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クリストファー・ノーラン最新作『TENET テネット』は米映画界復活の「のろし」となるか ─ 初動成績1億ドル超えの期待と現実

TENET テネット
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2019年3月中旬から、ハリウッドは新型コロナウイルス(COVID-19)の大打撃を受けている。映画・ドラマの撮影が全面的に中断されただけでなく、映画館の大多数は休業状態となり、興行収入の集計も行われなくなった。全米最大の映画館チェーン、AMCには経営破綻の危機が迫っていると伝えられている。

そんな中、米国の映画業界が望みを託す作品がある。『ダークナイト』3部作や『インターステラー』(2014)などで知られるクリストファー・ノーラン監督の最新作TENET テネットだ。各社が夏にかけての映画の公開延期を次々と決めていく中、ワーナー・ブラザースは『TENET テネット』の米国公開日を2020年7月17日から変更していないのだ。今もっとも新作が待たれるフィルムメーカーの最新作は、業界復活の狼煙(のろし)となるか。

Deadlineによれば、現状を踏まえたうえでも、ワーナー側は、『TENET テネット』の米国オープニング興行収入(7月17~19日)が1億ドルを突破することは可能と見込んでいるという。ひとまず非常にポジティブな予測だと言わざるを得ないものの、すでにジョージア州は4月27日(米国時間)から映画館の営業再開を“ソーシャル・ディスタンスを厳しく守ることを条件に”認めたのだ。これを皮切りに映画館に客足が戻れば、約3ヶ月後にはありえない成績ではないということだろう。

もっとも、行政の事情と映画館の事情は異なる。今後、映画館は従来の方法を再検討し、観客と従業員、また観客同士の接触をできるかぎり減らすよう努力しなければならないのだ。チケットの販売は、たとえば客席の前後左右1席ずつを空けるといった形で行われることになるだろう。客席だけでなく、売店やコンセッション、トイレなどの消毒も入念に実施されるはずだ。入場時、チケットの確認方法についても見直しが求められるかもしれない。従業員の体温測定や体調管理も重要だ。そして、そこまでの対策を取っても、“コロナ以前”の客足がいつ戻るかはわからない。

実際のところ、ジョージア州の映画館が4月27日から営業を始めることは難しいとみられる。営業にあたっての新たなルールを設け、従業員を一時解雇状態とした映画館がスタッフを呼び戻し、実際に営業再開にこぎつけるには時間がないのだ。現実的には5月末から6~7月にかけて、大手チェーンを含めた映画館の営業が再開されていくと予想されており、実際にAMCは6月中旬までの再開を目指すと表明している

いずれにせよ『TENET テネット』は、このまま予定通りの劇場公開を迎える場合、“ポスト・コロナ”最初の大作映画となるわけだ。もっとも、同じくDeadlineによれば、初動1億ドル突破を実現するには、映画館の客席の50%が利用可能であること、ロサンゼルスとニューヨークの映画館が順調に営業を再開していることが必要になるとのこと。現在もニューヨークは新型コロナウイルスが猛威を振るっており、住民は厳しい外出制限を課せられている。残り約3ヶ月、どこまで状況は好転するか。

一方で映画スタジオは、上映館数や興行成績をあらかじめ視野に入れたうえで大作映画の予算を決定する。したがって、映画館の営業再開が十分になされていない、満足のいく動員が見込めない状況では、続く大作映画の公開時期を決めづらいのも事実だろう。しかし人々の足を劇場に向かわせるのもまた、大衆への強い訴求力をもつ作品だ。まずはクリストファー・ノーランの最新作が、映画ファンを劇場に呼び戻すことに成功すれば、その後の映画業界にはなにかポジティブな影響が生まれるかもしれない。それに、その翌週には、実写版『ムーラン』の米国公開も控えているのだ。

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Sources: Deadline, The Playlist

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。劇場用プログラムや各種媒体への寄稿なども喜んで承りますので、お気軽にお尋ねください。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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