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【レビュー・解説】『X-MEN:アポカリプス』は「ヨハネの黙示録」の擬人化と既に再建された新世界の衝突が見どころ

黙示録とはつまりこの世の終焉と新世界の再建を指す。今作に登場するアポカリプスは、その概念を擬人化したものと捉える事ができる。

黙示録の四騎士

http://www.semprequestione.com/2016/03/alerta-as-nacoes-quatro-cavaleiros-do-apocalipse.html#.V6xSYZOLTMU
http://www.semprequestione.com/2016/03/alerta-as-nacoes-quatro-cavaleiros-do-apocalipse.html#.V6xSYZOLTMU
劇中でも語られるが、『ヨハネの黙示録』には四騎士と呼ばれる四人の騎士が登場する。それぞれに特徴と役割がある。

第一の騎士

  • 白い馬に乗っている
  • 弓と冠を装備=王、統制の概念
  • 役割:勝利の上の勝利=支配を得る

第二の騎士

  • 赤い馬に乗っている
  • 剣を装備=武力、戦争の概念
  • 役割:地上の人間に戦争をさせる

第三の騎士

  • 黒い馬に乗っている
  • 食料を制限するための天秤を装備=金の概念
  • 役割:地上に飢餓をもたらす

第四の騎士

  • 青色い馬に乗っている
  • ハデスを連れている=死の概念
  • 役割:地上の人間を死に至らしめる

アポカリプスがリクルートした4人のミュータントは、この黙示録の四騎士になぞらえている。『X-MEN』シリーズの魅力のひとつに、「現実の史実の裏に実はミュータントがいた(例:ケネディ大統領の暗殺にマグニートーが関与していた、など)」というものがあるが、今作では「ヨハネの黙示録に登場する四騎士は実はアポカリプスの四騎士が元ネタだったのかも」とされている。

今作における四騎士は、ストーム、エンジェル、サイロック、そしてマグニートーで構成される。彼らのコスチュームや髪の色から、ストームとエンジェルが第一または第三の騎士、マグニートーが第二の騎士、サイロックが第四の騎士と考えられなくもない。または映画の登場順に考えれば、最初にアポカリプスの仲間入りをしたストームが第一の騎士で、続いてサイロック、エンジェル、マグニートーとも考えられるが、それにしても彼らは勝利(支配)、戦争、飢餓、死といった役割を満たしていたようには思えないので、ここは『四騎士』という概念だけを拝借したものだと考えておくのがよさそうだ。

「すべては明かされた」

『ヨハネの黙示録』では、洗礼者ヨハネは『選ばれた者』として、人智を超えた超常的な存在によって世界の終焉の様子を幻想の形で目撃させられる。だから『黙示』なのだ。ヨハネ自身は超常的存在が伝えた終焉を文字化するための媒体にすぎない。そしてそれは預言であって、未だ現実化していない。

アポカリプスはその預言の擬人化である。だから様々な人間あるいはミュータントの身体という媒体を通じて、時代を超えて存在し続けるのだ。現実世界で黙示録が永遠に語り継がれるように。

黙示録の預言通り、アポカリプスは世界再建を望む。本作パンフレットで、ブライアン・シンガー監督はこう解説している:

「1983年に彼は目覚め、文明が世界の個々の地域、エジプトとか中国などという国単位ではなく、テレビやラジオによって世界がつながっていること、石油と権力によって個々が相互に連結していることに気づく。そこには偽りの偶像が存在し、人々は金を崇め、今や人類は神のような力とされる核兵器を所有していた。そこで、アポカリプスはこんな世界には終止符を打って、何もかも初めからやり直したいと思う。」

アポカリプスの再建動機は西暦64年にローマ帝国に自ら火を放った皇帝ネロのものと似たものだ。当時のローマは人口増加に合わせて無秩序な増築・改築が繰り返され、ネロはこれを「醜悪」だとして気に入らなかった。そして、一度ローマを全て焼き払ってから新たな都を再建しようとし、大火災を起こす。焼け跡に広大な敷地を確保すると、豪華絢爛な館を建設し満足したという。

本作でのアポカリプスは、テレビ放送を通じて現代社会の成り立ちや現状を学び、絶望と怒りに震える様子が描かれている。彼は、まずはじめに現代文明最大の誤りの象徴の一つともいえるアウシュビッツ強制収容所を吹き飛ばし、続いて地球上の全ての核弾頭ミサイルを放棄する。

世界再建を実行しようとする『革命派』アポカリプスと四騎士を阻止するのが『保守派』X-MENにあたるわけだが、本作の見どころは『黙示録がどのように否定されるか』だ。結論から言えば、アポカリプスの敗因はチャールズのセリフにあったように「お前は1人だが、私は1人ではない」からだ。こう聞くと某麦わら海賊団(ドン!)的なチープさを感じてしまうかもしれない。確かにこの点においては「結局なんじゃそりゃ」という肩透かしを喰らうポイントではある。しかし、今作の落とし所は、アポカリプスの最後のセリフに集約されているといっても過言ではない。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューさせていただきました。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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