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マイケル・ベイ、禁断のパルクール映画が完成 ─ しかし危険で違法なので「監督として容認できない」「『トランスフォーマー』より大変だ」

https://www.instagram.com/p/DGoeGF_ITg5/ | U.S. Air Force Photo/Tech. Sgt. Larry A. Simmons https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Michael_Bay_060530-F-4692S-004.jpg | Remixed by THE RIVER

『トランスフォーマー』シリーズなどで知られる“ハリウッドの破壊王”マイケル・ベイ監督による初のドキュメンタリー映画『We Are Storror(原題)』が、サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)で世界初上映され、スタンディングオベーションで迎えられた。米Varietyなどが報じている。

YouTube再生回数30億回以上、チャンネル登録者数1,000万人超え。イギリスを拠点に活動する7人組の人気パルクール集団「ストーラー(Storror)」を追いかけた本作は、ベイのキャリアにおいて最も困難な作品だった。命綱なし、無許可で危険なパルクールに挑む彼らを撮ることは、全米監督協会(DGA)のルールが許さなかったのだ。

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ストーラーとベイのつながりは、Netflix映画『6アンダーグラウンド』(2019)から始まった。「世界最高のパルクール・チームを探しているなかで出会った」とはベイ自身の言葉だが、その後、コロナ禍のさなかにストーラーのメンバーであるドリュー・テイラーから「映画を作りたい」と打診されたという。

過酷な練習を重ね、美しいスタントに挑み、自ら生死の危険にさらされる男たち。ベイは映画的な魅力を感じたが、そこにはさまざまな課題があった。SXSWのステージで、ベイは当時を振り返っている。

「“君たちがしていることを私は一切知りたくないし、また容認することもできない”と言いました。“君たちのやっていることは違法だ、完全な間違いだ”と。私は何も関わっていないし、プロデューサーでも監督でもなかった。“私のことは忘れて、あとで連絡をくれ。映像を見て判断する”と話したんです。」

ルールを何ひとつ破ることなく、ストーラーのドキュメンタリー映画を監督にはどうすればいいのか。ベイのチームがその方法を検討した結果、映画の完成までには5年の期間を要した。ベイは撮影現場に一切立ち会えず、撮影期間はストーラーのメンバーとも一切連絡を取ることができなかったという。やむをえず、「すべてを撮影すべし」という指示をストーラー側に出した。

「観客のほとんどはパルクールを知りません。私は観客目線で物事を見ているので、人間を見せる必要があると考えました。彼らの兄弟愛や、“なぜこんなことをするのか?”に注目したわけです。彼らは死と隣り合わせだから、そこを観客は知りたいはずだと。[中略]私の仕事は大きなビジョンを考え、膨大なライブラリー映像に目を通し、登場人物を絞り込むこと。彼らは自分たちの包括的な物語を作る方法を知らなかったのです。」

激しい特殊効果とVFXでおなじみのマイケル・ベイ作品だが、今回はすべてが本物だ。身体を張ったジャンプも、その美しさも、恐ろしい事故や怪我も。命がけのチャレンジをいとわなかった若さも、年を重ねて身体が以前ほど動かなくなってきたことも。映画は、「絶対に真似しないでください」という注意書きから始まるという。

ベイに企画を持ちかけたドリュー・テイラーは、「安全ではない、許可も取らないことが私たちの魅力です」と言い切る。「命綱を装着したら、それはスタントマン。もはやストーラーではありません」。そのこだわりゆえに、ベイも「『トランスフォーマー』より大変だ」と吐露したそうだ。

ちなみに、数ヶ月をかけて数千時間ぶんの映像を確認したベイ本人は意外にも高所恐怖症。インタビューのなかでは、「今でも観ていると気持ち悪くなります」と笑っている。

Source: Variety(1, 2), The Hollywood Reporter

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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