ハリウッドから消えたアーミー・ハマー、米番組で沈黙を破る ─ 騒動後は自殺未遂、現在は「全てに感謝している」

『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015)や『君の名前で僕を呼んで』(2017)などで知られる俳優アーミー・ハマーが米ポッドキャスト番組に出演し、自身が起こした騒動を振り返った。騒動後は誹謗中傷を受け、一時は自死も考えたというハマー。ハリウッドから距離を置いていた3年の間で、その心境にはどのような変化が生じたのだろうか。
2021年、ハマーはSNSを通じて複数の女性にカニバリズム願望を伝える不適切なメッセージを送った疑惑が浮上したのち、女性から性的暴行を告発された。ロサンゼルス市警の調査も入り、出演が決まっていた全ての新作から降板している。
『ナイル殺人事件』(2022)を最後にハリウッドから姿を消したハマーは、騒動から3年、ゲストの過ちを学びとして伝えるポッドキャスト番組「Painful Lesson」にて現在の心境を語った。ハマーとは親しい友人であるというホストのタイラー・ラムジーは、はじめに報道と事実に一定の不一致があることを前置きした上で、ハマーに「もう一度立ち上がるために一番役に立ったことは何か?」と問いかけた。
ハマーは、「最初はどんなことでも受け入れ、自分自身や子どもたちにこれ以上のダメージを与えないように対処することを学んでいました」と語る。「僕にできることは、頭を覆い、首を守ることだけだと感じました。たとえ本能的に暴れたくなったとしても、外に出て“これはクレイジーだ。みんないったい何を話しているんだ”と言いたくなったとしてもです。人が僕について言っていたこと──僕が人喰い人種だということ──はとても突飛に感じました」。
そうした世間からの風当たりを受け止めてきたというハマーは「客観的に見られるようになった今は“滑稽だ”と思えるようになった」という。「“人喰い人種になるためには、人を食べなきゃいけないって知ってますか?”って感じですよ」。
その後、「どれだけ食い違いがあっても、人から何を言われようと……」と言いながら少しの沈黙を見せたハマーは、「今いる場所に感謝しています」と続けている。それまでの輝かしいキャリアを全て失ったにもかかわらず、いったい何故なのか。
「こうした全てが起こる前の僕の人生では、良い気分ではなかったからです。満足することもなかったし、自分自身に対して幸せに感じることもなかった。自尊心も抱けなかった。自分への愛の与え方、自己評価の与え方もわからなかった。でもたくさんの人からそうした全てをもらえる(俳優という)仕事を手にすることができました。だから自分ではその術を学ぶことがなかったのです。自分が嫌になったらInstagramで、自分のセルフィー投稿にぶら下がった“あなたはカッコいい”とかそういったコメントを見て、“これは気持ちが良いぞ”と思ってしまっていたんです。」
こう話した上で、スキャンダル発覚後について「グローバル規模でのヘイト」を受けたと説明。当時の心境を振り返り、「自分には二つの選択肢があると思いました。身を任せて自分が壊れるか、教訓として活かすか。当時は教訓として活かす手段や、これを教訓だと考えられる心の余裕がありませんでした」と語る。「最初の混沌から距離を置くだけでなく、その結果から全てを学び取った今、あれは恐ろしかったと思えます。自分の宿敵にさえ起こってほしくないことです」。
壮絶な経験を経たハマーには、「自分の愛する人には」同じ轍を踏んでほしくないと話す。「だからこそ、彼らにも僕が経験したこと──願わくばもっと大したことないこと──を経験してもらい、僕が学んだこと全てを学んでほしいとも思います」。
騒動後、「もうこれ以上は無理だ」と思い、海に入って自殺を試みたこともあるというハマー。それでも子どもたちのことが頭に浮かび、「そんなことはできない」と岸まで泳ぎ返したという。「最悪の状態」を乗り越えた今、ハマーは人々に救いの手を差し伸べるプログラムに参加しているそうだ。
「(プログラムは)人生で一番重要なものです。他の人のそばにいてあげることは、自分の感謝を示す方法、自分が辛かった時にしてもらったことを伝え続ける方法でもあります。自分が大変だった時、手を差し伸べてくれた人がいました。回復プログラム以外の場所で、そのように助けてくれた人を見たことがありません。」
俳優としての復帰は考えているのだろうか。ハマーは「今はどこにもいない」状態であり、「仕事も得ていませんし、誰かと面会するといったこともしていない」という。ハリウッドの「砂場で遊ぶことを今は許されていない」としながらも、「自分はアーティストです。(俳優は)自分の大好きなことで、映画を作ること以外何もしてきませんでした」と語り、創作活動を継続していく意向を明かした。
ちなみに今、ハマーは自らの手で脚本を執筆しているそう。「未来がどうなるかなんて分かりませんし、どんな反応を受けるのかわからないけど、それは僕の力の及ばないこと」と口にしながら、「他人から出来ないと言われたこと全てを信じる必要はありませんから」と意欲を燃やしている。
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