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【解説】米ワーナーメディア、ディスカバリーと新企業設立へ ─ ワーナー・ブラザース&HBO Maxの今後どうなる、ゲーム部門は分裂

ワーナー・ブラザースやHBO Maxなどを擁する米ワーナーメディア(WarnerMedia)と、ディスカバリーチャンネルで知られる米ディスカバリーが経営を統合し、新たなグローバル・エンターテインメント企業を設立することがわかった。両社の統合は2022年中頃の完了予定。2021年5月17日、ワーナーメディアの親会社であるAT&Tが発表した。

ワーナーメディアは、映画部門であるワーナー・ブラザース、大手テレビ局のHBO、CNN、TBSのほか、DCコミックスやカートゥーン・ネットワークなどを統括する一大企業。米国最大手の通信企業であるAT&Tは、2018年に850億ドルで旧タイム・ワーナー社を買収し、自社の主力事業としてワーナーメディアをスタートさせていた。ところが、わずか3年でAT&Tは方針を転換し、ワーナーメディアを手放すこととなった。AT&Tはワーナーメディアの売却によって430億ドルを受け取り、新会社の株式は、AT&Tの株主が71%、ディスカバリーの株主が29%を所有する。

新企業、ワーナー・ブラザースの今後どうなる

発表によると、ワーナーメディア&ディスカバリーによる新会社の名称は未定ディスカバリー社のCEOであるデヴィッド・ザスラフ氏が新会社の指揮を務める。新企業では、ワーナーメディアの保有する巨大なライブラリと、ディスカバリーの保有する世界各地にまたがる作品群とノウハウを結集させ、テレビ放送の選択肢や可能性を拡大するのみならず、ストリーミングのオリジナル作品にも投資していくということだ。

一方、新型コロナウイルスの感染拡大が社会問題化していた2020年5月に、ワーナーメディアのCEOに就任したジェイソン・カイラー氏の進退は不明。AT&Tとディスカバリーによる記者発表では、カイラー氏は「現職にとどまる」と語られたが、新企業の方針や幹部の人選はザスラフ氏に委ねられる。米The New York Timesは、すでにカイラー氏が退職の交渉に向けて弁護団を雇用したと報じているが、公式の見解は得られていない。新企業の発表後、カイラー氏は自社のスタッフに対し、感謝の言葉とともに「自分の仕事に集中し、チームの可能性に従う」よう求めたという。

新企業の設立後、ザスラフ氏はワーナー・ブラザースのオフィスから事業の指揮にあたる。映画部門のスタッフがどのような処遇となるかは不明だが、米Deadlineによれば、映画界ではザスラフ氏の新体制を肯定的に捉える声が大きいという。ディスカバリー社を長年背負ってきたザスラフ氏は、カイラー氏よりも業界に通じ、また作り手に近い人物だというのだ。今回の記者発表でも、新企業を「創造性や柔軟性、物語を求める人々が頼れる居場所にしたい」と述べ、クリエイターとの関係性を重視するコメントを口にしている。

2021年、ワーナーは劇場公開作品をHBO Maxで同時配信する方針で物議を醸し、クリストファー・ノーランら一部の作り手や映画館企業との対立を深めたが、この戦略はカイラー氏の判断によるもの。なお新企業の設立にあたり、情報が錯綜しているのが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『DUNE/デューン 砂の惑星』だ。このたびDeadlineは、同作が2021年9月にヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映されたのち、HBO Maxでの配信に先がけて劇場公開されると報じたが、ワーナーメディア幹部のヨハンナ・フエンテス氏は自身のTwitterにて「米国では劇場公開と同日配信」だと報道を訂正した。

記者発表では、今後の計画について、HBO Maxの会員数増加や映画興行収入の増大を目指すことについては言及されたものの、映画公開に関する具体的な方針は告知されなかった。なお米Axiosのステファン・トティロ記者によると、ビデオゲーム部門であるワーナー・ブラザース・インタラクティブ・エンタテイメントは、AT&T傘下に残るチームと、新企業に移るチームに分裂するとのこと。同部門には多数のスタジオや人気シリーズが存在するため、いかなる変化が生じるかは続報を待ちたい。

HBO Maxとディスカバリープラス

ワーナーメディアとディスカバリーの経営統合によって、もうひとつの問題となるのが、両者独自の映像配信サービスだ。ワーナーメディアはHBO Max、ディスカバリーはディスカバリープラスを有しているが、これらは今後どのような展開を迎えるのか。

ポイントは、HBO Maxがアメリカを中心としており、いまだ海外へ本格進出していないのに対し、ディスカバリープラスがイギリスやポーランド、東ヨーロッパでのサービスを開始していることだ。2021年、ディスカバリープラスは日本でもサービスを始めるほか、インド・スペイン・イタリア・ノルウェー・中東・オランダ・トルコ・サウジアラビアに進出し、その後は南米やアジア圏に展開する計画もある。

現在、HBO Maxは南米でのサービス開始を控えているほか、ヨーロッパでもサービス開始に向けて準備が進んでいる。しかし新企業の設立後、ふたつのサービスが独立したまま展開されるのか、あるいは統合されるのか、メリットの大きい複数契約プランが用意されるのかは未定。現時点で進行しているHBO Maxの世界展開に影響はないというが、米Variety「アジア圏への影響は未知数」と見ている。日本とインドではディスカバリープラスのサービスが始まるものの、両国にHBO Maxはサービスとして入ってきていないのが現状だ。「HBO Maxを新たに追加することも容易に想像できれば、両サービスの相乗効果で利益を得ることも考えられる」というが、果たして。

Source: Deadline(1, 2, 3, 4), Variety(1, 2), The New York Times, Johanna Fuentes, Stephen Totilo

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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