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【ネタバレ】『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』エンディング徹底解説 ─ レイの両親、ルーク&カイロ・レンの決断、ラストシーン

この記事には、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の重大なネタバレが含まれています。『スカイウォーカーの夜明け』(2019)のネタバレはありません。

レイの両親、何者なのか

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』以来、主人公のレイは何者なのか、両親は誰なのかという疑問は、ファンの間で予想合戦の的となっていた。幼いレイをジャクーに置いていった、あのビジョンはいかに。あの人物が父親ではないか、あるいは母親ではないのか。この謎に答えるかと思われた『最後のジェダイ』は、レイがアイデンティティを求める旅路そのものをひとつの道しるべとしながら、思わぬ真相へと至る。レイは訓練を重ねる中でダークサイドに近づいていき、カイロ・レンと接触。ついにレンは、レイに触れたとき、そのすべてを見たと語るのだ。

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すなわち、レイが隠している両親とは、まるで何者でもないジャンク業者。酒の金欲しさにレイを売り、すでにジャクーの墓に眠っているという。いわば、レイは特別な血縁によって能力や出自を保証されているわけではない、“普通の人間”だったのだ。

ジョンソン監督が『最後のジェダイ』に参加した時点で、レイの両親が誰であるかは決まっていなかったという。英Empireにて、監督は「ありとあらゆる可能性を検討しました。選択肢のリストを作って、長所と短所と一緒に考えたのです」と語っている。その結果、レイを何者でもない人物に据えたことには、ふたつの背景があるという。

ひとつは、『スター・ウォーズ』シリーズの“フォースは万物を包み込んでいるものだ”という設定を活かすこと。「“フォースとは遺伝的なものであり、何者かを繋がっていなければならない”という発想を打ち破りたかった。つまり、誰でも立派になれるのだ、ということです」。そしてもうひとつは、ストーリーテリングとして最も劇的な展開にしなければならないということだった。米Entertainment Weeklyにて、ジョンソン監督はこう述べている。

「この謎に対する、最もパワフルな答えとは何かを考えていました。パワフルとはすなわち、“レイが知りうる中で、最もつらい出来事とは何か”ということ。僕たちは、キャラクターに挑戦しようとしていたんです。」

ジョンソン監督がヒントにしたのは、オリジナル3部作の第2作『エピソード5/帝国の逆襲』(1980)。そこでルーク・スカイウォーカーは、自分の父親が帝国軍の“宿敵”ダース・ベイダーであるという事実を突きつけられたのである。

「“アイ・アム・ユア・ファーザー”が成功したのは、あれが単なるサプライズやツイストではなく、当時のルークや観客が知りうる中で最もつらい事実だったからだと思います。憎むべき人物、殺したいような悪人が、いきなり主人公(ルーク)を構成しているうちのひとつだと分かる。すると、より複雑な観点からキャラクターを捉えないといけなくなります。贖罪の物語、という見方をしなければならないんです。

今回は(『帝国の逆襲』の)逆です。“なるほど、こいつとあいつの娘だったんだ!”なんていうのは、レイや観客にとって最も生ぬるい答え。願いは叶えられ、レイをお膳立てして、あっさり自分の居場所を与えてしまうことになります。彼女にとっては、“たやすい答えなど手に入らない”という事実が一番つらい。しかもカイロは、その事実をレイを弱らせるために使ってくるんです。自分に頼らざるをえなくなるように。」

問題は、ここからレイのアイデンティティをめぐる物語はどう進んでいくのかということだ。レイ役のデイジー・リドリーは、両親にまつわる事実について「レイはまだ納得していない」と語っている。「自分がどこからやってきたのか、彼女は今でも探し求めています。信じていないのではなく、もっと物語があると感じているんです」。『スカイウォーカーの夜明け』で脚本・監督のバトンを再び受け取ったJ・J・エイブラムスは、レイの物語をどのように着地させるのか。

ルークとカイロ・レンの過去

レイのアイデンティティ、そしてジェダイとしての覚醒をめぐる物語のかたわらで展開されるのは、かつては師弟関係にあったルーク・スカイウォーカーとカイロ・レンの関係性と、それぞれの物語だ。あらゆる方面から「伝統」と「革新」の対立をもって語られることの多い『最後のジェダイ』は、物語の序盤に、こんなカイロのセリフを用意している。「過去を葬れ。必要なら殺してでも(Let the past die. Kill it if you have to.)

この言葉を軸にルークとカイロの物語を紐解いていくと、本作はぐっと理解しやすくなる。つまり、ルークもカイロも、そろって“過去を葬ろうとする男”だということだ。かたや『フォースの覚醒』で父親ハン・ソロを殺し、母親レイア・オーガナを狙うカイロと、かたやダークサイドに惹かれるカイロを目の当たりにして、師匠でありながら殺害を計画し、起きた惨事を前にジェダイの運命から逃れたルークである。

英Empireにて、ジョンソン監督はこのテーマを初期段階から構想していたことを認め、「対極である2人が同じ結論に達するのが面白い」と考えたと語っている。もっとも、2人の“過去の葬り方”は真逆だ。監督はレンについて「前進するために自分自身を過去から切り離そうとする。出自から逃れるのだから反抗的ですよね」と言う。「過去を切り離して、“なりたい自分になれるんだ”と言う。これは多くの人が人生で体験することでもあります」。一方、ルークは姿を消すことで、自分の運命をまるごと隠遁生活の中に埋めてしまう。これもまた、ひとつの過去の葬り方だ。

しかし、あのルーク・スカイウォーカーは、なぜ自分の失敗を契機に隠遁生活に入ってしまったのか。監督も「僕の知っているルークは臆病者なんかじゃない。ですから、前向きかつアクティブな理由を、彼にふさわしい理由を考えなければなりませんでした」と語っている。レイの両親と同じく、ルーク失踪の理由も決まっていなかったのだ。

