【考察】『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』クレタスの独房の壁、スパイダーマンやモービウスを示唆?360度動画とブルーレイ映像特典から考える

原作マーベル・コミックでは、スパイダーマンの最悪のヴィランとして描かれているヴェノム。大人気シリーズ作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は、マーベル映画の可能性をさらに広げる、リーサルな作品だ。現在デジタル配信・レンタル中で、2022年4月8日(金)よりブルーレイ&DVD&UHDも発売&レンタル開始。作品の細かなところまでじっくり検証できる。
これに先駆けて、危険度MAXのヴィランであるカーネイジことクレタス・キャサディが収監されていたサン・クエンティン刑務所の独房内部をグリグリ自由に眺められる360度動画が特別公開。これをよく観察してみると、物語のヒントや、今後の展開への示唆が詰まってることが判明。この記事では、クレタスの独房360度動画や、発売される本作のブルーレイ特典映像を元に、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を新たな視点から考察していこう。
クレタス・キャサディの独房に重大なヒントが隠されていた?
前作『ヴェノム』(2018)のポストクレジットシーンにちらりと登場したクレタスは、新聞記者のエディ・ブロックを一方的に気に入っている。本作では、離れ離れになった恋人シュリークに自分のメッセージを伝えたいがために、殺人鬼である自分の半生を独占記事のために語ると申し出る。
劇中でエディがクレタスの独房をちらりと覗き込んだ時、その壁中には様々な落書きが刻み込まれていた。ヴェノムはひと目見ただけで、まるでカメラのように記憶し、後から紙に書き出していた。この動画のおかげで、ついに我々もあの部屋に何が描かれていたのか、じっくりと確認することができる。よく見ると、今後のマーベル映画の展開を示唆するヒントらしきものがあるのだが……?

クレタスの過去と執着
壁には英文字やイラストが刻まれているが、そのどれもが無秩序で子どもっぽい。これはクレタスが幼くて独りよがりな精神世界に囚われたままであるというソシオパスぶりを表しているようだ。これらのイラストをよく見ると、とある性質があることに気づく。いずれも、クレタスの過去の記憶や、彼が執着するものに関連する書き込みであるということだ。
窓のある奥面に向かって左側の壁、右半分の真ん中あたりに、クマのぬいぐるみらしいものが描かれている。原作コミックでカーネイジが初登場した際(『The Amazing Spider-Man #361』)、クレタスは大切にしていたテディベアを突然ズタズタに引き裂き、カーネイジに変身して襲いかかってくるという狂気を見せている。この壁にもその右側に、クマの頭部を持って叫んでいるような落書きも確認できる。
これは、映画版のクレタスもコミック同様、かつてクマのぬいぐるみを大切にしていながら、それを自ら破壊した出来事を経ていることを示唆している。このように、壁の落書きには、クレタスが強く記憶していることが描かれているようである。360度動画では暗くて見にくいのだが、実は窓の下には、棒人間がバスタブにドライヤーを投げ入れているイラストがあるのだ(本編中では、帰宅したヴェノムが紙に落書きをコピー再現するカットで確認できる)。これはクレタスが幼少期に入浴中の母親に向かってドライヤーを投げ、感電死させた事件の再現。劇中のアニメではその直後、飼い犬をドリルで虐待しようとする瞬間もあったが、この様子も左側の壁のテーブル上部に描かれている。
母親をドライヤーで殺した場面のイラストは、実はクレタスがエディ宛に出したハガキにも描かれている。やはりクレタスは、自分の見た強烈な光景を絵に描くという性質があるようだ。つまりこの独房の壁は、クレタスの混沌とした脳内を視覚的に表現したものと捉えることもできる。
そこには、クレタスの執着心も描かれている。イラストと共にいくつもの英文字も刻まれているが、本作ブルーレイの映像特典「イースター・エッグ紹介」によると、これらはバイロン卿の“プロメテウス”や、ウィリアム・ブレイクの“地獄の格言”、そしてブラム・ストーカーの“吸血鬼ドラキュラ”といったイギリスの詩人や小説家の作品からの一説。クレタスはこうした創話に取り憑かれており、お気に入りの一説をわざわざ壁に刻み込んでいるというわけだ。
また、孤独だったクレタスにとって唯一の心の拠り所であったシュリークらしき絵も描かれている。窓の右側に髪の長い女性のような横顔と、「MY LIGHT」と描かれたハートマークがあるのがわかるだろう。さらに右側に移ると、こちらも暗くて見にくいのだが、天使のように飛び上がる女性と、劇中でクレタスらが結婚式を挙げる教会らしきイラストも描かれている。獄中のクレタスは、シュリークによって救われ、結ばれることを強く念じていたのだ。

