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「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」能力者バトルを描く『X-MEN』の系譜継いだSFアクション ─ HBOの新たな自信作、魅力を大解剖

「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」
© 2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

どの時代においても社会から疎外され、虐げられてきた存在がいる。そのほとんどは、声を上げ行動を起こしたとしても、高圧的な社会構造とそれを牛耳る権力によって押し潰されてきた。しかし、もし望まぬも身についた“特殊な力”で抗える可能性を見出すことができたら……?

高クオリティ、大スケール、ハリウッドの製作スタイルによって数々の傑作ドラマを送り出してきた米HBOの新たなSFアクションシリーズ「ザ・ネバーズ」は、英国ヴィクトリア朝を舞台に、陰謀潜む男性社会に真っ向から挑む女性たちの戦いを描いたリベンジドラマだ。米国で配信開始となった2021年4月当時、HBOオリジナル作品における配信初日の視聴者数で140万人という数字を叩き出し、史上最多記録を更新した。

この「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」が、2022年3月18日(金)より日本でダウンロード販売・デジタルレンタル、DVDレンタルが開始となる。同じくHBOが誇る超大作「ゲーム・オブ・スローンズ」のアクション、登場人物・物語の濃さ、官能要素を譲り受けながら、物語としてはミュータントたちの戦いを描く人気シリーズ『X-MEN』の系譜を継いでいる。さらに、英国が舞台という共通点を持つ『シャーロック・ホームズ』や『007』『キングスマン』といった名シリーズのいいとこ取りをしている点でも見逃せない。

「世紀末版『X-MEN』」

物語はわずかなプロローグを経て3年後、イギリス・ヴィクトリア朝末期の1899年。主人公は、その時代の主流ファッションであるパフスリーブに身を包んだ女性たちだ。黒髪の女性アマリア・トルー(ローラ・ドネリー)によって営われる、表向きは救護院と名乗られた施設に、「タッチト(the Touched)」と呼ばれる特殊能力を持つ女性たちが共同生活を送っていた。

老若男女が行き交う盛んな街中では、新聞売りの少年がこう声を張り上げる。「マラディが5人目を殺した。切り裂きジャックを超えそうだ」。そう、この時代は連続殺人犯ジャック・ザ・リッパーこと、切り裂きジャックが英国中を震撼させてから10年余り。「ザ・ネバーズ」の世界では、切り裂きジャックをも超える“悪”に人々は怯えている。

「平和から程遠い世界でマイノリティが身を隠して暮らしている」という設定、マーベル・コミックの『X-MEN』シリーズとどこか類似していないだろうか。実際のところ、海外メディアの多くが「ザ・ネバーズ」に『X-MEN』要素を見出しており、米The Hollywood Reporterはレビューで「世紀末版『X-MEN』」と形容している。

「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」
© 2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

多彩なキャラクター、『007』らしい爽快アクションも

物語を動かしていくのは、先述の「タッチト」と呼ばれる特殊能力者たち。『X-MEN』では「突然変異」によって人知を超えたパワーを与えられたミュータントが描かれたが、「ザ・ネバーズ」でも『X-MEN』と肩を並べるほどのユニークなキャラクターが登場する。例えば、救護院を営むリーダーのアマリアは、少し先の未来を読むことが出来る予知能力者。また、アマリアの相棒ペナンス・アデア(アン・スケリー)は電気エネルギーを視覚的に捉える能力、救護院の仲間に加わる娼婦のデジレ(エラ・スミス)は相手に秘密を吐かせてしまう能力を備えている。

他にも鳥を操れたり、息を吹くだけでモノをガラス化してしまったり、怪力を持ったりといった物理的な能力者もいる。さらには「タッチト」にしか聞こえない歌で仲間を招集できるキャラクターもいて、こうした限定的な能力を見ると、まだまだ他にもたくさんいるのではないか?とワクワクが止まらない。これらの多彩なキャラクターたちこそ、「ザ・ネバーズ」の魅力と言えるだろう。物語では、ミュータントたちを率いるプロフェッサーXの役割を未来の“読み主”であるアマリアが担い、アウトサイダーな女性たちが戦いに挑んでいく。

「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」
© 2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

「ザ・ネバーズ」の特徴にして輝るところといえば、「タッチト」たちの多くが能力を使いこなすどころか、それが何かを理解できていないという点。そのためアクションシーンも多い劇中では、意外にも体当たりなバトルが多い。とりわけバトルが多いのは、例の予知能力を持つアマリア。しかし、能力を上手く使いこなせないアマリアは、目の前に現れた敵をとにかく殴り、蹴り、がむしゃらになって飛びつく。「能力があるのに使えない」という演出側の大胆な舵取りは戦いに一波乱を生み、豪快なアクションへと繋がっていく。

