【ネタバレ】Netflix版「三体」で言及されたオッペンハイマー、演出の意図とは? ─ 分かってもらえたのは「ノーランのおかげ」

この記事には、「三体」第3話『世界の破壊者』と『オッペンハイマー』のネタバレが含まれています。

Netflix版「三体」で言及された「オッペンハイマー」、演出の意図とは?
ドラマ「三体」では、優秀な科学者たちが前触れもなく自殺するという怪奇的な事件が立て続けに発生する。捜査官のクラレンス・史(ベネディクト・ウォン)は、イギリスに住む天才科学者5人に目をつけ、密かに調査を進めていた。
第3話『世界の破壊者』の冒頭では、史が新たな自殺者を発見。バスタブに頭を沈めた状態で死んだ男を見るや、「妙な自殺だな」と訝しむ同僚に、史はこう答える。「オッペンハイマーの愛人も同じ姿勢で死んだ」。
“オッペンハイマー”とは、第二次世界大戦中に推し進められた原子爆弾の開発・製造を行う「マンハッタン計画」を主導した理論物理学者、J・ロバート・オッペンハイマーのこと。オッペンハイマーには、ジーン・タトロックという愛人がいたのだが、うつ病に苛まれていたジーンは29歳の時にサンフランシスコの自宅で自ら命を絶ったとされている。発見時、ジーンは浴槽に頭を沈めた状態だったという。
「三体」製作の舞台裏について語ったプロデューサーのD・B・ワイスは、同シーンについて「オッペンハイマーの愛人を引き合いに出すことで、この男にどうしてこんなことが起きたのか、物事は見かけ通りなのか、と疑問に思ってもらいたかったのです」と意図を語っている。一方で、同じくプロデューサーのデヴィッド・ベニオフは、「どれだけの人が理解できるのだろうか?」と不安に思っていたという。
そんなベニオフが「クリストファー・ノーランのおかげです」と語るのは、ノーラン監督が手がけたオッペンハイマーの半生を描く映画『オッペンハイマー』において、ジーン・タトロックの死が詳細な経緯とともに再現されているためだ。「この瞬間をとても壮大に、すごく上手く説明してもらえましたね」とワイスも語る通り、『オッペンハイマー』を鑑賞した視聴者には、史の発言の意図が伝わったはずだ。
ちなみに『オッペンハイマー』でジーン・タトロックを演じたのは、『ミッドサマー』(2019)や『デューン 砂の惑星 PART2』(2024)のフローレンス・ピュー。端役であることをノーラン監督から謝られたというピューだが、劇中では繊細な演技で大きな存在感を放っている。