クリス・プラット『トゥモロー・ウォー』2051年の戦争に参加せよ ─ 未来SF×クリーチャー×ミリタリー超大作の見どころ

これまで、帝王サノスや恐竜を相手にしてきたクリス・プラットが、「今まで全く見たことがないような超大作」と自信たっぷりのSFアクション大作『トゥモロー・ウォー』がやってくる。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ジュラシック・ワールド』のクリス・プラットが主演/製作総指揮を務める最新作。現在と未来(2051年)を往来しながら、未知のエイリアンとの戦争を描く作品だ。Amazon Prime Videoにて2021年7月2日より240を超える国と地域で独占配信開始となったこの大注目作の強力な見どころをご紹介しよう。
未来の戦争に参加せよ!突然現れたタイムトラベラー
ある日、28年後の未来から兵士たちが出現。未来の人類は未知のエイリアン「ホワイトスパイク」と戦争をしており、人類は劣勢、滅亡寸前にあるのだという。そこで未来の人々は、彼らにとっての父母・祖父・祖母の世代、つまり現代の我々をリクルートし、戦闘に加わってほしいと要請にやってきたのだ。やがて、世界中の民間人がこの未来戦争に召集されることとなった。
クリス・プラットが演じる主人公は、しがない高校教師のダン・フォレスター。娘を持つ家族思いのダンの元にも召集がかかり、強制的に徴兵が決まってしまう。ダンは、世界中から集められた、ほとんど素人の民間兵たちと共に、未来での戦争に参加することとなる。そこでの軍務は7日間。軍務を終えた時点で生きていると判断されれば、左腕に取り付けられたデバイスによって自動的に現代に送り戻されるという。

武器と装備品が与えられたダンたちだが、その日のうちに緊急事態が発生し、急きょ未来へ“ジャンプ”させられることになる。訓練もできず、心の準備も整わぬまま、慌ただしく整列させられたダンたち。転送装置が起動すると、前方から一列ずつワームホールに吸い込まれ、続々と未来へ“出兵”していく。奇妙なワームホールを抜け、ダンが転送された先は、阿鼻叫喚と絶望のド真ん中だった──。
こんなエイリアン見たことない……恐怖の「ホワイトスパイク」
『トゥモロー・ウォー』で我々が対峙するのは、「ホワイトスパイク」と呼ばれる恐ろしいエイリアン。映画を見るまでは、予告編映像で確認できる以上の情報はなく、謎に包まれている。民間兵たちは何もわからないままこのエイリアンとの戦闘に送り込まれるわけだが、劇中でも出陣前の兵士が「写真やビデオはないの?どんな姿か知りたい」と尋ねている。しかし、それを事前に見てしまうと兵士が集まらないからと、秘密にされているという。それだけ恐ろしいインパクトがあるということだ。
予告編やティザーポスターを確認する限り、「ホワイトスパイク」は巨大な獣のようにも見えるし、昆虫のようにも見えるし、鳥のようにも、恐竜のようにも見える。まったく得体の知れないこの恐怖の敵について、クリス・プラットは「これまで見た中でも最高のクリーチャー、エイリアンだ」と絶賛している。「素晴らしくて、恐ろしくて、見事にデザインされた、唯一無二の存在。こんなものは今まで見たことがないですし、シンプルに忘れられなくなる」。
「ホワイトスパイク」との激戦は様々なエリアで繰り広げられる。マイアミの市街戦では、おぞましいホワイトスパイクが目の前まで迫りくる恐怖の近接戦が強いられる。ドミニカの荒野では敵の大群がウジャウジャと押し寄せてくるという絶望的な光景が広がり、さらに海上基地戦、雪原戦も展開。全編を通じて、視覚的な変化に富んでいる。