豪快さに加えて、爽快さも「ザ・ネバーズ」アクションの醍醐味。これに大きく貢献するキャラクターが先述したアマリアの相棒、ペナンスだ。彼女には電気エネルギーを視覚的に捉える能力のほかに、もう一つ恵まれた能力がある。「開発」だ。ペナンスは戦いに求められる様々な戦闘機器や武器を作り出し、その姿はさながら『007』の武器開発スペシャリストQのよう。第1話ではまさに『007』シリーズの派手で爽快なチェイスシーンを彷彿とさせる場面が登場し、そこではペナンスの開発品が見せ場を作る。『007 黄金銃を持つ男』(1974)では悪党スカラマンガが飛行機と車がフュージョンした乗り物に乗って爽快に逃げおおせるシーンが登場するが、ペナンスたちは逆の発想で馬車からハイテクビークルを分離し、難を免れる。どちらも観ていて胸が躍るアクションシークエンスだが、善人のペナンスにはエールを送りたくなる。

「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」
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倒叙ミステリー風なストーリー、「敵」への重層的なレイヤー

こうしたキャラクターのユニークさ、アクション要素に加えて、「ザ・ネバーズ」の屋台骨となっているのが「物語の深み」である。ここまでお読みになった方は、次のような疑問を思い浮かべたかもしれない。そもそも「タッチト」って何? または、彼女たちは何に対して抗っているのだろう、と。これらについてはズバリ「倒叙ミステリー」風に、視聴者は登場人物たちと同じ目線で真相に迫っていくことになる。

これは後述の「タッチト」に隠された秘密ともリンクすることになるのだが、「タッチト」への見方は「マジョリティ」と「マイノリティ」の二元論的ではない。とりわけ、重層的なレイヤーが敷かれているのが、ヴィランの存在。物語はこれもまた「敵」と「味方」という二項対立ではなく、常に“見極め”が求められる。誰が「タッチト」たちを陥れようとしていて、誰が本当の「仲間」なのか。もしかすると、内部に裏切り者がいるかもしれない。愛着を抱いていたあのキャラクターが、まさか……。ミステリーの源流であるイギリスらしく、参加型の謎解きを楽しめるのが「ザ・ネバーズ」なのである。

「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」
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もっとも、物語には明白なヴィラン的キャラクターも登場する。新聞売りの少年が口にしていた「マラディ」というキャラクターだ。このマラディも「タッチト」に分類される存在なのだが、救護院のある人物から裏切られた過去を持つことから、道を逸れてしまう。なんだかミュータントテロリストのマグニートーと重なる。しかしこのマラディ、マグニートーとは異なる恐さを持つ。彼女の初登場シーンは事件現場として登場しがちなオペラの劇場。フィクションに浸る観客の前で酷い殺人をやってのけ、血の気も失せるノンフィクションを突きつける。その後も暴走していくマラディだが、果たして視聴者は彼女をヴィランとして見られるだろうか。

と言うのも、この問いこそ「ザ・ネバーズ」が提供する物語の深みなのだ。マラディを演じたエイミー・マンソンは、演技の着想元にパティ・ジェンキンス監督『モンスター』(2004)でシャーリーズ・セロンが演じた主人公の娼婦を挙げる。この娼婦は客からレイプされ、そのショックから殺人を犯してしまう。社会的弱者の彼女は生計を立てるべく、最後の手段として殺人を繰り返してしまうのだ。

マンソンいわく、マラディにとって殺人とは、「復讐にほかならず、“私は被害者で、彼らにレイプされそうになったということを知ってほしい”と思っているだけ。これは自己防衛なのだ」という。「ザ・ネバーズ」は、悲劇の度に悪に堕ち、再び善を取り戻す「やり直し」の物語ではない。社会にとって明白なモンスターに隠れ、あぐらをかく“真のモンスター”に警鐘を鳴らす物語なのだ。

これぞHBO、新たな野心作を目撃せよ

「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」
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こうしたマラディにとっての必要悪を作り出したのは誰か?何か?という疑問こそ、HBOの精神性を継いでいる点である。鉄の玉座を手に入れるためには流血をいとわない「ゲーム・オブ・スローンズ」、人間に至上の娯楽を提供するためにアンドロイドを奴隷とする「ウエストワールド」、または政府が事実を隠蔽しようとする「チェルノブイリ ーCHERNOBYLー」といった史実を基にした作品まで、「大義のための必要悪」を問うというテーマは一貫している。この意味でも、「ザ・ネバーズ」はHBOが自信をもって提供した1作と言えるだろう。

ちなみに「ザ・ネバーズ」は、新型コロナウイルスの影響でシーズン1が2つのパートに分割された。このたび開始となったデジタル配信とDVDに収録されているのはパート1全6話分だが、物語は最終話に急展開を迎える。内容については重大なネタバレに当たるため言及を避けるが、一つだけ言えるとすれば、それまでの物語は氷山の一角に過ぎず、むしろ熾烈なバトルの幕開けを告げるものとなるだろう。

「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」
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「タッチト」たちの壮大な戦いを目撃せよ。HBOが放つSF大作シリーズ「ザ・ネバーズ<シーズン1>パート1」は2022年3月18日(金)よりダウンロード販売・デジタルレンタル、DVDレンタル開始。

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント  
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
© 2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
※R-15指定

参照: THR,Monsters and Critics

Writer

SAWADA
SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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