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【解説】米ワーナーCEO失脚が浮き彫りにしたハリウッド裏事情 ─ ケビン・ツジハラ辞任、暴露記事は何を明かしていたか

warner bros ワーナー

米ワーナー・ブラザース エンターテイメント会長兼最高経営責任者のケビン・ツジハラが同社を辞任した。The Hollywood Reporterなど主要業界メディアが伝えている。原因は、ある女優とのスキャンダルだった。

日系人のケビン・ツジハラは1994年より米ワーナーに参画。2013年より現役職に就いた。クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』3部作やガル・ガドット主演の『ワンダーウーマン』(2017)など数々のヒット作を生み出した。J.K.ローリングに掛け合い、『ファンタスティック・ビースト』シリーズを生み出したのもツジハラの手腕によるものだ。


一体なぜ辞任に追い込まれたのか。全ては、一本の暴露記事が始まりだった。

情事と代償

米ワーナーCEOが、ある女優のキャリアに裏で手を伸ばしている──。2019年3月6日(現地時間)、米The Hollywood Reporterはそんな記事を掲載した。『オーシャンズ8』(2018)などに出演したイングランド出身の女優シャーロット・カークと、ツジハラら業界有力者たちの不穏な関係を暴露するものだ。

カークは2013年9月、ある人物より「最も重要な男に会わせてあげる」とホテルに呼び出された。当時21歳の彼女を誘った人物とは、オーストラリアの大富豪ジェームズ・パッカー。強力な実業家で、マライア・キャリーとのスピード離婚も話題を呼んだ。セクハラ報道で失脚した有力な映画監督ブレット・ラトナーとその制作会社ラットパック・エンターテインメント(当時)の制作/財務パートナーでもあった。

そこで紹介されたのが、米ワーナーCEOケビン・ツジハラだった。暴露記事によれば、ツジハラとカークは性的関係を持ったとされる。結局その関係が続き、カークはツジハラ周りの有力者、例えばブレッド・ラトナーなどに自身の起用を要求し続けた。

暴露記事は、カークとツジハラ間で交わされたテキスト・メッセージを多量入手していて、ツジハラがカークのTVや映画出演のためにスタジオ幹部に紹介していたことが伺える。同記事はカークが“強要した”と表現している。例えばジェームズ・パッカーには以下のようなメッセージが送られていた。

「ツジハラは私のために何が出来るか考えてくれるみたい。ついに私のキャリアが始まるんだ。」

「あなたの映画はいくつもあるんだから、そのうちの一本に私を出すことくらい、どうってことないでしょう。」

また、2015年3月3日付のツジハラとのやりとりは以下のようなものだった。

カーク
「ケビン、どうしてる?すごく忙しいのは知ってるけど、モーテルでセックスしたときに私のこと助けてあげるって言ったよね。こんな風に無視されたら、私は捨てられたのかなって思う。私のこと助けてくれるんじゃなかったの?

ツジハラ
「そんな風に感じているなら申し訳ない。リチャード(※)に今夜連絡を入れさせるよ…。」

カーク
「ありがとうケビン」

※リチャードはリチャード・ブレナーを指している。ワーナー傘下の映画会社ニュー・ライン・シネマ代表。

事実としてカークは、2016年の映画『ワタシが私を見つけるまで』、2018年の『オーシャンズ8』に出演した。いずれもワーナー・ブラザース配給、製作にはラットパック・エンターテインメントが携わっている。『ワタシが私を見つけるまで』には、リチャード・ブレナーによるニュー・ライン・シネマも関係している。

女優の怒り

その後カークは、予想していた程の役が貰えずに激昂。ブレッド・ラトナーが仲介役に走り、カークへのオーディションおよびラトナーが監督する映画への出演を保証したという。この点についてラトナー側は、あくまで友人としてオーディションを手伝っていただけであり、「彼は何も間違ったことはしていません。ミス・カークにいくつかのオーディションの場を提供してはいますが、仕事は自力で得なさいと一貫して伝えていました」と弁明している。またツジハラの代理人は、「ミスター・ツジハラはこの女優の起用に直接関与していません」と発表していた。

一方カーク本人も、この時点で疑惑を否定。2013年の夏にジェームズ・パッカーと情事があったことは認めながら、一連の経緯に登場した有力者一同との関係には何らトラブルもなかったこと、およびツジハラとは一切の約束事もなかったことを強調。オーディションの際、ブレッド・ラトナーの”コネ”を利用した点も否定した。

ほか、ジェームズ・パッカーとラットパック社は当時、米ワーナーと4億5,000万ドル規模に及ぶ契約締結を進めており、カークはこの取引に自分が利用されたと怒りのメッセージをラトナーに送ったという。ラトナーは取引と彼女は一切関係がないと怒りの返信を入れたとされる。同記事からは、カークが「スーパーガール」や『ワンダーウーマン』などの役が欲しい/オーディションを受けたい、などの要求をしていたことも分かる。

この記事からは、男性陣一同がカークの要求に手を焼いていた様子が見て取れる。2015年8月には、ブレッド・ラトナーがカークに「君の支援はするが、君の態度は酷いよ。そもそも僕は君に何の義理もないのに」など怒りのメッセージを送っている。また、ツジハラから離れるようにとも求めていた。「彼は結婚している身だぞ。何を考えているんだ?

ケビン・ツジハラ、辞任へ

暴露記事が公開された後、ツジハラは「失敗を深く後悔している」との声明を発表していた。米ワーナーは第三者機関による調査を進めており、その結果として同社はこの度、「弊社従業員及びパートナーにとって、ケビンがワーナー・ブラザースの会長およびCEOの座を退くことが最大の利益である」との発表に至った。ツジハラも「私の継続的なリーダーシップが、会社の継続的な成功の妨げになる可能性がある」と認めた。米Varietyは、#MeTooムーブメントの高まりもあり、ツジハラと女優との関係報道はスタジオのチーフとして相応しくないと記した。

この報道を受け、シャーロット・カークは何を思うか。渦中の女優は、米Deadlineに以下のコメントを寄せた。

「ケビン・ツジハラがワーナーを辞任するというニュースを聞いて深く悲しんでいます。私たちの関係は何年も前に終わっていました。The Hollywood Reporterが記事を出したことは、私とは関係がありません。実際、私は防ごうとしたんです。過去にどんなすれ違いがあったとしても、長い間忘れていました。彼の今後のご繁栄をお祈りします。」

同社はツジハラの後任を明らかにしていないが、米The Wrapは候補としてステイシー・スナイダーの名を挙げている。20世紀フォックスの会長兼最高経営責任者であり、買収によるディズニー参画を拒否、合併完了時には勇退を表明した人物である。

Source:THR(1,2),Variety,Deadline,The Wrap

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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