【あなたの知らないスターウォーズ】ストーム・トルーパー生みの母、悲運の造形師リズ・ムーア物語

彼女が誰だかわかりますか?

いよいよ来月劇場公開が迫るスターウォーズアナザーストーリー『ローグ・ワン』。公開を目前に控えて、様々な情報が予告編などで既に露出されており、劇中登場予定のキャラクターなども網羅されつつあります。中でも、帝国側、デストルーパーやショアトルーパーなどと銘打たれた、様々なバリエーションの「機甲歩兵」の新規デザインが、公のものとなっています。このことを指して、「ローグワン」の期待度が高いだの低いだの言う気は毛頭ないということを、最初にお断りしておきますが、こと、トルーパーの容姿に関してだけ、筆者は個人的に、「ああ、今回のトルーパーのデザインもまた、初代のデザインより好きになれることはなさそうだ。」と、なかば諦めに似た感情を抱いております。
懐古厨とののしられてしまいそうですが、客観的事実として、エピソード4~6のオリジナルトリロジーに登場したストームトルーパーの特にヘルメットのデザインは、ダースベイダーなどと並んで、スターウォーズの魅力の最たる部分、「優れたデザイン」の象徴として扱われてきました。
私がここで言葉を尽くさなくても、玩具屋や雑貨屋のスターウォーズ関連商品コーナーを訪れれば、初代トルーパーをモチーフにした商品群がそのことを裏付けてくれています。スターウォーズを全く知らない、見たことがないという人でも、このトルーパーを目にしたことがない人はいないでしょう。まさに「知らない人はいない」ポップカルチャーを代表するアイコンとなった初代トルーパー。
一般的に、このトルーパーをデザインしたのは、ジョージ・ルーカスによるスターウォーズの世界のイメージを、誰の目にも明らかな絵で具体化した、コンセプトアーティストの巨人ラルフ・マクォーリーその人だとして、知られています。筆者のようなオリジナルトリロジー狂信者は、その名を文中で呼び捨てにすることも憚られるようなラルフ・マクォーリー御大、人によってはSWにとってルーカス以上の功労者と呼ぶ偉大なアーティストです。
ストーム・トルーパー 幻のコンセプト・デザイン
上の2つの画像は、ラルフ・マクォーリーが、ストームトルーパーのために描いたコンセプトアートとデザイン案です。
いかがでしょうか、皆さんがよく知るストームトルーパーと、すごくよく似ていますが、つぶさに見ると細部にわたる差異がお判り頂けると思います。今となっては、トルーパーのデザインが、このマクォーリーのコンセプトに限りなく近い状態のもので世の中に出ていたらどうなっていたか、知る由はありませんが、はっきり言えるのは、前段でつらつら述べたような、ポップカルチャーアイコンとして世界中の人間が知っているストームトルーパーの意匠は、「これとはちょっと違っていた」ということです。
デザインの世界では、ディテールの違いは「小さい」ことではありません。ことキャラクターの印象を決定づけるヘルメットのデザインともなれば、なおさら。パーツが同じでも、その大きさ、配置の間隔などで受ける印象が大きく変わってしまうことは、例えば人の顔の話として考えれば腑に落ちやすいのではと思います。
これはストームトルーパーに限った話ではないのですが、コンセプトアートというものはあくまで「コンセプト」、製作陣がイメージを共有するための見取り図のようなものです。二次元のイメージから、実際に撮影で使う衣装ないし、小道具大道具といった「3次元」のものに落とし込む作業には、コンセプトアートを描く才能とは、また別種の「造形能力」が必要とされます。
- <
- 1
- 2