『ウィキッド』上映中の盗撮・SNS拡散が相次ぐ事態に ─ 違法行為か、口コミ効果か?『デッドプール&ウルヴァリン』がきっかけとも

同じくVarietyは、「コロナ禍を経て、映画館での行動は変わってしまった。(若い観客は)映画と別の関係をもっている。彼らにとってはすべてがコンテンツなのだ」と嘆く業界幹部の声を紹介している。今夏の大ヒット作『デッドプール&ウルヴァリン』でも盗撮映像が大量に拡散されたが、主演のライアン・レイノルズとショーン・レヴィ監督がその行為を黙認するどころか、自ら拡散してファンと交流したことが分岐点になってしまったとも。
ひとつの問題は、映画業界の一部で、“たとえ違法であれ、映像や写真の投稿にはプロモーション効果がある”との考えが存在することだ。いかなる形にせよ、SNSの写真・映像や口コミを通じて映画館の動員が増えるのであればよい……という発想は、法的問題や創作者の考え方とは必ずしも相容れずとも、いまやビジネスとしては無視できない領域なのだろう(レイノルズ&レヴィの行動は、本人たちの意図にかかわらず後者に立っている)。
ちなみに『ウィキッド』では盗撮・拡散問題のほか、「上映中にファンが歌い出す」ことも物議を醸しており、大手映画館チェーンのAMC Theatresが「上映中は歌わないよう配慮を、全員の映画体験を守って」と呼びかける事態に発展した。ユニバーサル・ピクチャーズは“シング・アロング・バージョン”を12月25日から米国公開することを決定しており、それまでは上映中の歌唱を控えるよう求めている。
映画の公開前から、アリアナ・グランデも「(一緒に)歌いたいという気持ちは理解できるし、尊重するけれど、ポップコーンや携帯電話を投げつけられるようならばやめたほうがいい」と発言。なお、『モアナと伝説の海2』に出演しているドウェイン・ジョンソンは、この問題について「歌っていい。頑張って稼いだお金を払ってミュージカルを観るのだから、ぜひ歌って」とコメントしたが、SNSでは「私たちは映画にお金を出しているのであって、観客の歌を聞くためにお金を出すのではない」「ミュージカル=歌っていいわけではない」といった激しい批判を受けている。
▼ 『ウィキッド ふたりの魔女』の記事
Source: The Hollywood Reporter, Variety, BBC