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『ブレードランナー』デザイナー、巨匠シド・ミード氏が逝去 ─ 「ビジュアル・フューチャリスト」として未来像描く

ブレードランナー
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『ブレードランナー』(1982)や『エイリアン2』(1985)などを手がけたコンセプト・アーティストであり、インダストリアル・デザイナーの巨匠シド・ミード氏が、2019年12月30日(米国時間)、カリフォルニア州パサデナの自宅にて逝去した。86歳だった。ミード氏は3年にわたり、悪性リンパ腫を患っていたと伝えられている。

シド・ミード
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Syd_Mead_LF.JPG

1933年生まれのミード氏は、フォード・モーターの社員としてデザインを手がけたのち、退社後はソニーやフィリップス・エレクトロニクスなどのインダストリアル・デザインを担当。その後、1979年『スタートレック』から映画界に進出し、『ブレードランナー』では都市や車両、ガジェットなどのデザインを務めて“SF映画の革新”といえる表現を世に送り出した。

その後は「ビジュアル・フューチャリスト」として映画や企業など数多のプロジェクトに参加。長編映画としては『トロン』(1982)や『エイリアン2』、『ミッション・トゥ・マーズ』(1997)、『M:i:III』(2006)、『エリジウム』(2013)、『トゥモローランド』(2015)のほか、『ブレードランナー 2049』(2017)にも携わっている。日本でも1980年代から熱い支持を集め、いくつもの企業プロジェクトのほか、アニメ「YAMATO2520」(1995)「∀ガンダム」(1999)にデザインを提供。今年、2019年には34年ぶりとなる個展「シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019」が開催され、3万2,000人もの動員を記録した。

2019年9月、ミード氏は引退を発表。米美術監督組合(ADG)は功績を称え、2020年2月の第24回授賞式にて「ウィリアム・キャメロン・メンジーズ賞」を授与することを決定していた。しかしながら、授賞式を待たずにミード氏はこの世を去ることとなった。逝去の報にあたり、ADG会長のネルソン・コーツ氏は以下の声明を発表した。

「先進的イラストレーターでありコンセプト・アーティストであるシド・ミードの訃報に接し、非常に悲しんでいます。映画というものを形づくるうえで、彼の仕事は、未来を視覚化する類まれなる才能とともに、重要かつ唯一無二のものでした。我々の時代で最も影響力の大きいコンセプト・アーティストのひとりとして、また巨大なイマジネーションを証明するものとして、未来のテクノロジーの世界を描いた彼のビジョンとイラストレーションは残り続けていくことでしょう。」

なお2019年11月には、ミード氏とともに『ブレードランナー』の世界観を確立したキーパーソンのひとり、プロダクション・デザイナーのローレンス・G・ポール氏も81歳で逝去している

Sources: The Hollywood Reporter, Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。