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「ストレンジャー・シングス」とかでメタルをもっと推したい ─ 意外と少ない、ヘヴィメタル系作品

ストレンジャー・シングス
STRANGER THINGS. Joseph Quinn as Eddie Munson in STRANGER THINGS. Cr. Courtesy of Netflix © 2022

メタラー、と自称するのは恐れ多いが、カジュアルなメタルファンとして、映画やドラマを観ていて時々ちょっぴり寂しく思うことがある。メタルが大々的にフィーチャーされる作品が。

メタルのみならず、「洋ロック」がすっかり鳴りを潜めた現在。ヒットを記録したブロックバスター作品で、きちんとバンドがフューチャーされたのはいつが最後だろう?例えば『トランスフォーマー』シリーズでは、いわゆるニュー・メタルに分類されるディスターブドやリンキン・パークらの楽曲が起用されたが、それから早15年が経つ。

往年のハードロックは、今もフィルムメーカーたちに愛されているようだ。アメコミ作品では、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でハートの「Crazy On You」やスウィートの「Fox On The Run」が、『ソー』シリーズでレッド・ツェッペリンやガンズ・アンド・ローゼスがフィーチャーされ、DCドラマ「ピースメイカー」でも数々のバンド楽曲が起用されたが、いずれも“メタル”というより、ハードロックの文脈だ。

ヒップホップは、『ワイルド・スピード』シリーズなど数々のブロックバスター映画のトーンを決定付けている。一方でメタルが活躍する機会は、思いの外少ない。このジャンルが、パロディやコメディ、ドキュメンタリーを除いて長編映画の真面目な題材になることは珍しいのである。『サウンド・オブ・メタル』(2019)は良作だったが、メタルという音楽自体が必ずしも本質的な題材というわけでもなかった。他には『ロード・オブ・カオス』(2019)、あるいはジョセフ・ゴードン=レヴィット主演の2011年の映画『メタルヘッド』まで遡らなくてはならない。

大人気ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」もそうだ。同作は1980年代カルチャーをテーマとしており、当時の楽曲が劇中で大々的に使用される。しかし意外なことに、その多くがポップスやハードロックで、メタルが登場する場面はあまり多くないのだ。

イレブンやウィル、マイク、ダスティン、スティーブといった面々が、普段あまりメタルを愛聴していなさそうという都合もある。密かに期待していたのがビリーだ。彼はシーズン2第8話にて、自室で身支度しながらメタリカの「The Four Hoesemen」を爆音で流していた。また、ビリーたちが出かけたパーティーでは、モトリー・クルーの「Shout at the devil」が流れる場面も。ロングヘアにデニムジャケットという出立もまさに80年代のメタルへッズそのものだったが、残念なことにビリーは物語から去ってしまう。

そこで次に注目したいのが、シーズン4より新登場したエディ。ゲーム「ダンジョンズ&ドラゴンズ」愛好会の「ヘルファイアクラブ」リーダーを務めるエディは、ビリー同様のロングヘアに、W.A.S.P.のピンズやDIOのパッチがついたデニムジャケット着用というメタルファッションだ(ちなみに髪はウィッグである)。

劇中ではバンドを組んでいるという設定もあり、そのメンバーはアイアン・メイデンやブラック・サバスのTシャツを着ていた。トレーラーハウスの自室では自慢のエレキギターを恋人さながら大切にしている様子も描かれたほか、オジー・オズボーンの名を口にする場面もあった。

ストレンジャー・シングス
STRANGER THINGS. Joseph Quinn as Eddie Munson in STRANGER THINGS. Cr. Tina Rowden/Netflix © 2022

演じたジョセフ・クインは、役作りのためにヘヴィメタルを聴きまくったそうだ。米Deadlineで挙げられているバンド名は、ブラック・サバス、メタリカ、DIO。実はジョセフ、元々ギタープレイヤーで、2003年の映画『スクール・オブ・ロック』に憧れて7歳の頃から弾いていたことがあったという。だから愛用はギブソンのSG。もっとも、「かなりブレイクがある」とのことで、「自分のギターはうまくはないけれど、でも弾ける」と英Entertainment Weeklyに話している。

「ストレンジャー・シングス」シーズン4の予告編では、「裏側の世界」の屋根の上で、エディが赤い稲妻をバックにギターの速弾きを轟かせるという、最高にメタルな映像があった。このシーンはVol.1には登場しなかったので、Vol.2で観られることだろう。ドラマでは音楽が物語の鍵となっていたので、もしかするとエディの奏でるヘヴィメタルが世界を救う……なんて展開もあながちあり得なくもないから胸アツだ。

「ストレンジャー・シングス」の舞台となる1980年代といえば、UKではいわゆるニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルが誕生し、USではメタリカやメガデス、スレイヤー、アンスラックスといった「スラッシュメタル四天王」が誕生し世界的ブームになっていた頃で、メタルの黄金期とされることも多い。「ストレンジャー・シングス」の物語は残すところシーズン4後半戦とシーズン5のみとなるが、エディを通じて当時のメタルのエネルギッシュな魅力が描かれると期待したい。

そもそもメタルは、「ストレンジャー・シングス」のようなダークな作品と相性が良いはずである。例えば、マーベルのダークヒーローを扱う新作ゲーム『ミッドナイト・サンズ』予告編ではメタリカの「Master of Puppets」が起用されているが、ゴーストライダーやヴェノム、ブレイドといったキャラクターたちの世界観にこの上なくハマっているではないか。

DCコミックスではメタル的なテイストを取り入れたクロスオーバーシリーズ、その名も『デスメタル』が2020〜2021年に展開された。刊行にあたっては、オジー・オズボーンやメガデス、ラクーナ・コイルにセパルトゥラといったヘヴィメタルシーンの面々をフィーチャーし、ヴァリアントカバーや独占インタビューを掲載する取り組みも行われている。マストドンらの楽曲を収録したサウンドトラックもリリースされた。

「ストレンジャー・シングス」の世界の中でヘヴィメタルを体現するエディが、劇中で自分たちを「変人」と自虐したり、『ゴジラvsコング』(2021)で主人公の友人が明らかに場違いな様子でジューダス・プリーストを爆音で流していたように、物語におけるメタル愛好家は「変わり者」「日陰者」として描かれることも少なくない。

しかし、一口にメタルといってもそのジャンルは様々であり、とりわけ2000年代に興隆したメタルコア、2010年代以降のニューメタルコア/ニューコアなどの中には、伝統的なヘヴィメタルのイメージとはまた異なるスタイリッシュでモダンなエナジーを有するバンドもたくさんいる。だからオールドスクールのメタルバンドだけでなく、現代的なメタルバンドたちがフィーチャーされてもいいはずだ。他の音楽ジャンルでは味わえない高揚感や重厚感が魅力のメタルが、もっと様々な場面でカッコよく起用されるようになると嬉しい。エディ、死なないで……。

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Source:Deadline,Entertainment Weekly

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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