Menu
(0)

Search

ノーラン最新作『TENET テネット』完成済み、『インセプション』並みの完成度に ─ 7月米公開の現実的な条件とは

TENET テネット
© 2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

映画監督クリストファー・ノーランが、最新作『TENET テネット』を完成させたという。米Deadlineが報じた。本作は、新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けたハリウッドにおいて“復活”への希望を託された一作だ。しかし、予定通り2020年7月17日に米国公開できるかどうかはいまだ未知数。観客たちの安全確保と、興行面の成功のバランスを取る方法を、約2ヶ月で見出すことはできるのか。

今回の報道によると、製作費2億ドルという大作映画である本作を劇場公開するには、全世界の映画館の80%がオープンしていなければならないという。一説では、アメリカ国内で3,500館、世界で3万館以上の営業再開が必須とされているのだ。もちろん、米国内での成績を左右するニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの3都市も含まれる。特に甚大なダメージを受けているニューヨークでは、州内の経済活動が一部再開されているものの、都市部であるニューヨーク市について、ビル・デブラシオ市長が“6月前半の再開になる”との予測を示したばかり。いまだ映画館の営業再開について、正確な見通しは立たない状況だ。

Deadlineは、今後3週間以内にポジティブな兆候がみられないかぎり、『TENET テネット』の劇場公開は延期されるだろうと記している。2020年5月7日、米Varietyは「ワーナーは1週間以内に判断しなければならない」と伝えたが、その1週間はすでに経過した。時々刻々と状況が変化する中で、ワーナーは最終判断をできるだけ引き延ばす方針なのかもしれない。しかし、予定通りの劇場公開をギリギリで決断すれば、プロモーションの面では大きなリスクを背負うことになる。そもそも本作は、映画ファン待望のクリストファー・ノーラン最新作でこそあるが、原作なしのオリジナル企画、トップスター俳優の不在と、現在のハリウッドでは宣伝が難しい種類の作品なのだ。

一方で、『TENET テネット』の劇場公開をめぐる問題は、もはや本作だけの問題ではないだろう。なぜなら本作の公開が延期されれば、その直後に控えている『ムーラン』や『ワンダーウーマン 1984』など多くの映画に影響が及ぶ可能性が高いからだ。公開延期の場合、本作が『ワンダーウーマン 1984』の米国公開予定日である8月14日にずれ込み、『ワンダーウーマン 1984』が12月まで移動するとの噂もある。そこからドミノ倒しのように、さらなる余波が発生することも否定できない。

ちなみに、『TENET テネット』は、ノーラン監督の代表作である『インセプション』(2010)に並ぶ完成度に仕上がっているとのこと。ストーリーの詳細は不明だが、世界をかけめぐり、ノーラン作品でおなじみの“時間”というテーマを扱ったスリラーである本作は、おそらく「ネタバレ厳禁」と形容すべき一本だろう。なるべく理想的な形で、なるべく多くの観客が、この作品を映画館で観られるようになることを祈るほかない。

あわせて読みたい

Sources: Deadline, NHK

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。