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【TFお勉強企画その3】米国『トランスフォーマー』と日本の『機動戦士ガンダム』類似点と相違点を探る

初心者がコンテンツとしてのトランスフォーマーの魅力を探るこのシリーズ、前回は手っ取り早く「推しキャラ」を作るべく邦訳アメコミ「オールヘイルメガトロン」を二回読了し、マイスター(副官)のカッコよさに痺れ、トランスフォーマーファンの入り口に立ったつもりになった筆者でありますが(参考)、初代アニメシリーズの視聴がなかなか終わらないので(現在37話)、今回はまた別の切り口で(逃げではございません)、トランスフォーマーというコンテンツを分析してみたいと思います。

もしも、10代から40代くらいまでの日本人全員にアンケートをとることが可能だとして、「ロボットアニメといって真っ先に思いつくタイトルは?」という質問をしたら最も多く名前が挙がるコンテンツは何になるでしょう。筆者は圧倒的に「機動戦士ガンダム」だと考えます。もはや説明不要かと思われますが、1979年の初代アニメ放映終了後の爆発的人気、追随する「ガンプラ」で社会現象を巻き起こし(販売個数30年間で4億パッケージ)、国内における玩具メーカーとアニメ制作会社のメディアミックス最大の成功例として現在も揺るぎない地位を築いている「ガンダム」。ところが太平洋を隔てたアメリカでは「ガンダム」の認知度は高いとは言えず、代わりに「ロボットアニメの頂点の座」に君臨するのが「トランスフォーマー」なのであります。

「ガンダム」というコンテンツ自体は、アメリカに何度も輸出を試みられているようですが、なかなか国内のような人気を獲得するには至っていません。ガンダム、トランスフォーマー共に二足歩行型ロボットを題材にしたアニメですし、機構やメカニックデザインにこそ魅力の焦点があり、同じく30年を超える歴史を持ち、と類似点が多く、またつぶさに調査すればお互いに影響を与え合っているであろう両コンテンツ。玩具の売上高を見ると、興味深いことにハズブロ社の「トランスフォーマー」関連の売り上げ高と、バンダイナムコ社の「ガンダム」関連商品の売上高も非常に近い数字(2011年で380億円前後)なのですが、その内訳は、欧米を中心に世界中満遍なく人気のある「トランスフォーマー」に対して、日本国内とアジアの人気に偏った形になる「ガンダム」。

この構図が指し示すものは何でしょうか。「トランスフォーマー」にあって「ガンダム」にないもの。また「ガンダム」にあって「トランスフォーマー」にないもの。相違点を掘り下げることによって両コンテンツの内包する魅力の新たな一面を顕すことが今回のテーマであり目的でございます。

1.ロボット脅威論とは

「フランケンシュタイン・コンプレックス」という言葉があります。これはSFの大家アイザック・アシモフの造語ですが、欧米を中心としたキリスト教圏では、ロボットのような疑似生命体を作る行為は、造物主である神に対する不敬と捉え、やがてその罪は自ら生み出した物の反乱という形で降りかかるという考え方が根強くあります。これを「フランケンシュタイン・コンプレックス」と呼びます。

そもそも「ロボット」という言葉の語源となった1920年代のカレル・チャペック作の戯曲からして、いわゆる作業用ロボットが、自らの境遇を呪い、創造主である主人を殺すというストーリーです。こうした「行き過ぎたテクノロジーが、自らを滅ぼすイメージ」は、キリスト教圏に住む人々にとっては昔から「潜在的に恐れていること」であり、基本的にロボットに対する見方は「信用してはならないもの」であるということになります。
言われてみるとこのような「テクノロジーの暴走」を題材にした小説やハリウッド映画の多種多様さ(「マトリックス」「ターミネーター」など。「スターウォーズ」もテクノロジーを信奉するシスが敵です。)は、このことの証左になるかと思います。

2.「ロボットは友達」の日本人

翻って日本人の「ロボット」のイメージはどうでしょうか。
鉄腕アトムに始まり、鉄人28号、ドラえもん、コロ助、マジンガーZ、草彅素子、ASIMO、ペッパー、初音ミク・・・キリがありませんが、欧米のような「疑似生命体」に対する不信感は皆無。むしろ、人間に近しい容姿や態度をもつ人工物に対する積極的な愛情が伺えます。

