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【特集】『タイタニック』当時の日本はどう見たか ─ 1997年、世紀末の空気と「レオ様」ブーム

タイタニック
©Paramount Pictures 写真:ゼータイメージ

世紀末。「ノストラダムスの大予言」に代表される終末論めいた空気がただよっていた。20世紀の最大の悲劇を映像化した映画タイタニック(1997)は、あの時代のあらゆる思いを乗せて出航した。

史実の豪華客船は沈没したが、映画は大海を駆ける大ヒット。当時としては史上最高の製作費がかかったこの大船は、製作の遅れを連発し、公開延期を繰り返していた。映画史上最大の失敗作になるのではないかとのムードも漂ったが、いざ海に出れば当時の世界最高興行収入を記録する大ヒット。24年が経った今でも、これを抜いたのは『アバター』(2009)と『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)のわずかに2作しかない。

世紀末、『タイタニック』に時代の不安を重ねた

日本でも、洋画歴代1位、実写作品歴代1位の記録を未だ譲らない歴史的大作。上映時間は3時間半近いが、劇場では立ち見客が通路に溢れたという盛況ぶりを鮮烈に記憶しているという、当時を知る方も多いのでは。まさに社会現象で、封切りからおよそ半年が経つゴールデンウィークが明けてみても、「まだまだ長蛇の列」「3時間立見したり、通路に座り込んでいるカップルもいた」との記録もある。※1

封切りは1997年12月。これに先駆けて同年の東京国際映画祭では、ワールドプレミアとして11月1日に上映されている。公開当時、日本の映画媒体はどう見ていたのか。『スクリーン』誌の1997年11月号は「98年正月映画」特集として、ハリソン・フォードの『エアフォース・ワン』(1997)や『メン・イン・ブラック』(1997)などと共に本作を紹介している。

「各国で公開された97年の暮は、経済的パニックの不安がアジアから世界を覆い、沈没していくタイタニックに、一つの繁栄の時代の終焉を重ねた論調もあった」と、当時の映画誌に時代の空気が記録されている。「20世紀の夜明けにテクノロジーのすべてを結集して作り上げた不沈の超豪華客船が、人間の傲慢や奢りから、ささいなミスで引き起こしていく信じられないような悲劇。時を越えて、そして今の時代にも警鐘こめたキャメロンの狙いに狂いはなかった」※2ジェームズ・キャメロン監督とレオナルド・ディカプリオは東京国際映画祭のワールドプレミアにあわせて来日しているが、この時のインタビューでキャメロン監督は、タイタニック号に時代の不安を重ねる見方を理解していて、次のように話している。

現在、タイタニック・ブームと言われているけれども、それは文字通り、世紀末がおとずれていて、皆が将来について明るい感情を持っていないのが最大の原因だと思う。黙示録じゃないが、何が起こるかわからないという不安感を抱いているということだよね。本当に安定していると思っていたこと、信じていたものが急に変わってしまう。つまり終焉が突然訪れてしまうかもしれないという不安感を、皆が持っていて、その象徴がタイタニックなんだ。※3

レオ様ブーム、来日にファン熱狂

『タイタニック』の記録的な大ヒットは、主演レオナルド・ディカプリオの熱狂的なブームも巻き起こした。日本では「レオ様」フィーバーが吹き荒れたが、その後「◯◯様」の愛称で国内のファンを熱中させた俳優は、「ヨン様」くらいではないだろうか。ともかく、『タイタニック』の頃のディカプリオの輝きに勝るような俳優は、後にも先にも彼ひとりだ。

『スクリーン』誌は1998年1月号で、「レナード・ディカプリオ来日スペシャル」と銘打って巻頭特集している。Leonardo DiCaprioには、まだ”レナード・ディカプリオ”との表記ゆれがあった。「10月31日、午後四時十五分。予定より五〇分遅れてレナード・ディカプリオが日本に降り立ちました。三年ぶり二度目の来日。その間、何度かの来日の噂が出ながらすべて中止となっていただけに、まさに待望の再来日です」と熱っぽくレポートしている。

今回レオを待ち受けるファンの熱狂ぶりはものすごく、予定は一切発表されていないにもかかわず空港に多数のファンがかけつけていました。翌1日の『タイタニック』ワールドプレミアには、三日徹夜したという人も含め、チケットを手に入れることのできなかった約二◯◯◯人のファンが一目でもレオを見ようと渋谷・文化村に押し寄せ、パニック寸前の状況となってしまったため入場セレモニー中止という事態に。ファンの熱意を聞いたレオは、「少しだけでも彼らの願いを叶えてあげたい。バルコニーでもあれば顔を見せられるのに……」と言っていましたが、警備上の問題で許されず、とても残念そうでした。※4

公開当時23歳、まだまだ若手だったディカプリオは、この来日で日本のメディアからの取材をたっぷり受けることになる。ディカプリオは、”50年代の映画が好きで、70年代に出て来た俳優を尊敬”していることを、当時話している。

Writer

THE RIVER編集部
THE RIVER編集部THE RIVER

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