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2021年アカデミー賞、なぜ主演男優賞が最後だったのか ─ 受賞者欠席も「リスクは考慮されていた」

第93回 2021年 アカデミー賞 オスカー

2021年4月26日に開催された第93回アカデミー賞授賞式は、従来の授賞式とは形式を大幅に一新したものとなった。各部門の発表順を大胆に入れ替え、作品の映像をカットし、歌曲賞のパフォーマンスを授賞式からプレショーに移動し、その代わり、受賞者のスピーチから厳しい時間制限は排除されたのだ。とりわけ視聴者を驚かせたのは、式の締めくくりが作品賞ではなく主演男優賞だったこと。『ファーザー』で受賞したアンソニー・ホプキンスは式に出席していなかったため、受賞者スピーチは行われなかった。

授賞式を担当する米ABC局のロブ・ミルズ氏は、授賞式の終了後、今回の構成について「大きなリスクを背負いましたし、中には効果がなかったと思われるものもあったかもしれない」と米Varietyにて語った。その一方で、大きな手応えを感じていることも明らかにしている。

いつもとは違う、次に何が起こるのか分からないものにできたのはすごく良かったですね。最後の部門(主演男優賞)だけでなく、全体を入れ替えました。いつもだったら脚本賞は終盤の発表ですよね。それから、今回は監督賞も早くに発表しました。[中略]大切なのは、“いつもと同じだな”という感じではなく、“次はなんだろう?”と思わせることだったんです。」

もっとも、授賞式の最後を飾った主演男優賞の受賞者が不在という事態は「意図したものではなかった」という。ミルズ氏は、授賞式の製作陣が受賞者をあらかじめ知らされていないことを改めて強調。「(受賞者不在も)考えられましたが、それでもそのまま進めました。とても大胆な選択だった」と語っている。

リスクは事前に考慮されていましたし、話題になったので報われたかなと思っています。過去には(受賞者の)封筒が間違えられたこともありましたが、誰もあんなことは望んでいなかった。けれど、同じように話題になりました。見ていた方の中には、いくつかの部門を見逃したと思った方もいたかもしれません。怒った方もいたでしょうし、気に入った方もいたと思います。無関心を生まないことが大切だったんです。」

近年の慣例にならい、今回の授賞式も司会者は不在。レジーナ・キングによるシリアスなスピーチから始まったのは、まだコロナ禍のさなかであるという事実を反映したものだという。アカデミー賞授賞式のプロデューサーを初めて務めた映画監督のスティーブン・ソダーバーグは、式の中継を自らの新作として捉え、製作陣も式を一本の映画として考えた。その結果、プレゼンターは「出演者」として扱われ、画面比率や1秒あたりのフレーム数までこだわられた中継になったという。

なお、ミルズ氏は次回のアカデミー賞については「ドルビー・シアターでやらなくてもいい」と述べ、現時点では従来の形式に戻るかどうかは未定との意志を示した。「来年には(コロナ禍の)事態がより改善されるという希望はありますが、どうなるかは分かりません。誰にも予想できないことです」

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Source: Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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