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『ワンダー 君は太陽』監督来日インタビュー 「大人や教師はいじめ向き合う力を」映画で伝えたいメッセージとは

映画『ワンダー 君は太陽』スティーヴン・チョボスキー監督

俗っぽくて、「泣ける映画」と喧伝するのは好きではない。それでも、映画ワンダー 君は太陽には泣かされる。米Entertainment Weeklyの言う“涙の流す価値のある「泣ける映画」”という評には納得だ。

『ワンダー 君は太陽』は、外見に生まれつきの障がいを抱える少年をめぐる、家族や教師、クラスメイトたちのドラマを描く。主人公のオギーは、『スター・ウォーズ』が大好きで宇宙への憧れを持つ、純粋で男の子らしい少年。これまでの自宅学習をやめ、小学校5年生で初めて足を踏み入れた教室のクラスメイトみんなと仲良くなりたいという思いとは裏腹に、その外見からじろじろ見られ、避けられてしまう。家に帰るなり「どうして僕は醜いの?」と泣き出すオギー。しかし、彼の行動によってクラスメイトたちが徐々に代わっていく。

こうしたあらすじ説明から、おそらく今あなたが感じられている印象とは異なり、映画本編は驚くほど美しく、優しく、希望に満ちている。原作は、グラフィックデザイナー出身という異色の作家R・J・パラシオの処女作『ワンダー 君は太陽』。2013年に全米で発売されるやいなや、たちまち評判を呼びニューヨーク・タイムズ・ベストセラーリスト第1位にまで輝いた。

この美しい映画化を成功させたのは、『ウォールフラワー』(2012)の原作・映画化監督を務め、ディズニー実写版『美女と野獣』(2017)で脚本を手がけたスティーヴン・チョボスキー監督だ。THE RIVERでは、来日したチョボスキー監督に詳しい話を聞いた。

映画『ワンダー 君は太陽』スティーヴン・チョボスキー監督

原作の映画化、ポイントは

前作『ウォールフラワー』では、エズラ・ミラーやエマ・ワトソンといった旬の若手スターを起用し、思春期の繊細な心情を見事に捉えた。このときは、原作小説も自分で書き上げた上での映画化であったが、この度の『ワンダー 君は太陽』は全世界800万部突破の大ヒット小説の映画化。『ウォールフラワー』に比べ、映像化はさぞ難しかったかと思えば、「やりやすかったです」とあっさり。

「『ウォールフラワー』の経験もあって、原作の要素をどう映画化するかという術が分かっていたので。僕も原作が大好きで、きっとファンならこんな形で映画化するだろうという頭で作りました。

世界的ストーリー『美女と野獣』映画脚本も手がけているチョボスキーには、原作小説を映画化するにあたっての流儀や技法があるのだという。

「映画は、原作者のR・J・パラシオが主なお客さんだと思いながら作りました。原作を書いた著者本人が喜べば、ファンの読者皆さんも同じように喜べる作品になるはずだと考えていたからです。これが上手くいきました。」

ワンダー 君は太陽
© Motion Picture Artwork © 2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
映画は、主人公オギーだけでなく、その姉のヴィアを含め、複数人での視点から描かれていく。これにより、劇中の物語を様々な角度から見つめることができ、映画に厚みをもたらしているのだ。

「原作を読んでいて、ガツンとくる部分がありました。”これは人とは違う顔に生まれて学校生活に悩む少年の物語なんだな”と思いながら読み進めていくと、いきなり(主人公の姉の)ヴィア視点の話になるんですよね。つまり、オギーには彼の苦しみもあるけど、ヴィアにも悩みがあって、オギーの友だち、ヴィアの友だち、一人ひとりの悩みが彼らの目線で描かれている。素晴らしいですよ。もはや”良い本”の域を超えて、”一流の本”だなと。

しかも、原作者のR・Jが言うには、この手法は初めから考えていたわけではないんですって。書きながら自然とこうなったんだそうで。ヴィアというキャラクターが自ずと立ち上がったって言うんですよね。凄いでしょう。

どうにかして、この感覚を映画でも再現したかった。上手く描けてると良いのですが。もしも原作通りにそっくりそのまま映像化していたら、おそらく3時間くらいかかって、さすがにお客さんも退屈してしまう。でもね、本で言う3章分にあたる内容を、6行のセリフに集約させるような方法があるんですよ。僕はこの方法を25年のキャリアにしてようやく掴んだんですけど、技法として存在します。本の3章分を、100ページ分を、映像として100秒に収める。さて、どうするか。僕はいつもこんなことを考えているんです。文学も読書も大好きだから、どうすれば上手く映画化できるかなって。」

映画『ワンダー 君は太陽』スティーヴン・チョボスキー監督

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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