これは一つには、先ほど列挙したような「仲間としてのロボット」のイメージが戦後、先行したこと。また、こういったコンテンツの生まれた背景として日本ではキリスト教が持つ宗教観の影響が殆ど見れないこと。
さらに付け加えるならば日本には「八百万の神」と表現される、「万物に等しく魂が宿る」という神道の考え方があり、日本人には意識せずともそれがいつの間にか備わっていることなどが、要因ではないかと思います。

こういったことから日本人にはロボットに対する抵抗感などなく、端的に日本人にとって、テクノロジーは純粋な憧れの対象なのであります。素人考えなので異論は多々あると思いますが、このような日本人と欧米人の「ロボット」に対する距離感こそ、ガンダムとトランスフォーマーにおける欧米の温度差に繋がっていると考えます。

3.トランスフォーマーは宇宙人

それでは「ロボット嫌い」の欧米人が、「トランスフォーマー」を受け入れた理由はなんでしょうか。そこで思い出さなくてはならないのは「トランスフォーマー」の作品世界設定です。以下初代アニメ「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」のwikipediaを引用します。

はるか昔、超ロボット生命体「トランスフォーマー」が住む惑星・セイバートロンでは、平和を愛するサイバトロンと、武力による惑星の統治を目指すデストロンの2つの勢力が永きに亘り戦争を続けていた。この戦争の影響によって、セイバートロン星のエネルギーは枯渇しようとしていた。

サイバトロンは総司令官コンボイの指揮の下、外宇宙へのエネルギー探索を開始。デストロンも、破壊大帝メガトロンの指揮下で、これを妨害すべく追撃を開始。宇宙空間での戦闘中、双方の宇宙船が「とある惑星」の重力に引き寄せられてしまう。両宇宙船はその惑星に墜落。彼らは全員、機能を停止した。

400万年後、火山の噴火のショックで宇宙船のコンピューターが再起動し、生命再生装置により、トランスフォーマーたちは「その惑星」の到る所にあるエネルギーを蓄えられた物体の姿を借り、復活を遂げた。

このように、「トランスフォーマー」は見た目も、劇中の呼び名も「ロボット」ではありますが、人間が造ったものではなく、セイバートロンという惑星出身の宇宙人であり、ロボットの姿は仮の姿であるわけです。この設定、日本人にはピンときませんが(そのコンテンツを好きになる上で大事なことではないという意味です)欧米人にとっては前述した「フランケンシュタイン・コンプレックス」の枠に入らないという、重要なポイントでした。
この設定により、トランスフォーマーは「生理的嫌悪感」を抱かれることなく、欧米人に受け入れられたのだと推測できます。

トランスフォーマーは純日本産のガンダムと異なり、その出自、最初の世界観を作り上げたのはアメリカ人でした。こう言えば簡単なことですが、自然、生まれた時から欧米人に受け入れやすい世界観を与えられていたわけです。 こうして考えると、ガンダムとトランスフォーマー、どちらもヒーローロボットアニメであり、どちらも長い歴史を持ち、玩具メーカーとガッチリ組んでのマーチャンダイズ、そしてその売り上げの規模など、類似点が多いように思えますが、一点世界観を作り上げたのが、日本人だったか、アメリカ人であったかによって、誕生から30年超を経てもなお、世界における勢力図を明確に色分けできるような相違を生み出しているのです。世界を股にかけるトランスフォーマー、日本国内及びアジアのみの市場でそのトランスフォーマーと真っ向から張ることができるガンダム。どちらがより優れているとかではなく、双方の出身地である日本人として、それぞれのオリジンを理解しつつ、両方とも誇りに思うというのがポップカルチャーの信奉者として正しい態度であるのだろうと思います。

さて、次回の【TFお勉強企画】ですが、素人がいくら頭をひねって資料を当たっても仕方ない!ここは専門家に聞いてみようということで、トランスフォーマーとは切っても切り離せないTOYカルチャーについて、東京は上野に居を構えるアメトイ専門店「RED MERCURY」さんにお邪魔しまして、トランスフォーマーの玩具のイロハをご教授頂きましたので、その模様をお届けしたいと思います。

Writer

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アクトンボーイ

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたいと願う今日この頃。

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