「その日のタスクだけに集中すべき」巨匠リュック・ベッソン監督に訊く仕事術 ─ 『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』

ビジネスマンや学生にとって、映画監督から学ぶべきことは多いはずだ。その映画の大小に関わらず、製作には実に大勢の人間を巻き込み、とりわけ大作となれば数億円規模の金を動かすことになる。優れた映画監督とは、すべからく仕事術にも長けていると言えるだろう。
では、「巨匠」と呼ばれる映画監督は、どのようなマインドセットで「ハリウッド超大作」プロジェクトに挑むものなのだろうか。『レオン』(1994)や『フィフス・エレメント』(1994)、『LUCY/ルーシー』(2014)などの傑作で知られ、2018年3月30日には最新作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』の日本公開が控えるリュック・ベッソン監督に尋ねた。

「その日やることだけに集中」
『ヴァレリアン』は、最新鋭のVFX技術により、観るものの想像を絶する壮大な映像が繰り広げられる。当然、製作もさぞ大規模で複雑さを極めたはずだ。これほどのスケールのプロジェクトを、ベッソン監督はいかにしてハンドリングしていたのか。
「プロジェクトが大規模すぎて、全体のことを考えると死ねると思いました。」監督は振り返る。
「だから敢えて視野を狭めるというか、今日はこれだけをやる、明日はこれ、明後日はこれ、とこなすことで何とか生き延びました。一度に全体像を考えちゃいけないんですよ。その日やるべき事だけに集中した方が良いですね。」
どうすればアイデアを伝えられるか
「劇中では約15分のシーンですが、撮影には6週間もかかっています。撮影前に技術者全員を集めて、絵コンテを見せながら1時間かけてこのシーンを説明したのですが、1時間の説明の後、みんな(きょとんとした顔をして)”うーん…”という反応だったんです(笑)。これは誰も理解してくれていないぞと。だから僕も(頭をポリポリ掻きながら困り顔で)”うーん…”と(笑)。」
「どうしたら良いんだろうと思って、僕のやっている学校(※)から生徒をかき集めて、1週間かけて絵コンテ通りに実演してもらったんです。生徒にヴァレリアン役やローレリーヌ役をやってもらいながらね。これをいったん撮影して、編集もして、音楽までつけて15分の映像を作ったんです。砂漠のシーンは画面が黄色っぽくて、メガネを通じて観る画は赤っぽく、エイリアンになって巨大市場の中に入ると青っぽくなる。この映像を繋げると、黄色、青、赤、赤、黄色、青、青…と色が移ろい変わっていく。これを技術者の皆さんに観てもらって、ようやく”あぁ〜、こういうことですね…”と理解してもらえたんです(笑)。撮影直前まで困難の連続でしたよ。」
※リュック・ベッソン監督は、パリに映画学校「レコール・ド・ラ・シテ」を設立している。
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