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『君の名前で僕を呼んで』性描写めぐる批判、「見方が浅い」と監督が反論 ─ 「ロマンティックな映画ではない」との見解も

君の名前で僕を呼んで
『君の名前で僕を呼んで』©Frenesy, La Cinefacture

ティモシー・シャラメアーミー・ハマー主演君の名前で僕を呼んで(2017)は、イタリアを舞台に、少年・エリオと大学院生・オリヴァーの恋愛を描いた青春映画だ。美しい映像により、同性愛を瑞々しい筆致で描いた同作は、批評家や観客から高い評価を受けた。しかし劇中には直接的な性描写がなく、それゆえに“なぜ同性同士のセックスを描かなかったのか”との批判もあった。

監督のルカ・グァダニーノは、このたびオランダの雑誌Fantastic Manにて一連の批判に反論。さらに、この映画を“ロマンティック”だと評する声にも異を唱えた。グァダニーノは「セックスを直接描かなかったことに文句を言うのはやや浅い見方だ」とまで言っている。劇中、エリオとオリヴァーの性行為をカメラが捉えなかった理由を、グァダニーノはこう説明した。

「私の見方では、あの場面で恋人たちは孤独になるのです。私が作りたかったのは、ふたつの肉体がお互いを求め合う映画ではありません。これは愛についての映画であって、セックスを淫らに描く映画でも、彼らがどんなセックスをするのかを描く映画でもない。私は彼らがどんなセックスをしていたかは知らないし、そこは問題ではないのです。」

批判の中には、同性愛の直接的描写がレーティングに引っかかるためではないか、映画のヒットを阻害することを危惧したのではないかという意見もあった。しかし、監督自身は“自己検閲をしたわけではない”と語っている。「メジャー向けの映画を作ろうとしたことは一度もないし、一般観客に我々の作品が嫌がられるかどうかを考えたこともない」といい、直接的な性描写を避けたのは、あくまでも「ふたりの性行為を描くのは(映画としての)筋が通らないと思ったから」だと述べたのだ。

そもそもグァダニーノは、『君の名前で僕を呼んで』について「ロマンティックだと思われるのかもしれませんが、私にとっては極めて悲劇的な映画」であるとの認識を強調してもいる。どうやら、監督は自らの狙いがストレートに届いていないと考えているようだ。

「エリオの誠実さはオリバーの不誠実によって破壊されるわけです。エリオが泣く時、彼はオリバーの嘘によって自分が大きな傷を負った事実を嘆いている。それは私たちの人間関係にも日常的に起こること。これはロマンティックな映画でも、同性愛をありきたりに描く映画でもありません。そのように観るのは少々ばかげていると思います。皮肉なことです。」

グァダニーノは現在、再びティモシー・シャラメを主演に迎えた最新作『Bones and All(原題)』の公開を控えている。同作はカニバリズムをテーマとした青春恋愛ホラーで、グァダニーノにとっては『君の名前で僕を呼んで』や『サスペリア』(2018)、ドラマ「僕らのままで」(2020)を経た一種の集大成になることも期待されている。まだ謎に包まれている同作こそを、グァダニーノは「極めてロマンティックな映画」だと予告した。

「ロマンティシズムとは我々の中に、我々の関係性の中にあるもの。もちろん人を食べる恋人たちを描く映画ですから、そうした側面はありますし、あらゆる意味で激しい作品です。けれども、むしろ登場人物の感情の激しさ──愛の不可能性──を描いていると思います。」

同作には『WAVES/ウェイブス』(2019)『エスケープ・ルーム』(2019)のテイラー・ラッセルが出演し、脚本を『サスペリア』でタッグを組んだデヴィッド・カイガニックが執筆。『君の名前で僕を呼んで』を「ロマンティックではない」と語ったグァダニーノの“本気”がいよいよ炸裂することになるか?

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Source: Fantastic Man

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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