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イギリス、配信作品でも従来テレビ同様の表現規制へ ─ Netflixは強化歓迎の構え

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地上波では不可能な描写ができるのが、ストリーミング作品の強みだ。ところがイギリスで、ストリーミング作品であっても放送局と同様の規制を施す動きが見られている。

規制を進めるのは、ボリス・ジョンソン首相によるイギリスの保守政権。このほど発表された新たな政策文書(ホワイトペーパー)で、ストリーミング作品に対して従来のテレビ番組同様の規制を求めている。米The Hollywood Reporterなどが報じた。

規制の目的は、国内の視聴者を「健康被害につながるなど、幅広い有害な内容」から保護するため。違反した場合は、最大25万ポンド(約4,090万円、1ポンド163円換算)または年間収益の5%、いずれかの高い方が課せられる場合がある。

イギリスでは、2003年に制定された放送通信法より、公共サービス放送(PSB)を5年ごとに見直す定め。この度の見直しは、アナログ放送からデジタル放送への完全移行前に策定された複雑な同法を、時代に合わせて「強化」「合理化」する狙いがある。改訂により、イギリスの文化を反映させた個性的で多様なブリティッシュ・コンテンツの提供、自国の映画やTVプロダクションの支援、公平で正確なニュースの提供を目指す(この度の見直しではストリーミング・サービスへの規制のほか、公共放送局の民営化などの要件も含まれている)。

イギリスのテレビ放送と通信を規制監督する機関Ofcomの発表によると、同国では4世帯に3世帯が定額制ビデオオンデマンドサービスを利用しているが、Disney+やAmazon Prime Videoといったサービスは、同国テレビ局のような規制を受けておらず、またNetflixとApple TV+は全く規制されていない。「18歳未満に対する保護はあるが、例えば誤解を招くような健康アドバイスや擬似科学のドキュメンタリーから視聴者を守るルールは最低限しかない」という点を問題視した。

英政府はストリーミング各社に対し、「イギリスの視聴者を守るため、より厳しいルールに従ってもらう」ことを求める。従来の放送局向けのルールをストリーミング・サービスにも「平準化」するものとされることから、ストリーミング作品がテレビ同様の規制を受けるものと見られる。NetflixやAmazonなど、ストリーミング・サービスの主要プレイヤーはアメリカに本社を置いているが、イギリス展開時には「郷に従う」必要が生じる。

多くのストリーミング・サービス提供社にとってイギリスは一大市場。政府決定に反発しては同国でのサービス提供制限、あるいは禁止を招く恐れがある。規制の詳細はこれから明らかになっていくと見られるが、各社の対応に注目したい。米DeadlineではNetflixのコメントが掲載されており、「他の提案も検討し、その計画について政府と関係を築いていくことを楽しみにしています」として規制強化を歓迎する構えだ。

Source:The Hollywood Reporter,Deadline

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。