「僕が一番納得できたのは、ルークやジェダイを英雄として礼賛することが宇宙にとっては有害なのだと、ルーク自身が考えるというもの。この宇宙はジェダイという邪神を信じている、だから人々は信仰を忘れなければならない。そうすれば本物の神が再び戻ってくるし、(自分ではなく)もっと価値のある源から希望は生まれうると。だから、最後のジェダイであり象徴であるルークは、自分を犠牲にして姿を消していたんです。友人が死に向かっていると知った時でも、本当は戦いに戻りたいと自覚していても。彼はこの世界の責任から逃れることで、世界の責任を引き受けるんです。なぜなら、そうすることでジェダイは死に絶えてしまうかもしれないのだから。」

それほど苦渋の決断を払ったのである、レイが目の前に現れた時の動揺たるや並大抵のものではなかっただろう。映画の冒頭で、かつて自分の所有していたライトセーバーをレイから受け取ったルークは、それをしばし眺めるや投げ捨ててしまう。米Colliderで、ジョンソン監督はその動機をこう述べた。

「自分のとんでもない努力を台無しにしようとする子どもが現れて、希望にあふれた目で自分の顔をじっと見つめているんですよ。“はい、どうぞ”って渡したらどうなるかな、“よし、宇宙を救いに行くぞ”って言ってくれるかな、みたいな顔をして。だけど、彼は選択をしたのだし、そこにいることにも理由がある。(ライトセーバーを捨てるのが)ショッキングなのは分かっていました。それでもそうしたのは、もちろん劇的な表現だからというのもありますが、ルークがあの瞬間に取るだろう素直な反応だと思ったからなんです。」

もっとも、ルークにせよカイロにせよ、葬ろうと試みた過去はことごとく自分自身を追いかけてくる。カイロはレイとのやり取りを重ねた末、最後には窮地に立たされたレイを前にファースト・オーダーの最高指導者であるスノークを殺害。レイに向かって手を結ぶことを申し出る。いまや彼にとっては、ルークも、スノークも、憧れた祖父ダース・ベイダーさえも“葬るべき過去”なのだ。こうして新たな最高指導者となったカイロは、ファースト・オーダーを追い込むべく塩の惑星クレイトに侵攻する。しかしそこに現れたのは、かつての師ルークだった。ジョンソン監督はこう語る

「これはルークの映画です。ルークの物語は(彼自身が)ルーク・スカイウォーカーの伝説を引き受けるところへと戻るのです。一度はこの宇宙のためにならないと拒んだものが、本当は銀河系において求められていることに気づく。そして、“求められるのならば、私は伝説になろう”と責任を引き受けるんです。そして戻ってきた彼は、宇宙全体に轟くことになる英雄的な行動に出る。そして、お別れの時がやってくるのです。」

過去と運命を同時に引き受けたルークは、フォースの力で虚像として現れ、カイロと対峙する。それによってこそ、カイロは過去を葬ることができなくなるのだ。カイロは母の属するレジスタンスを壊滅させるどころか、自分が殺した父親のゴールデン・ダイスを握ることにすらなる。そのダイスは、遠く離れた地でルークが消滅するとともに、まるで彼が持ち去るようにして消えてしまった。まるで、目の前から消してしまうことが“過去を葬る”ということではないと教えるかのようだ。ルークもハン・ソロも、スノークも、ダース・ベイダーも、カイロはきっとまだ葬れていない。彼が本当に葬りたいのは過去ではなく、自分自身のコンプレックスと言ってさえよいだろう。

実際のところ、ジョンソン監督は、“過去を葬る”というテーマを「自分の信じる考えとして提示したわけではありません」と断言している。「自分を過去から切り離せば、それは自分を騙すことになるし、戻る場所を失うことにもなる。前進するには、レイのように過去の上に道を築くしかありません」

ラストシーンの少年

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のラストシーンには、カント・バイトにて奴隷のように働かされている少年テミリ・ブラッグが再び登場する。レースに出走するファジアーの厩舎で働かされている彼は、仲間たちにルーク・スカイウォーカーの伝説を聞かせるのだ。しかし、そこに監督係が現れて、テミリは仕事へと出ていくことになる。そこで、箒をふわりと“引き寄せて”夜空を見上げるテミリの手には、ローズが渡したレジスタンスのリングが光っている。

この場面には、ジョンソン監督が「レイは何者でもない」という展開に託したもの、そして「ルーク・スカイウォーカーの隠遁と再臨」の物語で描いたものが結実している。フォースは万物を包み込んでおり、誰の力を目覚めさせ、また救うか知れない。そして、ルークは文字通りの伝説になった。そのふたつを繋ぎ合わせたのは、表向きには失敗でしかなかったフィンとローズのカント・バイトでの作戦だ。彼らの行動がレイとルークの存在、そしてレジスタンスの“希望の火花”を市井の人々に根づかせるのである。

米Entertainment Weeklyにて、ジョンソン監督はこのラストシーンを「ほとんどルークについて描いた場面といっていい」と話している。

「ルーク・スカイウォーカーは、自分が“伝説”であることを引き受けた。そのことを示したかったんです。そして彼の決断は、ただ洞窟の20人を助ける以上の結果につながった。いまや、ルーク・スカイウォーカーの伝説は広がり続けている。銀河系に希望の炎が灯されているんです。ルークのフィギュアで遊び、力をもらっている少年を描くこと以上に希望を思わせるイメージはありませんでした。」

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』MovieNEXは発売中

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Source: Entertainment Weekly(1, 2), Empire(1, 2), Collider, UPROXX

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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