『リアル蝿の王』、無人島生活を生き抜いた少年たちの実話が発売後5日で映画化決定

イギリス出身の作家ウィリアム・ゴールディングによる名著『蝿の王』を彷彿とさせるような無人島でのサバイバル生活を続けた少年たちの実話に基づく物語『The Real Lord Of The Flies』の映画化権を、『それでも夜は明ける』(2013)『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015)などを手がける製作会社New Regencyが獲得したことがわかった。米Deadlineが報じている。
“リアル蝿の王”という意味の『The Real Lord Of The Flies』は、オランダ出身の歴史家・ジャーナリストのルトガー・ブレグマン氏により出版された書籍『Humankind:A Hopeful History』に収録されたもの。2020年5月18日の英国での発売に先がけて、英The Gurdianに一部内容が公開されていた。この物語の映像化権を巡っては、発売前にも関わらずNetflixやMGM、Working Titleなど大手スタジオが争奪戦を繰り広げていたという。
物語は、トンガ王国にある寄宿学校での生活に退屈した6人の少年グループが、1965年に一隻の釣り船を盗んで冒険に出てから、大嵐に見舞われて8日間の漂流の後、無人島に漂着、その後15ヶ月にも渡るサバイバル生活を収めた冒険譚となっている。
無人島に漂着した少年たちの、互いを殺し合うまでに理性を失った姿が描かれる『蝿の王』とは異なり、『The Real Lord Of The Flies』の少年たちは、魚やココナッツ、鳥などを食べながら生活を送り、工夫を凝らしたチームワークを発揮して信じられないような逆境を乗り越えた。1年以上無人島で暮らしていた少年たちは、島の緑に覆われた崖に不自然な焼痕を発見したオーストラリア人の船乗りの男によって救出されている。
2020年5月10日、著者のブレグマン氏は、自身のTwitterにて、映像化権に興味を示す監督やプロデューサーから、メールが殺到していることを報告。「『The real Lord Of The Flies』の少年たちが50年経ってようやく注目を浴びているのがとても嬉しいです」との言葉を添えて喜びを示していた。
『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)や『ジョジョ・ラビット』(2019)などで知られるタイカ・ワイティティ監督もこの物語を絶賛。ブレグマン氏の投稿を引用し、問い合わせが殺到するブレグマン氏に「文化の盗用とか誤認を避けて、太平洋の真の声を伝えるために、ポリネシア人(可能ならトンガ人)のフィルムメーカーを優先すべきです」とアドバイスを与えていた。一方で「僕はおそらく出来なさそうです」とも述べ、残念そうな様子も見せていた。
映像化するスタジオの検討にはブレグマン氏だけでなく、当事者たちも交えて行われたという。書籍発売前から約2週間も繰り広げられていた争奪戦を終えたブレグマン氏は、「クレイジーなローラーコースターのようだった」と明かしている。企画には4人の漂流者たちと救出した船乗りの男性、ほか複数のトンガ人コンサルタントが企画に参加することになり、New Regency側も現地のクルーならびにフィルムメーカーと可能な限り協力して文化の真正性を伝えていくことを約束している。
Source:Deadline, The Gurdian, Rutger Bregman Twitter(1,2)