ナイス!ヘンテコ親父!『ありがとう、トニ・エルドマン』を観る前に『ヘンテコ親父映画』を愛でよう

2016年、各国での賞レースに旋風を巻き起こし、あの有名大物俳優のハートを鷲掴みにしたヘンテコ親父映画、『ありがとう、トニ・エルドマン』が遂に日本にやってきた。

悪ふざけとイタズラが大好きな奇妙な父親と、今を生きることに必死なキャリアウーマンの娘。不器用な親子の関係性をユーモラスにエーモーショナルに描いたヒューマンドラマ。ドイツとフランスでは異例の大ヒットを記録し、40以上もの賞に輝いた話題作である。筆者は、この映画の満腹感に『ありがとう、トニ・エルドマン』と何度も何度も呟きたくなった。シュールな笑いがたくさん散りばめらていて、上映中、劇場内では四方八方からクスクスと笑い声が聞こえてきた。162分というやや長めの作品だが、観終わった後は爽やかな気持ちで劇場を出ることができた。

ティザービジュアル

©Komplizen Film

この作品が話題となっている一つの理由は、引退表明していたジャック・ニコルソンがハリウッドリメイク化を熱望したことだ。更に、引退を撤回してリメイク版で父親役を演じることも決定しているとのこと。凄まじい惚れっぷりのようだ。

あらすじ

音楽教師を引退し、愛犬とほのぼのと暮らすヴィンフリート。そんなヴィンフリートの元に久しぶりに帰ってきたのは、海外のコンサル会社に勤めているバリバリのキャリアウーマン娘イネス。仕事に追われ、電話ばかりしているイネスを心配したヴィンフリートは愛犬の死をきっかけに娘が働く地へ突撃訪問することに。イネスは、突然やってきた父とぎくしゃくとした数日間を一緒に過ごす。そして、父は故郷へ帰っていった。父を見送り一安心したイネスの元にトニ・エルドマンという妙な男が現れる…。なんとその男は、変なカツラをかぶった別人姿の父だった。仕事もプライベートも四六時中つきまとうトニ・エルドマンに頭を抱えるイネスだが、そんなイライラと比例するかのように親子の絆も徐々に加速していく…。

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この作品の良さを語るべくして外せないのは、ヘンテコ親父トニ・エルドマンの存在だ。ブーブークッションを持ち歩いたり…入れ歯を常に仕込んでいたり…妙なカツラにテロテロなスーツ。言動・行動にユーモアが溢れていて、良くも悪くもおちゃめなトニ・エルドマンは映画界でも近年稀に見ぬヘンテコ親父っぷりだった。もちろん、娘への愛に溢れためちゃくちゃ温かいお父さんなんだけども。

そんなヘンテコ親父が登場する『ありがとう、トニ・エルドマン』を観る前に…「ヘンテコ親父熱を高めてほしい!」と、願う筆者がオススメする、クレイジーだけど愛おしい!ヘンテコ親父映画を紹介しよう。

『はじまりへの旅』(2016)監督:マット・ロス

まずはじめにご紹介するのは、独自の教育方針で子供達を育てる野生児系ヘンテコ親父だ。

『はじまりへの旅』で6人の子供がいる大家族の父親であるベンは、6人の子供達と一緒に森の中で自給自足のサバイバル生活している。「自分の身は自分で守れ」と、自己防衛術やナイフの使い方をとことん教え込み、ジャングルで育った子供達の身体能力は、アスリート並みに達している。それに加え、子供達を学校へ行かせない代わりにたくさんの本を読ませている。本の中から思想や哲学を教え込まれた子供達は驚くほどハイレベルな知力・学力を身につけている。まさに、現代の教育とはかけ離れた独特の教育法である。誰もがみな、このエキセントリックな父親に普通とは一体何か考えさせられるはずだ。『リトル・ミス・サンシャイン』以来のポップでファンキーな家族ロードムービーに仕上がっている。

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)監督:ウェス・アンダーソン

続いてのヘンテコ親父は、音信不通だったくせにいきなり帰ってくる自分勝手系ヘンテコ親父だ

名高い法律家だったロイヤル・テネンバウムズだが、破産をしてホテル暮らしをするハメになる。この時点でもう既にヘンテコ臭が香ってくる。そして、「もう歳もそこそこだし寂しいしお金ないし…」ということで、病気を患ったと嘘をつき22年間ほったらかしにしていた家族に擦り寄る作戦に出るのだ。バラバラになっていた家族の絆を取り戻そうとするロイヤルだが、孫たちに万引きを教えたり、水風船を車にぶつけて逃げたりと破天荒な行動を取る。息子である長男にはBB弾を背後から打ち込むというイタズラをして以降、ずっと嫌われている。ヘンテコ親父どころかダメダメ親父なんだけど、どこか憎めなくて愛おしいキャラクターである。そんなロイヤルのせいで振り回される家族だが、そんなロイヤルのおかげで再び家族の絆がグッと深まり切なさがそっと残る。ヘンテコ親父が家族を救う、可笑しくも温かい物語である。

新三大ヘンテコ親父映画の仲間入り!

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『はじまりへの旅』『ザ・ロイヤルテネンバウムズ』に引けを取らないほどヘンテコ親父っぷりを炸裂させていたのが、現在公開中の映画『ありがとう、トニ・エルドマン』である。個人的に新三大ヘンテコ親父映画の仲間入りを果たした作品となった。娘を心配しすぎて、女子会やパーティーにだって現れるトニ・エルドマン。いつだってどこだって現れる異常な出現率はストーカーと呼んでも良いレベルだった。だが、その異常な出現率こそがこの作品の醍醐味でもある。娘への愛が空回りし、娘に誤って手錠かけちゃう系ヘンテコ親父行動は奇抜でちょっとうざったい。けれど、その行動こそが父親としての純粋な愛情であった。

チャーミングすぎるヘンテコ親父の活躍を見逃すな!

映画『ありがとう、トニ・エルドマン』は、2017年6月24日より、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか現在絶賛公開中。

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About the author

好きな監督はウディ・アレン。ミニシアターに通う映画好きタレント。

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