スパイダーマンとモービウスの示唆?
ここからが問題である。窓側の壁の上部にクモが描かれているのだ!なぜ、クレタスはわざわざクモを壁に書き出したのか?ここに描かれている落書きは主に彼の記憶や執着に関するものだが、もしかしてクレタスは、スパイダーマンの到来を野性的に予感していたのだろうか?
それだけではない。同じく窓面に描かれた木の右上に、吸血鬼らしき姿も見えるのである。この世界での吸血鬼といえば、ジャレッド・レト主演で公開される『モービウス』ではないかと勘ぐりたくなってしまうだろう。もちろん、クレタスが“吸血鬼ドラキュラ”の小説を読んでいたらしいことから、この吸血鬼はモービウスとは関係がない可能性も考えられる。しかし、ソニーのユニバースを切り開く重要な本作に、何の意味も持たないクモや吸血鬼が、わざわざ登場するなんてありえるだろうか?そういえばクレタスは劇中で、クモを叩き潰していたが……?
ちなみに、蜘蛛と吸血鬼の周囲に英文が刻まれているが、これらはそれぞれ小説“フランケンシュタイン”と哲学者プラトンの一説からの引用で、おそらく深い意味はなさそう。ただし、壁の落書きの中でとりわけエディたちにとって重要なヒントとなった「ハートマークが描かれた木」に書かれたプロメテウスの一説は意味深。ギリシャ神話の中でプロメテウスには「火」を盗み出して人間たちに与えるという物語がある。これは、クレタスがエディからシンビオートを盗むという展開と重なっている……というのは深読みのしすぎか。
こんな壁の落書きの意味を真面目に検討することに何の意味があるのかって?実際に劇中でも、この落書きが手がかりとなってエディたちはクレタスの犯行を暴いている。この中に何か重要なヒントや興味深い気付きが隠されていても、何らおかしくはないはずだ。

レイヴンクロフトに要注意
また、本作でシュリークが収容された施設、レイヴンクロフトも今後につながる要となりそう。レイヴンクロフトとは、原作ではドクター・オクトパスやミステリオ、バルチャーといったスパイダーマンの凶悪ヴィランたちが収監された精神病棟。DCのバットマンにおけるアーカム・アサイラムのような位置づけだ。
そしてレイヴンクロフトといえば、かつて『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)にも登場しており、幻の企画『シニスター・シックス』を示唆するような描写となっていた。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)の大成功を受けてあらゆることが可能になったこのユニバースなら、レイヴンクロフトから邪悪な何かが動き出すという展開も十分にあり得る。劇中でも「お前の顔を剥いで被ってパーティに行ってやる!」と物々しいことを叫ぶ収容患者がいたが、この施設から次なるヴィランが登場するかもしれない。来たる『モービウス』や、『クレイヴン・ザ・ハンター(原題)』などでもしもレイヴンクロフトが再登場したら、「『ヴェノム』で出てきた危ないところだ!」と思い出してもらいたい。

レイヴンクロフトについて、もう一つだけ。劇中でシュリークの担当医として登場し、脱獄したクレタスの触手に締め殺されていた白髪の女性はドクター・パッゾといい、コミックではクレタスの主治医として登場する。実は本作の未公開シーンで、パッゾが「ドクター・カフカを呼んできて」と言うところがあるのだ(ブルーレイの映像特典でチェックしよう)。
ドクター・カフカといえば、『アメイジング・スパイダーマン2』ではエレクトロに人体実験を行なっていたマッドサイエンティスト。『アメイジング』では男性だったが、原作コミックでは女性だ。優秀な精神科医であり、エレクトロやヴァルチャー、ドクター・オクトパス、そしてカーネイジといったスーパーヴィランたちを治療している。結局本作には登場しなかったが、今後の作品で他のヴィランたちにつながっていく展開があるかもしれない。
映像特典で『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』をじっくり堪能
さて、マーベル作品を追いかけてきている方であれば、『ヴェノム』などソニーのユニバースと、MCUが今後どうクロスオーバーしていくのか、ワクワクされているはずだ(『ノー・ウェイ・ホーム』を観ちゃったら、尚更だよね!)。先述したように、このユニバースからは今後『モービウス』や『クレイヴン・ザ・ハンター』といった注目映画に加え、どうやらスパイダーウーマンやシルバー・セーブル&ブラック・キャット、マダム・ウェブ、ジャックポットといった新企画も続々と準備されている模様。本作などで何かと示唆されているように、このユニバースが今後とんでもないフランチャイズになっていく可能性は大アリである。いわば、『ヴェノム』の2作はそのトップバッターだったのだ。この重要作を、改めてじっくりチェックしておかない手はない。
ブルーレイでは、豊富な特典映像ももちろん楽しめる。本記事でご紹介した他にもまだまだ隠されたイースターエッグを紹介するものや、はしゃぎまくるウディ・ハレルソンが可愛いNGシーン集など盛り沢山だ。
中でもオススメはエディとヴェノムのコンビに迫る「おかしな二人」。劇場公開時から「これはエディとヴェノムのラブコメでは?」との声が絶えなかったが、本映像でもアンディ監督が本作の2人について「滑稽な痴話喧嘩」「ドデカい駄々っ子と暮らしているようなもの」などパワーワードを連発し、エディ役トム・ハーディに至っては「本質的には愛情で結ばれている」との核心的なコメントも投下している。マーベル映画としての小ネタも楽しいが、もちろんエディとヴェノムの謎にラブコメチックなイチャつきも心ゆくまで堪能できるのだ。

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』はデジタル配信・レンタル中。2022年4月8日(金)よりブルーレイ&DVD&UHD発売&レンタル開始。
日本限定プレミアム・スチールブック・エディション【完全数量限定】(2枚組) 10,120円
ブルーレイ&DVDセット(2枚組) 5,280円
4K ULTRA HD&ブルーレイセット(2枚組) 7,480円 ※全て税込み
© 2021 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. MARVEL and all related character names: © & ™ 2022 MARVEL