Menu
(0)

Search

アメリカで話題沸騰「イエロージャケッツ」を日本の海ドラファンにも薦めたい ─ 「LOST」に青春ドラマとホラー要素を合わせたような評判作

イエロージャケッツ
© Showtime Networks Inc. All Rights Reserved

アメリカで人気が高くても、日本では注目度の低いドラマは多い。理由は様々あると思うが、「日本では受けない」とされるコメディやハイコンテクストな作品の場合、本国と同じように脚光を浴びるのは難しいだろう。一方で文化的知識を必要とせず、ヒットの要素があるのに話題にならないドラマは、ただ単に埋もれているだけかも知れない。そんな隠れた注目作のひとつが、「イエロー・ジャケッツ」(2021-)だ。

本作は、飛行機事故で遭難した女子サッカチームがサバイバルする‟過去”と、その生還者たちの‟現在”を描く物語。ウィリアム・ゴールディング著『蝿の王』の女子版として制作されたが、過去パートの設定をはじめ、複数の時間軸が交差するストーリー、次から次に深まる謎、予測不能な展開などから、かつて世界中で大ヒットした「LOST」を強く想起させる。しかし「LOST」はSFの色が濃かったのに対し、本作は人間の心理に焦点を当て、青春ドラマやホラーの要素を巧みにブレンドさせているのが特徴だ。

「イエロージャケッツ」あらすじは?

舞台は1996年。女子サッカーチーム「イエロージャケッツ」は、全国大会への出場を控えていた。地元の期待を背負い、大会の開催地シアトル行きの飛行機に乗り込む部員たち。離陸してしばらくすると機体は激しく揺れ、奥深い森に墜落してしまう。

イエロージャケッツ
© Showtime Networks Inc. All Rights Reserved

その25年後、生還者たちは共通の”秘密”を抱えながら生きていた。ショーナ(メラニー・リンスキー)は主婦としてひっそり暮らす一方、タイッサ(タウニー・サイプレス)は上院議員の選挙に出馬中。ナタリー(ジュリエット・ルイス)は依存症のリハビリ施設を出所し、ミスティ(クリスティーナ・リッチ)は介護士として働いていた。そんな中ショーナを除く3人に、「ここにいなくては残念」という文字がプリントされた絵はがきが届く。そこには、森の遭難者しか知らないはずの‟シンボル”が描かれていた。さらに、生還者のひとり・トラヴィスが、自殺に見せかけた死を遂げる。何者かが‟秘密”を暴露すると考えた4人は、はがきの送り主とトラヴィスの死の真相を突き止めようとする。

イエロージャケッツ
© Showtime Networks Inc. All Rights Reserved

「イエロージャケッツ」キャラクター相関が面白い

プロットからもわかるように、物語はミステリーを軸に展開する。雪深い森を駆け抜ける少女が罠にかかって死ぬ冒頭から、いくつもの謎が頭を駆け巡るだろう。そしてミステリーと同様に醍醐味になるのが、人間ドラマである。ふたつのタイムラインが交差する中で、キャラクターたちの表面的な性格や本質、関係性の変化が、くっきりと浮かび上がってくる。

イエロージャケッツのキャプテンは、「影響力を持っている」という理由だけで任命されたジャッキー(エラ・パーネル)。90年代のティーン作品でよく見るブロンド美人の人気者で、意地悪ではないが歯に衣着せぬ性格だ。親友のショーナ(ソフィー・ネリッセ)は、そんな彼女の言いなり。しかし隠れてジャッキーの恋人と関係を持っていることから、知られざる側面がありそうだ。タイッサ(ジャスミン・サボイ・ブラウン)は強気な性格で、足手まといな部員をわざと大怪我させるほど冷酷な一面もあり。ナタリー(ソフィー・サッチャー)は不良タイプだが根は優しく、マネージャーのミスティ(サミー・ハンラティ)は変わり者ゆえ、みんなからバカにされている。個性バラバラなメンバーたちが衝突する時、事態を収めるのはジャッキーの役割となっていた。

イエロージャケッツ
© Showtime Networks Inc. All Rights Reserved

しかし飛行機事故が起きると、チーム内のパワーバランスは音を立てて崩れていく。嘲笑の対象だったミスティは、救急の能力を生かして活躍。タイッサはリーダーシップを発揮し、射撃のうまいナタリーは獲物を仕留め、ショーナは見事な腕で獲物をさばく。それぞれが得意分野で貢献する中、ジャッキーはあまり役に立たない。そんな彼女の姿に、1番の味方であるはずのショーナすらモヤモヤを募らせていく。この閉鎖された環境で、生き残った面々は衝突したり、恋愛したり、重大な秘密を隠したりと、様々な人間ドラマを展開する。その様子からは嘘偽りのない、10代女子のリアルがまざまざと感じられる。

Writer

アバター画像
KyokoKyoko Okajima

アメリカ留学、大手動画配信サービスの社員を経て、ライターに転身。海外ドラマが大好きで、永遠のNo.1は『ブレイキング・バッド』と『ベター・コール・ソウル』。