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「ザ・ボーイズ」製作者、「ドラマは10時間の映画じゃない」と持論 ─ ストリーミングの風潮に不満

ザ・ボーイズ シーズン3
©Amazon Studios

Netflixの台頭以来、ストーリーテリングのあり方は大きく変化した。10時間ものドラマシリーズが一挙に配信されることは普通になり、視聴者にもそれらを一気見(ビンジ視聴)するスタイルがある程度定着したのだ。作品によってエピソードの配信ペースはさまざまだが、AmazonやApple TV+などプラットフォームも多様化した今、テレビドラマは長時間を費やした“ひとつの物語”だという見方が強まっている。ドラマシリーズを「10時間の映画」と形容する作り手も珍しくなくなった。

しかし、この風潮に真正面から“ノー”を突きつけるクリエイターがいる。Amazonの人気ドラマザ・ボーイズ(2019-)の製作総指揮を務めるエリック・クリプキだ。「ザ・ボーイズ」で配信ドラマに進出する以前は、テレビの世界で「スーパーナチュラル」(2005-2020)を手がけていた人物である。

「私はストリーミングが大好きで、テレビに戻ることは考えられない」と米Vultureにて語るクリプキは、配信文化にも“欠点”があると指摘する。それは「現在ストリーミングの仕事をしているフィルムメーカーの多くが、以前はテレビの仕事をする必要がなかった人たちである」ということ。クリプキの言葉には、テレビの世界で戦ってきた作り手としての信念がうかがえる。

「10時間の作品なのに、8時間目まで何も起こらなくていいと考える人たちがいます。個人的にはすごく腹が立ちますよ。テレビ屋は1年に22時間、視聴者の興味を惹きつけなくてはならなかった。“頑張ってついてきて、心配しなくていいからね”と言えるわけじゃないんです。批評家が前もって、“8話目ですごいことが起きるぞ!”なんてことを言ってくれもしない。中には“僕が作ってるのは10時間の映画なんだ”と言う人もいますが、ふざけんな、そんなわけないだろ、テレビを作れよ、と思います。あなたがいるのはエンターテイメント業界だぞって。」

あえて単純に考えれば、これは作り手のストーリーテリングに対する思想の違いだとも言えるはずだ。長いスパンで物語を語りたい者もいれば、テレビシリーズである以上、短いエピソード単位で物語を紡ぐべきだという者もいる。しかしその背景には、大手映画スタジオが中規模のオリジナル企画に出資する傾向が弱まり、逆に配信プラットフォーム側がそうした企画に意欲を示すために、クリプキの言う「以前はテレビの仕事をする必要がなかった人たち」がストリーミングに続々進出してきたという事情もあるだろう。かたや『スター・ウォーズ』やマーベル作品に顕著なように、ビジネスとしてドラマシリーズを量産し、そこに映画畑のクリエイターを投入するケースもある。

クリプキが「テレビに戻ることは考えられない」と述べた理由は、撮影前に脚本をほとんど仕上げ、配信前に全話を完成させるスケジュールの利点が大きいようだ。本人いわく「第7話を撮っている時に別のストーリーラインが必要だと気づくことはよくある」そうだが、撮影と放送が並行するテレビドラマの場合はやり直しが効かない。しかし配信作品ならば「第1話を撮り直し、また戻ってくる時間がある」とは本人の談だ。とはいえ、この作り方自体は“10時間の映画”に近い方法。製作スタイルとストーリーテリングが必ずしも一致しないのが創作の難しさ、というべきか。

Source: Vulture

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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