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【ネタバレ】『21ブリッジ』クライマックス解説 ─ 『フレンチ・コネクション』からの影響、衣装の意図

21ブリッジ
©2019 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.

この記事には、『21ブリッジ』のネタバレが含まれています。

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『21ブリッジ』では、ニューヨーク市警のアンドレ刑事(チャドウィック)と、強盗犯レイモンド(テイラー・キッチュ)&マイケル(ステファン・ジェームズ)の追走劇が展開された。レイモンドはその途中で命を落とし、アンドレは残ったマイケルを必死で追う。

『21ブリッジ』のブライアン・カーク監督は、『ヒート』(1995)などのクライムスリラーで知られるマイケル・マンからの影響を認めている。マン監督の代表作のひとつ『コラテラル』(2004)とは、ひとつの街が舞台で、物語が一夜のうちに繰り広げられるといった点や、撮影監督のポール・キャメロンが同じといった共通点がある。

さらに興味深いことに、『21ブリッジ』と『コラテラル』は、電車の車内で追走劇の決着がつくという点でも同じだ。もっとも、カーク監督がTHE RIVERのインタビューで話したところによると、『コラテラル』よりもむしろ『フレンチ・コネクション』(1971)を参考にしたという。

『フレンチ・コネクション』はウィリアム・フリードキン監督による1971年米公開の映画で、都市を舞台とした刑事アクションの傑作に数えられている作品。同作でも、犯人逮捕のためなら手段を問わない刑事が薬物の裏取引の捜査に挑む姿が描かれており、その劇中では地下鉄でのスリリングな尾行が描かれた。

『21ブリッジ』では、電車がホームに停車している間、アンドレとマイケルが車両に乗り降りして互いの様子をうかがう描写がある。これは『フレンチ・コネクション』へのオマージュなのだと、監督は認めている。

激しいチェイスシーンの後、息を切らしながらマイケルを追い詰めたアンドレだが、そこで2人は互いに協力ができる可能性を確かめ合う。監督はこのクライマックスを「とても本能的でアドレナリン全開の展開」と振り返る。「中盤は追走劇で、やがて2人の素晴らしい役者が会話する、長くエモーショナルなシークエンスへ続いていく。映画の序盤では全く真逆のふたりだったけど、ここにくると信頼し合うようになるんです。この夜が始まった頃は、殺していたかもしれない相手とです。ハンターだった警官は、その逃亡者を救おうする。アクションや頭脳戦、感情のめぐりが、すべてひとつのシークエンスに詰まっています」。

カーク監督は、この緊迫したアクションをカメラにおさめた撮影のポール・キャメロンへの賛辞を惜しまない。「素晴らしく撮ってくれたポールには感謝です。ふたりが地下鉄の駅に駆け込む追走シーンでは、ポールが小型のカメラを用意して棒に取り付けて、それをパルクールのランナーが肩に担いで走ったんです。ポールがそのカメラを遠隔で操作していました。アクションが求めるものと撮影技法、叙情的な照明とエモーショナルなストーリーが全て合わさったシーンです」。

このシークエンスの直前、マイケルはホテルに紛れ込み、スーツに着替えている。気付けば、アンドレもマイケルも似たような姿になっている。まるで、2人は表裏一体だと示すように。

「そう、まさにその通り!まさしくその言葉(表裏一体)を使って説明していました!」と、監督は興奮気味に説明した。「真逆だったはずのふたりが、鏡写しの存在だったと気付いていくんです。私自身、それこそがこの映画の核だと思っています。相手を捕まえる/殺すことを考えている男たちや、報復・復讐に燃える男たちが、実は互いに繋がっていて、必要としあっていることに気づく。対立関係から共依存に移り変わっていくんです」。

『21ブリッジ』は公開中。

監督とのインタビュー全文はこちら

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THE RIVER編集部THE RIVER

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