ラース・フォン・トリアー最新作『ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト』に潜む、吸血鬼映画の影と「つみあげうた」の謎
かねてより注目を集めている、デンマーク映画界の至宝ラース・フォン・トリアーの最新作『ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト(原題:The House That Jack Built)』のイメージ写真が話題を呼んでいる。
本作は1970年代のアメリカを舞台に、12年間にわたり殺人を繰り返す連続殺人鬼ジャックの物語になると伝えられており、主人公のジャックをマット・ディロン、そしてヴァージという人物をブルーノ・ガンツが演じている。ガンツといえば、『ヒトラー~最期の12日間~』の本人かのようなアドルフ・ヒトラー役が記憶に新しい。
こちらが、ラース・フォン・トリアー監督自身によって撮影され、公開された写真である。

バラエティ誌によれば、ラース・フォン・トリアーは、この写真についてこのように述べているという。
“On the occasion of the shooting of ‘The House That Jack Built,’ I have made an evocative photo with a cinematic reference,”
『ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト』の撮影にあたり、私は映画を参考にして示唆深い写真を撮ったんだ。
この写真に写る、死神のような大鎌を持った男がマット・ディロン演じるジャックなのかもしれないが、詳細はわからない。ちなみにラース・フォン・トリアーが“参考”にした作品とは、同じくデンマークの映画監督カール・テオドア・ドライヤーによる、1932年公開の映画『吸血鬼』ではないかといわれている。同作品をご覧になったことのある方はおわかりかもしれないが、以下が参考になっていると思われるシーンである。そのまま、と言っても過言ではない。

この『吸血鬼』はアート的要素の強い映画であり、光と影が織りなす幻夢のような作風で長く評価されている作品でもある。ラース・フォン・トリアーの過去作品における、傑出したヴィジュアルから考えると、彼自身が大きな影響を受けている作品のひとつなのかもしれない。だとすれば上の写真は、『ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト』に、そのオマージュ的な隠し味が入っているという暗示だろうか。
タイトルに隠された「つみあげうた」の謎
また、本作の『ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト』というタイトルに聞き覚えのある方もいるのではないか。この言葉は、マザー・グース、すなわち英国の伝承童謡の中に登場する、いわゆる「つみあげうた」の『ジャックが建てた家』と同名なのである。筆者はずいぶん前から、個人的にそれこそが気になっているのだ。
この「つみあげうた」とは、歌詞に出てくる新しい出来事が、つねにそれ以前の古い出来事を含んでいるために、出来事が起こるたび歌の一節がどんどん長くなってしまうというもの。言い換えれば、ある意味では終わることがないのである。もちろん『ジャックが建てた家』は童謡なので、一応の終わりは設定されているが……。
もしかすると本作は、「つみあげうた」の『ジャックが建てた家』で歌われている内容に密接に関わっているのかもしれない。もしかして、ジャックの殺人に関することかな……。
『ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト』は2018年の公開予定だが、一体どんなものになるのだろうか。いまから楽しみで仕方がない。
source & Eyecatch Image: http://trustnordisk.com/content/berlinale-lars-von-trier-s-house-welcomes-distributors-exclusive