立たせてくれる。
作品を通して物質社会に対する警鐘や彗星は人知を超えた高次元の存在だった・・・というテーマやオチなど無い。
『そんなつまらない作品など誰が見たいんだ?』
エンドロールで御大の説教を聞かされたような気分に浸れる必見の作品である。
『ドリームキャッチャー』 2003年
最後に私が御大作品で最も好きな一本を紹介しよう。2003年、筆者が中学2年生の時この作品が劇場公開された。
やたら流れるCMの『見せてあげよう、見たことを後悔するものを・・・』のコピーに騙された筆者はなけなしの2千円札を握りしめ、伊丹市のTOHOシネマズで鑑賞した。人生で初めて一人で行った映画館でもあった。そして見終わった後あまりの衝撃に放心状態となり原作小説まで購入してしまった。
毎年冬山で鹿狩りを楽しむ特別な絆で結ばれた4人の旧友たち。しかし楽しむ彼らの前に不吉な現象が出現する。逃げ惑う動物たち、空を飛び交う軍のヘリコプター、雪山で遭遇した瀕死のハンター。それは20年前彼らに起こったある不思議な出来事の前兆に過ぎなかった・・・
こう文字に起こすととても魅力的なストーリーである。実際当時の筆者も引き込まれていった。だが30分後突如として御大マジックが発動する、『宇宙人オチ』である。
壮大なネタバレの後、中年男達のジュブナイル物語は血みどろエイリアン感染大パニックへと躁状態に突入していく。当時筆者は劇場で呆然としてしまった。
しかしながら名匠ローレンス・カスダンの卓越した手腕(この12年後、彼はスターウォーズ/フォースの覚醒脚本を手掛けることになる)がストーリー展開を飽きさせず、
無駄に豪華なキャスト陣(トーマス・ジェーン/ダミアン・ルイス/ドニー・ウォールバーグ/トム・サイズモア/モーガン・フリーマン)らの演技アンサンブルで『あれ、月刊ムー購読されてたんですか?』と言った野暮な思考を忘れさせてくれるのである。
エイリアンの造形もなかなか素晴らしく、グレイ型エイリアンことイスター・ゲイの飼っているナメクジ状ペニ○型ペットは人体を食い破ったり、股間に噛み付いたりと好き放題暴れてくれるからサービス精神旺盛である。
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