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『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』4度の公開延期も「需要上昇の可能性」との分析 ─ 興行への影響いかに

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
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ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じる最後の作品といわれる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、新型コロナウイルスの影響によって公開延期が続いている。当初は2020年2月に全世界で公開予定だったが、情勢を鑑みて4度にわたる延期を経て、現在は2021年10月8日に米国公開予定。当初の計画からは約1年8ヶ月の繰り下げとなっている。

しかし、度重なる公開延期はポジティブな影響につながるかもしれない……? 英BoxOffice Proのアナリストであるショーン・ロビンス氏は、英Metroにて「世界の映画館の状況を広く見れば、大幅な公開延期は、作品に不利益ではなく良い影響を及ぼしうる」と独自の分析を展開した。

「(『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は)ただのボンド映画としてではなく、ダニエル・クレイグが15年間にわたるボンド役を最後に演じる作品として、すでに大きな期待を集めていました。昨年(2020年)のパンデミックを受けて最初の延期が決まる前から、予告編によって十分な関心を生んでいた。だから公開日が変わり、マーケティングの変化があるたびに話題になるわけです。」

ロビンス氏は、コロナ禍が収束した後には「映画館に戻りたくてたまらない映画ファンによって、特にジェームズ・ボンドのような人気シリーズで映画体験の需要が急上昇するかもしれない」と見ている。「要するに、“会えない時間が愛育てるのさ”ということです」

もっとも『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開延期が発表されるたび、ファンの間では配信リリースを求める声もあった。事実、スタジオ各社は少なくない映画を自社サービスやNetflixに展開し、劇場ではなく自宅で楽しめる形で作品を発表している。しかし、ロビンス氏は「議論は様々ありますが、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の配信リリースはネガティブな結果に繋がりうる」との見方を示した。

「(ネガティブな結果が生まれるのは)それは劇場だけでなく、スタジオやパートナー企業、ボンド作品のイメージにとっても同じです。このブランドは59年間、時の試練や大きな経済的試練に耐えてきた。『007』は映画なるものの砦であり、ポップカルチャーの重要なシンボルであって、作品ごとに劇場ならではの共通要素が必要なのです。『007』シリーズの新作が公開されることは一大事であり、ストリーミングサービスはいまだイベント的な本質を持つ作品、映画館ならではのブロックバスターにはふさわしくありません。」

むろん、ロビンス氏の指摘がどこまで真実を突いているかはわからない。米Deadlineが2021年1月に報じたところによると、製作の米MGMはすでに配信リリースを検討し、ストリーミングサービス各社への試写を実施。配給権を6億ドルで販売することを提案したが、半額の3億ドルでも買い手がつかなかったという。また、すでに公開延期によってプロダクトプレイスメントに関する契約上の問題が生じ、再撮影の恐れがあるとも報じられている。これらの報道が正しければ、本作が置かれている状況はロビンス氏の読みよりもはるかに厳しいだろう。

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Sources: Metro UK, Deadline

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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