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ショットが映画になる瞬間、エドワード・ヤン『タイペイ・ストーリー』レビュー

台湾の鬼才、エドワード・ヤン監督の長編第二作目『タイペイ・ストーリー』。そのデジタルリマスター版が、先日閉幕した第17回東京フィルメックスにて、特別招待作品として上映された。

エドワード・ヤン監督といえば、2015年には『恐怖分子』のデジタルリマスター版が劇場公開されて、台湾ニューシネマ以降の若い観客たちを魅了し、2017年には伝説的傑作『牯嶺街少年殺人事件』のデジタルリマスター版の劇場公開も決定している。再評価が高まっていることもあり、本作にも多くの観客が詰めかけた。

本作では、80年代に台湾ニューシネマを担った代表的存在であり、ヤンの盟友であるホウ・シャオシェンが製作・脚本・主演を務め、ヤンの当時の妻であるツァイ・チンがヒロインを演じている。

http://filmex.net/2016/program/specialscreenings/ssc07
http://filmex.net/2016/program/specialscreenings/ssc07

日常の美を映す画面

経済成長の波とともに大きく変わっていく台北を舞台に、ひと組の男女を捉え見つめる。
部屋と大きな窓。簡素で均整のとれた画面から、この映画は始まる。部屋にはまだ何もない。ささやかな希望を胸にこの部屋を訪れた男と女だけである。部屋は薄暗く、窓からは外の景色がわずかに見えるが、判然としない。

『タイペイ・ストーリー』では、その当時の「台北」の絶えず蠢く都市の姿が捉えられている。この蠢きにはもちろんそこに生きる人々も含まれる。
本作で印象的なのは、繊細に捉えた男女の心の機微や、蠢く都市と個人の関係もさる事ながら、やはり“日常”そのものから、ある種の“美”を見出すその画面づくりである。
規則的に稼働し人々を吸い込み吐き出し続ける回転ドア。男女を分断する自動車の往来。大きなネオン看板の眩さの前に影となってしまう男女。初老の男の懐かしき思い出話とともに延々続く、建物と走る車の影の重なり。夜の闇に揺れ漂う紫煙。鏡に映る車の像の歪み。
それらのショットの一つひとつは、都市や、男女や、過去や、未来や、閉塞感や、憧れや、郷愁などを表象して美的価値を持ち、またクレショフ効果よろしく的確にモンタージュされることで、それぞれのショットの意味が明確性を帯びる。
そのショットとショットの関係性の美しさは、極論を言えば、数ショット組み合わせただけで、“映画”としての誕生を許されるはずだ。

本作も2017年に劇場公開が決定している。
過去の栄光に浸ることもできず、漠然とした希望を未来に見出すこともできない。完全なる青春の終わりの映画。
なぜこうも惹きつけられるのか。いま一度、エドワード・ヤンの美学をショット単位で堪能したい。

Eyecatch Image: https://www.filmlinc.org/nyff2016/films/taipei-story/

Writer

Yushun Orita

『映画と。』『リアルサウンド映画部』などに寄稿。好きな監督はキェシロフスキと、増村保造。

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