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ダーク・ユニバース『ザ・マミー』監督、「あの作品は人生最大の失敗」 ─ 公開から5年、当時を振り返る

トム・クルーズ主演『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017)は、ユニバーサル・ピクチャーズが古典的なモンスター映画を現代に蘇らせる「ダーク・ユニバース」の第1弾作品として華々しく公開された。その後のラインナップとして発表されていたのは、ジョニー・デップの『透明人間』、ハビエル・バルデムの『フランケンシュタイン』など。しかしその後、ダーク・ユニバースの第2弾・第3弾作品は製作されていない。

すべての原因は、『ザ・マミー』の興行的・批評的な惨敗にあった。公開と同年の2017年11月、すでにダーク・ユニバースは存続の危機を迎えていたのである。公開から約5年が経過した今、『ザ・マミー』の監督・脚本を務めたアレックス・カーツマンが当時を振り返った。米The Playlistにて、カーツマンは同作の製作トラブルを半ば認め、「あの作品は人生最大の失敗だった」と述べている。

「私は“成功から学べることは何もない、失敗から学ぶのだ”という考え方に賛成します。そして、あの作品は個人的にもプロフェッショナルとしても人生最大の失敗だったと思うのです。後悔は山ほどありますが、あの時に手にした贈り物もたくさんあった。それは言葉にしがたいほど素晴らしいものです。あの映画を作るまで、私は監督になることができていませんでした。」

カーツマンは『ザ・マミー』の製作を振り返り、率直に「本当に大変だったし、いろんな意味で指示を出す人間が多すぎた」と語っている。「ああいうミスを犯したことに感謝しています。そのことは自分を強い人間にしてくれたし、より明確なフィルムメーカーにしてくれたから」。それこそが“贈り物”だというカーツマンは、当時のトラブルの詳細を明かさないまでも、「今では“これは良くない”と感じた時に黙っていることはしない」と発言。さまざまな事情から、当時は監督のカーツマンが自らの意向を発揮できない環境であったことを示唆した。

「(今では)そういう感情を文字通り放っておくことはしないでしょうし、それは自分にとって価値のないこと。けれど(『ザ・マミー』のような)経験をするまではその境地にたどり着けなかった。歴史や偉業を成し遂げた人々に学べば、誰もが同じように“失敗があったおかげだ”と言うと思います。だから私も、今では感謝の気持ちをもって振り返るんです。そう思えるには時間がかかりましたが、あの作品のおかげでよりよい人生になったから。」

『ザ・マミー』の後、カーツマンは映画作品には携わっていないものの、「スター・トレック:ディスカバリー」(2017-)をはじめとするテレビ版「スター・トレック」シリーズで脚本家・監督・プロデューサーを務め、同シリーズはスピンオフ作品を含め大成功を収めた。そのほか『羊たちの沈黙』に基づく「クラリス」(2021)や、デヴィッド・ボウイ主演で映画化もされたSF小説『地球に落ちて来た男』のドラマ版「The Man Who Fell to Earth(原題)」(2022)など活躍を続けている。

かたやユニバーサルは「ダーク・ユニバース」の企画頓挫後、ユニバース構想ではなく、気鋭のフィルムメーカーがモンスター映画を再生させるプロジェクトを複数進行中。2020年にはエリザベス・モス主演『透明人間』がヒットしたほか、ニコラス・ホルト主演、ニコラス・ケイジがドラキュラ伯爵を演じる『レンフィールド(原題)』が2023年4月に米国公開される。

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Source: The Playlist

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。