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『さらば愛しきアウトロー』撮影の裏側 ─ 古い機材が現場にもたらした一体感とは

さらば愛しきアウトロー
Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

ハリウッドを代表する名優ロバート・レッドフォードの最新作であり、惜しまれつつも俳優引退作となる、実在した伝説の銀行強盗犯を描いたデヴィッド・ロウリー監督最新作『さらば愛しきアウトロー』が公開中だ。

本作の監督は、レッドフォードが新しい才能を見つけ支援するために創設したサンダンス・インスティテュートが主催するサンダンス映画祭で頭角を現し、『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(17)で観客賞にノミネートされた、現在39歳という気鋭のデヴィッド・ロウリーが手がける。また、監督のもとに集結した制作スタッフも、インディペンデント映画のフィールドで活躍しこれからの映画界を担うプロフェッショナルたちだ。

さらば愛しきアウトロー
Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

ロウリー監督は本作において成し遂げたかったことの一つに「往年のスター、レッドフォードにラブレターを書くこと」と語っている。その言葉通り、本作は、レッドフォードが『明日へ向って撃て!』(1969)を皮切りに世界的スターとなっていった70年代の映画製作へのオマージュがふんだんに込められている。

まず、ロウリー監督が撮影に使ったのは、脚本段階から決めていたというスーパー16のフィルム。スーパー16を使用すると、70年代の映画を彷彿させる美しいクオリティの映像を撮ることができるからだ。さらに、最新の撮影ツールではなく、ズームや古いレンズが使用された。

さらば愛しきアウトロー
Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

テキサスが舞台のクライムドラマ『セインツ -約束の果て-』(2013)でもロウリー監督とタッグを組んだ撮影監督のジョー・アンダーソンは、カメラを探した時の状況を「16ミリのカメラは、もうどこでも生産していない。だから、15年前ぐらいの中古品を探す必要がありました。幸いにも、フィルム自体は生産中なため、現像することは可能でした」と説明する。

ロウリー監督は、「スーパー16は理想的なフィルムです。デジタルや35ミリよりずっと扱いやすい。確かに昔のフィルムだけど、だからこそ使いたかった。古めかしい映像にしたいけれど、ノスタルジックなものにはしたくなかったんです。スーパー16ならそれが可能なのです」と語る。




16ミリフィルムでの撮影では、通常より光の調節に手間がかかるので、単に映像だけでなく、現場の雰囲気も変わったとアンダーソンは振り返る。「デジタルの場合は、撮影が始まるとスタッフは皆モニターの後ろに隠れてしまう。フィルムの場合は、クルーは互いに声を掛け合う。映像の仕上がりを想像しながら、カメラマンと共に皆で作業する。画像の解像度のことで頭がいっぱいになるデジタル撮影とは、全く違った雰囲気の中で撮影が進むんです。」

また、ベルリン国際映画祭金熊賞にもノミネートされたロバート・パティンソンとミア・ワシコウスカ主演の本格西部劇『DAMSEL(原題)』 で開拓時代西部の街並みを見事に再現したプロダクションデザイナーのスコット・クジオは、本作で、“アウトロー映画”にとって重要なあるワンシーンのセットのリアリティを追求した。刑務所からの脱獄シーンの中のサン・クエンティン刑務所のシーンは、なんと実際のミシガン州ジャクソンにある刑務所が使われているのだ。たまたま空いていた独房の一角を、クジオが改装した。フォレストが脱獄する際に使用した手造りのボートは、クジオが一から制作したと語る。「刑務所の木工所から集められる資材だけ使って作ることにしました。その方がよりリアルなものができると思ったからです。」

さらに、撮影終了後、ロウリー監督は『ピートと秘密の友だち』(2016)でもタッグを組んだ編集のリサ・ゼノ・チャージンと、6ヶ月半にわたる作業を行なった。チャージンは、反体制的な西部劇映画(サム・ペキンパーの『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(1973))や、ロードムービー(モンテ・ヘルマンの『断絶』(1971))、レッドフォードの初期の作品などを見て研究し、最終的に今回の映画に独特のリズム感を加味したと説明する。「全体の構成は実にユニークになりました。西部劇の要素はあるけれど、銃が中心の映画ではないんです。フォレストも銃を撃ったりはしなかった。これは、フォレストの『生き様』を描いた映画なんです。」



音楽を手がけたのは、監督と長年コラボレートをしている常連作曲家のダニエル・ハート。『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』の劇中でケイシー・アフレックが歌う幻想的かつ現代的な挿入歌「I Get Overwhelmed」が記憶に残っている方も多いだろう。映画音楽以外にも、セイント・ヴィンセント、ポリフォニック・スプリー、ブロークン・ソーシャル・シーンなど錚々たるミュージシャンたちとの仕事で注目を集める人物だ。本作では、ジャズ研究の本場テキサス州デントンでレコーディングされたこだわりのジャズ・サウンドを基調にしつつ、ジャクソン・C・フランクの「ブルース・ラン・ザ・ゲーム」や、スコット・ウォーカーやキンクスなど60〜70年代を感じさせるミュージシャンの名曲も取り入れ、ダイナミックで小気味好い大人のエンターテインメントを彩った。

『さらば愛しきアウトロー』メイキング画像ギャラリー

インディペンデント映画を盛り上げ、新しい才能を支援していきたいと、サンダンス映画祭を立ち上げたレッドフォード。同映画祭で注目を集め活躍の舞台を広げていったデヴィッド・ロウリー監督は、今後アリシア・ヴィキャンデル主演の『Green Knight(原題)』や、ディズニーの『ピーター・パン』実写化など大作の製作・公開も控えている。レッドフォードの想いを受け取り、実現させていったロウリー監督を筆頭に、各分野の気鋭のプロフェッショナルたちが愛を込めて引退の花道を飾る。

『さらば愛しきアウトロー』は公開中。

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『さらば愛しきアウトロー』公式サイト:https://longride.jp/saraba/

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THE RIVER編集部
THE RIVER編集部THE RIVER

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