『トイ・ストーリー3』ラストシーンはなぜ泣けるのか

オーウェンは『トイ・ストーリー』のオモチャたちについて、「そのプラスチックやポリエステルで出来たDNAの中に、彼らより大きな存在の一部になること、子どもたちを喜ばせ、輝いてもらうために全力を尽くすようプログラムされている」存在だと書き、それをウッディの最後の決断に紐付ける。「ウッディがアンディと大学に行くのではなく、仲間たち一緒に残ると決断したとき、彼は自分の運命はオモチャであることだと受け入れたのだ。彼は、自分自身が真のオモチャであるために必要だった大好きな持ち主の元を、離れなければならかったのである。」
アンディと同じように、かつて子供の頃にオモチャで遊んで育ったオーウェンは、『トイ・ストーリー3』のラストには「新しい時代に、オモチャたちが第二の人生を見つけるという、ものすごく特別なものがある」と言う。「彼らは、そして僕たちは、きっと大丈夫なんだ。僕たちの心の中にある子供時代は、作られたものでなく、僕たち自身で創り上げたものなのだということを、忘れない限り。」
Webマガジン「RELEVANT」でタイラー・ダスウィックは、「大人になると、ものを大切にするということ、変化と直面すること、そして、何かと離れることを学ぶ。アンディがウッディをボニーに譲ると決心するシーンには、すごく色々なものが詰まっている。変化の瞬間であり、変容の瞬間だ。譲渡の瞬間であり、いけにえを捧げる瞬間でもある」と書く。あの瞬間、アンディは「懐かしい思いと、次へ進むという思いの間で囚えられていた」とそのジレンマに共感するタイラーは、「成長の喜びと痛みを描く『トイ・ストーリー3』の完璧なエンディング」と題した記事で、「オモチャは、去ったわけではない。まだ、そこにいる。例え、別の誰かのものになったのだとしても、まだいるのだ。それに、分かち合うことが出来るようになった、ということだ。新しい世代が、『トイ・ストーリー』と共に育つ様子が見られるのだ」と祝福した。
普段は犯罪事件の記事を担当するジャスティン・デイヴンポート記者も、『トイ・ストーリー3』に泣かされたひとりだ。「最後のシーン。何が来るかも分かってたし、だいだいどうなるかも想像はついた。でもいざその瞬間がやってくると、やっぱり破壊力がある」と認める。「アンディ視点でオモチャを見るところがスイッチ。奇妙なことに、動かないオモチャなのに、かつてないほどリアルに見えた」。ジャスティンが『トイ・ストーリー3』を鑑賞した時、隣の席に14歳の子供がいたというが、その子供はこのラストに全く動揺していなかったという。「たぶん、大人だけが分かるんだろう」というジャスティンは、3Dメガネが涙を隠してくれたことに感謝している。
「あばよ、相棒」
ボニーの庭でアンディは、最後にもう一度だけ、オモチャたちと思い切り遊ぶ。それから車に戻り、次の世界へと旅立とうとする。新しい持ち主に抱きかかえられて、ウッディは別れの手を振った。アンディは最後の一瞥をくれてから、「ありがとう、みんな」とだけつぶやき、走り去っていく。ウッディからは、「あばよ、相棒」との最後の言葉。勇敢なカウボーイに、湿っぽい別れの言葉なんて似合わない。頼もしいスペース・レンジャーのバズは何も発しないが、「俺がついてるぜ」とでも言うように、ウッディの肩に手をかける。
大人になる過程で、誰もが『トイ・ストーリー3』のラストのような瞬間を経験する。愛しいものに別れを告げ、先に進まなければならない瞬間だ。『トイ・ストーリー3』に多くの観客が泣かされたのは、アンディやウッディたちとの間に、自分自身の少年少女時代の姿を見たからだろう。シリーズ1作目からウッディたちと共に過ごしたり、アンディのようにオモチャで遊んで大きくなったりした“元・子ども”たちにとっては、尚のこと大きな意義を持つラストシーンだったのである。
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Source:TIME(1,2)Rotten Tomatoes,THR,Entertainment Weekly,RELEVANT,Standard