『007 カジノ・ロワイヤル』監督、『007』の「成功は誰にも壊せない」 ─ Amazon買収後の継続に明るい見方

1962年から半世紀以上にわたって継続してきた長寿フランチャイズ『007』シリーズ。2021年5月、シリーズの運命を左右しかねない大きな知らせがファンの耳に入った。米Amazonが、『007』を擁するMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)の買収を発表したのだ。業界指折りのストリーミングサービスAmazon Primeを世界展開しているAmazon傘下に収まった『007』の未来に危惧を抱く人は多い。
そんな中、2006年公開の『007 カジノ・ロワイヤル』で監督を務めたマーティン・キャンベルが、このたびのAmazon/MGM買収を受けて持論を展開している。キャンベル監督といえば、1995年の『007 ゴールデンアイ』でもメガホンを取り、いわば『007』をめぐる時代の変化を知っている人物。この一大事をどう捉えているのだろうか。
米Business Insiderの取材にて、キャンベル監督は「誰も彼らの成功をぶち壊しにすることは出来ないでしょう」と話す。『007』における“成功”とは、これまでの興行的成功を指す一方で、世界中に与えてきた文化的影響やレガシーのことでもある。キャンベルは以下に続けている。
「お金の出どころに関係なく、これはバーバラ(・ブロッコリ)とマイケル(・G・ウィルソン)のフランチャイズです。彼らはたくさんの変化と体制変更を乗り越えてきましたから。」
シリーズの始まりから『007』をめぐって生じた問題は数しれないが、直近で大きく立ちはだかったのは、MGMの財政難問題だ。100年近く続く老舗スタジオとして知られるMGMは、2010年頃までに多額の負債を抱えており、『007 スカイフォール』(2012)の製作に手が出せないでいた。他の製作会社からの支援により再建の目処が立ったMGMは、その後に製作した『スカイフォール』の興行的成功などにより経営破綻から脱却したのだ。
こうした経緯を経て発表されたAmazonのMGM買収に比較的明るい見方をするキャンベルに対して、『007 スカイフォール』『007 スペクター』(2015)の脚本を執筆したジョン・ローガンは、大きな危機感を示していた。ローガンは、キャンベル同様に『007』シリーズを「ブロッコリ/ウィルソン一家が、時代の変化の中で丁寧に育て上げ、導いてきたファミリー・ビジネス」と表現しながらも、Amazonが『007』の創作に介入する可能性を指摘。このほか、Amazonが提供する消費文化がもたらす作品の価値消耗など、多岐にわたる懸念をローガンは列挙していた。
ローガンほど多くは語らなかったキャンベルだが、“誰も彼らの成功をぶち壊しにすることはできない”という発言は、Amazon傘下になったことによる負の影響を予測した上でのものであるはず。逆に言えば、金儲けのために『007』が搾取されることを防ぐための端的な警鐘でもあると言えそうだ。
Source: Business Insider