未来SF×クリーチャー×ミリタリー×ファミリー
バリエーションが豊かなのは戦闘エリアだけでなく、描かれる要素も同様だ。未来の戦士がやってくるという設定は、『ドラゴンボールZ』のトランクスや『X-MEN』のケーブルのように、1990年代から人気。人類が未知のクリーチャーと戦争を繰り広げるスリリングな映像は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)のファンなら必ずハマるだろう。
戦地に転送されていく緊張感は『GANTZ』を彷彿とさせられるし、未来で起こる人類滅亡を防ぐため時空を往来する構造は『X-MEN: フューチャー&パスト』(2014)や『ターミネーター』シリーズに通ずるところもある。寄せ集めチームが戦いを共にする展開は、まさにクリス・プラットの代表作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)らしいとも言えるし、ホワイトスパイクとの戦いはミリタリー映画さながらの迫力で描かれる。
もともと、この映画は劇場公開用に製作されていた作品。Amazon Prime Videoで視聴する際には、できるだけ大きな画面、優れたスピーカーやヘッドフォンでお楽しみいただくことをオススメしたい。アントワーン・フークア作品のような緊迫感、マイケル・ベイ作品のような破壊力、ザック・スナイダー作品のような絵力に、マーベル映画のようなスケール感も兼ね備えた、まごうことなき超大作を体感しよう。

民間兵たちが戦地に転送されるシークエンスでは、スクリーン前の視聴者も一緒に、未来の戦場に放り出されるような没入感が味わえる。戦争とは無縁の日常生活を送っていたのに、素人がいきなり戦いを強いられる不条理さは、深作欣二『バトル・ロワイアル』(2000)を思い出させるところもある(登場人物の中には、自ら3度目の出兵に挑む志願兵もいる)。もっとも、『トゥモロー・ウォー』で徴兵されるのは若者ではなく、ほとんどが40代以上の親世代たち。これは、ジャンプした先の未来では既に死んでいる人だけが集められたからだ。そうしなければ、現在と未来の同一人物が居合わせてしまうというパラドックスが生じてしまうからである。
「これまでの作品では、たとえば19歳くらいの子どもが召集されることが多かった」と、本作の脚本家ザック・ディーンは語っている。「でも今回戦うのは、40代や50代の親たちです。思想のためとか、国への忠誠のためとか、長年の血族争いのために戦争に行くのではなく、自分の子どもたちの命が文字通り危機に瀕しているから、戦争に行くんです」。
生還率30%の戦争。どっちみち、未来では死んでいる民間兵たち。映画に登場する兵士たちは、まさに捨て身の覚悟でホワイトスパイクとの激戦に身を投じていく。人類の未来、子どもたちの未来のために──。
娘を現代に置いて派兵されたダンは元兵士で実戦経験もあるが、現代では高校教師をしていた。キャリアもぱっとせず、授業では生徒たちの関心をひくこともできない。幼い娘のミューリに励まされる自分を、情けなくも思っている。
そんなダンは、軍での経験を活かして未来の戦場ではリーダーシップを発揮。もっとも、軍歴は短かったと話しているから、自分を奮い立たせて戦っているのだろう。日頃「何かを成し遂げたい」と望んでいたダンが、極限状況下でエイリアンに身一つで立ち向かう果敢な姿に魅了されるはずだ。

ダンの戦いを通じて、『トゥモロー・ウォー』は家族の絆をドラマティックに描いている。タイムジャンプ、エイリアンとの戦争と、壮大なスケールで展開される物語だが、「究極的には家族の物語」なのだと、脚本家のディーンは力説している。「ヒビの入った家族と、父親像を求めてもがく男の物語です。彼の父親も、彼が求めた父親像ではありませんでした。そんな男が、我が子のために父親になろうとするんです」。
ダンには疎遠になった恨むべき父親がおり、J・K・シモンズがこれを演じている。親との関係は子との間にも再現されると言うが、ダンは娘との絆は守るべく、運命にあらがって戦う。「子の親なら、誰もが共感できると思います。家族のために大きな決断をする物語です。親とは、そういうものですよね」と語るクリス・プラットだが、実はこの映画の製作中に娘を授かっている。「映画では娘を持つ父を演じましたが、今では実際に娘を持つ父になりました」。実娘には映画同様、ミューリと名付けようとしていたが、奥さんに断られてしまったということだ。
監督はクリス・マッケイ。コメディ作品出身で、『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017)ではバットマンのキャラクター性を適格に解釈した物語で高い評価を得ている。未来での死闘が繰り広げられる『トゥモロー・ウォー』では得意のコメディ・トーンは控えめだが、随所でユーモアのセンスを光らせているのは流石だ。荒唐無稽になりがちなタイムジャンプSFであっても温かみや現実味を感じられるのは監督の演出力と、主演クリス・プラットの地に足ついた演技によるところだろう。
映画『トゥモロー・ウォー』はAmazon Prime Videoで独占配信中。大スケールのSFアクション超大作を、ご自宅のスクリーンで。