『トイ・ストーリー3』初期案、バズが死に直面する物語だった ─ リコールされるバズを救うため、ウッディらは台湾へ救出に向かう

2010年に製作されたディズニー&ピクサーの人気アニメーション作品『トイ・ストーリー3』は、それまで前2作で展開された少年アンディと、ウッディやバズ・ライトイヤーらおもちゃたちの物語に感動的な終止符を打った。しかし、製作のディズニーにはかつて別の脚本が存在しており、なんとバズには死の危機に直面する運命が待っていたという。
そもそも、『トイ・ストーリー3』の製作を巡っては、米ウォルト・ディズニー社とピクサー・アニメーション・スタジオ間で締結されていた契約に基づき、複雑な背景が存在していた。2004年当時、ディズニーはピクサー関連作品全ての映像化権を保有していた為、『トイ・ストーリー3』も傘下のスタジオCircle 7 Animation(現:ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ)が手がけることになっていたという。そして、米Mediumによれば、同スタジオが提案した複数の脚本案の中には、実際の感動的な結末とは全くかけ離れた内容が存在していたのだ。
その1つが、当時ディズニー・スタジオに所属していたコンセプト・アーティストのジム・マーティンと『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズ脚本家のジム・ハーツフェルドらが考案した“バズが死の危機に直面する”という内容だ。日常を過ごしていたバズに、度重なる不具合が生じてしまう。なかなか治らない不具合の原因が内蔵チップにあると考えたウッディやジェシーらは、バズの意思に反しながらも不具合を治してもらおうと台湾にある製造元のおもちゃ修理工場に送る。しかし、後日、世界中のバズのおもちゃが一斉に不具合を起こしていることが判明し、おもちゃはそのままリコール(回収)されてしまう危機にあることをウッディたちは知るのだ。ウッディたちはバズを取り戻すため、台湾へ救出ミッションに向かうことになる。
廃棄寸前のバズは粉砕機に脚を砕かれ、気絶してしまう。ウッディたちは自らバズに新しい脚と内蔵チップを取り付け、なんとか命を救う。バズは記憶を失ってしまったものの、最後にはウッディたちと無事アンディの家に帰るという物語だ。
2014年に公開されたマーティンによる『トイ・ストーリー3』コンセプト・アートには、目を瞑り横たわるバズを囲む険しい表情のウッディたちの姿が確認出来る。他にも、台湾の街を冒険するウッディたちや、工場の廃棄所に落下しないようにしがみつくバズの姿も。実際に完成された物語と比較するとどんよりとした悲壮感が漂う印象だ。
ところが状況が一変、2006年1月にディズニーはピクサーの買収を発表。同時にCircle 7 Animationはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオに吸収され、ピクサーには、ピクサー作品の自由な製作権が与えられたというわけだ。
2019年まで約25年間ピクサーの製作チームに所属していたリー・アンクリッチ監督の下、発表された『トイ・ストーリー3』は、2010年度アカデミー賞で4部門ノミネート、長編アニメ映画賞を見事受賞。そして、いまもなお世界中の人々の胸に残り続ける傑作となったのだ。
仮にこの脚本で企画が進められ、本当にバズが死んでしまっていたら…?少なからず、2019年に製作された続編『トイ・ストーリー4』の内容にも影響を与えていただろう。あるいは、第4作の製作すら実現しなかったかもしれない。
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Source: Screenrant ,Medium, Jim Martin Design