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【ネタバレ】『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』レイのアイデンティティ、いかに描かれたか ─ J・J・エイブラムス&脚本家がテーマを解説

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
©2020 & TM Lucasfilm

この記事には、映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のネタバレが含まれています。すでに作品を鑑賞された方向けの内容となりますのでご注意下さい。なお、このページをSNSにてシェア頂く際は、記事内容に触れないようお願い致します。

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
(C) 2019 and TM Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

レイの真実はいかにして決められたか

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』で、レイはルーク・スカイウォーカーによる訓練のさなか、自らのアイデンティティを問い続けた。自分の両親は何者なのか、自分の力はどこから来るのか。スカイウォーカーの血を継ぎ、レイと同じく高いフォースの能力を持つカイロ・レンは、レイに触れた時にその真実を知る。レイの両親は“何者でもない者”で、ジャンク業者の両親は酒代のためにレイを売り払ったというのだ。

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完結編『スカイウォーカーの夜明け』は、この真実を一転させる。レイの祖父は銀河帝国の初代皇帝パルパティーン(ダース・シディアス)だったというのだ。レイに秘められた力は、まさしく血統に由来するもの。レイの両親は、父であるパルパティーンの手から娘を守ったというのである。『最後のジェダイ』の設定をほとんど転覆させた展開は賛否を呼んだが、なぜJ・Jはこの選択に踏み切ったのか。

「この映画のテーマのひとつは、“どこからやってきたのかにかかわらず、誰でも何にでもなれる”というもの。誰もが共感できるかは分かりませんでしたが、(レイに)支持できない、誇りに思えない背景があるという発想を受け入れてくださる方はいると思いました。“お前は何者でもない”というのが衝撃的であることはきちんと理解しています。けれども僕は、それ以上につらく、ショッキングなのは、“ありうるかぎり最悪の地点からやってきた”というものだと考えたんです。自分を形づくっているものの一部が、自分を怯えさせるものであり、自分の運命だったとしたら。そしてルークが言うように、血よりも強いものがあることを描くのが大切だったんです。」

すなわちJ・Jは、復活したパルパティーンの存在を血縁の“呪い”と捉え、レイがいかにして“呪い”を克服するかという物語を描きたかったということだ。共同脚本のクリス・テリオによれば、2人は構想段階で、今回は「自分自身を発見するのではなく、自分を創造する」物語だというキーワードを掲げていたという。

「ライアン(・ジョンソン)が自分自身を発見する展開を作ったので、僕たちがやるべきことは、彼女が何者かを再創造することだと思ったんです。彼女がパルパティーンの血統であることが分かるのは、現在形の劇的葛藤になります。自分が何者でもないと分かることは、必ずしも現在形の劇的葛藤にはなりません。トラック運転手の家系であろうが、すばらしい王族の家系であろうが、この段階では現在形の葛藤にならないと考えました。もしも僕が宿敵J・J・エイブラムスの家系で(笑)、彼に雇われ、彼が上司であり、それが僕にとっては最も暗い闇だとしたら、それは現在形の劇的葛藤になる。デイジー(・リドリー)にとっては演じることが面白い、そして僕たちには面白いストーリーになると思いました。」

J・Jとクリスは、『最後のジェダイ』でライアン・ジョンソンが提示した価値観とは明らかに異なる視点から物語をとらえている。『最後のジェダイ』で描かれたのは、ダークサイドとライトサイド、ひいては善悪の境界線が曖昧になるという価値観。『スカイウォーカーの夜明け』の「宿敵/悪の家系」という発想は、前作の価値観とはやや異なるものだ。もっといえば、ライアンとクリスの脚本に対する考え方が違うらしいこともうかがえる。

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
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パルパティーン復活の理由、J・Jが語る

J・Jは、自身が指揮を執った新3部作について「“偉大なる世代”に続く世代の物語」だと述べる。そして、「フォースにバランスをもたらすことは“選ばれし者”やアナキン・スカイウォーカー、そしてオリジナル3部作の核心だったが、それは必ずしも永遠に続くものではない」という発想に惹かれたというのだ。そして、その結果が、パルパティーンの再登場だったのである。

「注意しておかなければ、究極の悪はまた蘇ってくる。バランスを維持するために何ができるのかを我々は考えておかなくてはなりません。それから、“偉大なる世代”に続く世代はどうするのかということも。レイとカイロ・レンは、きわめて重要な人物であるパルパティーンとスカイウォーカーの孫であり、ふたつの家は新たな世代で協力することになる。このことは必然だったと思います。50年後や100年後、エピソード1から9までを通して観た時に、この物語が必然だったと思ってもらえればいいですね。」

またクリスは、スカイウォーカー家とパルパティーン家の関係性について「ギリシャ悲劇に描かれたような王家の悲劇」だと述べ、それが『スター・ウォーズ』のDNAであるとも述べた。「だからパルパティーンをなんらかの形で登場させなければいけないと思ったんです」。またパルパティーンの“復活”そのものは、創造主ジョージ・ルーカスが『エピソード3/シスの復讐』(2005)で示唆したものだという。

「ジョージ・ルーカスが書いてくれた贈り物があったんです。プリクエルのとある場面で、パルパティーンはアナキンに、“フォースのダークサイドはあらゆる能力に通じている、自然に反することもあると考えられている”と言います。これを、シスは死後でさえも命を延ばさなければならないということの示唆だと考えました。僕たちは、そういう繋がりを取り上げずに3部作をまとめるのはおかしいと思っていたんです。」

映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は2019年12月20日(金)より公開中

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Sources: Collider, The Playlist

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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