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『ザ・ホエール』ブレンダン・フレイザー、オスカー受賞よりも嬉しかった「一通の手紙」 ─ アカデミー賞裏話を語る【来日単独インタビュー】

ザ・ホエール

──アカデミー賞の発表前に、ダーレンにインタビューをさせていただきました。そのとき、劇中に登場する『白鯨』が意味するところについてをお伺いしました。監督の答えは、「チャーリーは白鯨のメタファーではない」というもので、あとは「解釈はオープンだ」ということを仰っていました。あなたは『白鯨』のメタファーについて、どのようにお考えですか?

鯨は、幻想のメタファーです。それから……、『The Whale』というタイトルは、日本でも同じですか?

「マンダロリアン シーズン3」「アソーカ」解説

──はい、同じです。

良かった。なにせ、日本では『Mummy』が『ハムナプトラ』と呼ばれているということだからね(笑)。

『ザ・ホエール』というタイトルは、観客を”テスト”しているのです。あなたが”ザ・ホエール(クジラ)”と聞いて何を想像するか、観客に委ねているんです。

“クジラ”は、肥満の人への揶揄表現として用いられることもある言葉なのです。ですので、もしかすると、”これは体重の問題を抱えた人を想起させる映画なんだな”と思う人もでしょう。そこに、このタイトルの意図があります。つまり、表紙だけで本を判断してはいけないということです。

実はこのタイトルは、英語圏の観客からはすごく侮辱的なタイトルだとして、かなり批判されたんです。でも、これが侮辱だと受け取られるということは、その人がそう考えているからですよね。

このタイトルには、二つのポイントがあります。一つは観客の感性に挑んでいるということ。それから、そのメンタリティを映画にも取り入れさせるということ。観た人の考え方が変わってくれたら嬉しい。何かを感じ取ってもらって、チャンスを与えて欲しいんです。

──アロノフスキー監督は、世界中の観客から、この映画を観て人生が変わった、大きな影響を受けたとの声が届いているということを仰っていました。あなたのもとには、どんな反響やメッセージがありましたか。

まさに、その通りです。たくさんの人が、”これは自分の物語だ”と言ってくれます。”私にも彼のような家族がいます”、”私も過食の問題を抱えています”と。

本作では、the Obesity Action Coalition (OAC)と呼ばれる、摂食行動と肥満治療を専門とする心理学者や、肥満症と戦う人々を支援するグループの方々と連携して制作しました。最初の試写の後、そのグループのトロント支部の会長から、一通の手紙が届いたんです。

映画のこういうところが良かったとか、こういうところがうまく描かれていた、ということが書かれていたんですが、最後の一文に、こう書いてあったんです。

”このチャーリーというキャラクターは、人の命を救うことになるでしょう。”

ダーレン・アロノフスキー
© 2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

だって……、考えてもみてくださいよ。これは映画ですよ。エンターテインメントです。確かに、刺激をもらったり、考えさせられたりすることはあります。でも、彼は信じていた。この映画が届ける想いは、人を変えるんだと。前に進む勇気を与えてくれるんだと。この映画を観て、治療を始めてくれる人がいるかもしれないし、抱えている問題を誰かに打ち明ける人がいるかもしれない。人生を変えようとしてくれるだろうと。そうして、この映画は人命を救うことになるのだと。

オスカーの受賞も素敵なことでした。でも、僕が何よりも嬉しかったのは、オスカーよりも嬉しかったのは、その言葉でした。僕は、心の底から、本気でそう言えます。

ザ・ホエール
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映画『ザ・ホエール』は公開中。

アロノフスキー監督へのインタビューはこちら

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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