AIが配給・配信作品を価値判断、米ワーナー導入へ

“その日、AIが命の選別を始めた”としてAI(人工知能)の暴走を描く映画が日本で公開される一方、米国ではAIを活用して“価値の選別”に役立てるらしい。
米The Hollywood Reporterなどが報じる所によると、米ワーナー・ブラザース スタジオは米国外における作品の価値判断にAIを試験導入する合意を発表したという。
このAI技術を提供するのはCinelytic社。「コンテンツ、および(監督やキャストらの)価値評価に関する意思決定を伝え、リリース戦略をサポートする」という。ねらいは、本質的な仕事へ集中すること。反復的なタスクに費やす時間を削減することにより、スタジオ首脳陣は「パッケージング、企画へのゴーサイン出し、マーケティング、配給への意思決定における実用的な検討」に、継続的に集中できるということだ。これまで人力で数日かかっていた試算も、わずか数秒で可能になるという。たとえば、データに基づいた劇場公開日の最適化などが可能になるほか、映画祭など、数時間で巨額が動く入札合戦に効力を発揮し、読み違いによる興行的“不発”作への意思決定を防ぐことができる。
「この業界で、我々はタフな決断を毎日下している」と、スタジオのインターナショナル・ディストリビューションのトニス・キースは語る。「何を、そしてどのようにプロデュースし、世界中の劇場に映画を届けるべきか。データが正確であればあるほど、観客へのエンゲージを高めることができる。」
「人工知能と聞くと怖い気もしますが、現時点で人工知能はクリエイティブに関する判断は下せません。」Cinelytic社を4年前に創業したトビアス・クアイサーによれば、このAIが得意とするのは「数字を噛み砕くこと、膨大なデータセットを分析すること、および人間にはわからないパターンを示すこと」だ。クリエイティブな判断には、引き続き人間による「経験と直感」が必要だと述べている。
ただ、ダーシー・アントネリス(元ワーナー・ブラザースのデジタル・エグゼクティブ、現Amdocs Media)は今後5~10年のハリウッドにおいて「クリエイティブにおけるAI活用は間違いなく増えていく」と予見している。プロデューサーや監督にとっては、製作へのアプローチがAIによって変化するだろうと言うのだ。
Cinelytic社のWebサイトには、同社が提供するツールのサンプルが掲載されている。たとえば『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)の画面では、国内外の劇場興行やDVD/ブルーレイ、デジタル配信における収入予測のほか、クエンティン・タランティーノ監督やレオナルド・ディカプリオの過去作データにおける興行収入、作品予算の中央値、“タレントスコア”も表示されている。
日本貿易振興機構によれば、北米だけでも1年で700本以上の映画が劇場公開されている。作品ごとに蓄積される膨大なデータをうまく活用できれば、これまでにない効率的で合理的な意思決定が可能になるのだろう。“作業”仕事に費やす時間を削減し、クリエイティブな仕事に専念できる環境を提供するのが、AI技術の本質だ。
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Source:THR,Deadline,Cinelytic,日本貿易振興機構