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『アメイジング・スパイダーマン』シリーズはなぜファンの間で賛否両論だったのか?

スパイダーマン映画の最高傑作といえば、これまでのところサム・ライミ監督『スパイダーマン2』(2004)が定説だったが、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)は甲乙つけがたい出来栄えである。あくまで筆者個人の好みだけで語るなら、ライミ監督の超絶技巧でヒーロー哲学が描かれる『スパイダーマン2』の素晴らしさを認めつつも、カジュアルな『スパイダーマンホームカミング』に軍配を挙げる。

スパイダーマン:ホームカミング
cMarvel Studios 2017. c2017 CTMG. All Rights Reserved.

?ただし、『ホームカミング』の評判が良いほど相対的にマーク・ウェブ版『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ(2012、2014)の存在感が薄れていくような気がしてならない。『ホームカミング』が興行収入でも『アメイジング・スパイダーマン』シリーズをあっさりと抜き去ってしまったことで、むしろ『アメイジング』への批判的な意見すら目立ってきたといえるだろう。

?しかし、自分は思う。「いや、そこまで『アメスパ』、悪くないですよ?」と。そこで、今だからこそ『アメイジング・スパイダーマン』の目指したものを冷静に振り返り、正当な評価を下したい。

『アメイジング・スパイダーマン』製作経緯とファンの拒絶反応

?『アメイジング・スパイダーマン』製作の過程は少しバタつきがあったのを覚えている。というのも、『スパイダーマン3』公開後、ファンはかなり長い間、『スパイダーマン4』の製作を信じて疑わなかったからだ。もちろん、サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演というおなじみの布陣でである。

しかしながら、待っていたのはライミの都合によるプロジェクト頓挫という結末だった。そして、やや急な形で『スパイダーマン』新シリーズの企画はスタートしたのである。この展開に、ファンは気持ちを切り替えられず、期待感をそがれてしまった部分は大きいだろう。

また、『スパイダーマン3』(2007)が歴史的傑作だった『スパイダーマン2』と比べてファンもプレスも納得させられなかったことも、新シリーズへの抵抗となった。このモヤモヤは『スパイダーマン4』で解消されるだろうと願っていたファンたちは、新シリーズ始動に懐疑的な目を向けていたのである。(自分としては『スパイダーマン3』の出来がさほど悪いものだとは思っていない)

かくして、世間のハードルを鬼のように上げてから公開された『アメイジング・スパイダーマン』に対し、旧シリーズを愛する映画ファンほど拒絶反応を示した。なにしろ、今度のスパイダーマンは「イケメン」だったのである。?

賛否両論だった美男美女による『スパイダーマン』像

新スパイダーマンに抜擢されたアンドリュー・ガーフィールドは、当時『ソーシャル・ネットワーク』(2010)や『わたしを離さないで』(2010)などの充実作に恵まれ、若手演技派としてのキャリアを固めていた注目株だった。同じくユダヤ系だったマグワイアの後を継ぎ、大作の主演を任されたのも不思議ではない。ただし、神経質な印象を与えるマグワイヤの外見に対し、ガーフィールドは正統派のイケメン俳優。スパイダーマン=ピーター・パーカーのイメージから遠く離れていたのだ。

アメイジング・スパイダーマン2
c 2014 Columbia Pictures Industries, Inc. and LSC Film Corporation. All Rights Reserved. MARVEL and all related character names: c & ? 2017 MARVEL.

特に、サム・ライミ版『スパイダーマン』はピーターの童貞ぶりが強調された演出を施していた。ヒロインへのストーカー気質、大人へのコンプレックス、正義と顕示欲との葛藤…。「童貞」とヒーローに何の関係があるのかという人もいるだろうが、『ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判〈2〉』(町山 智浩 、柳下 毅一郎、2002、洋泉社)内で指摘されているように、ライミ版においてスパイダーマンが放つ糸は精子のメタファーである。たまりにたまった若者の鬱憤を、ヒーロー行為で発散しているのがライミ版スパイダーマンの特徴だった。そして、そんなヒーローが本物の正義に目覚めていく過程にこそドラマがあったのである。

Writer

石塚 就一
石塚 就一就一 石塚

京都在住、農業兼映画ライター。他、映画芸術誌、SPOTTED701誌などで執筆経験アリ。京都で映画のイベントに関わりつつ、執筆業と京野菜作りに勤しんでいます。

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