『キング・アーサー』予習!アーサー王の物語「伝説」「史実」それぞれから描いた作品を振り返ってみる

ガイ・リッチー監督の映画『キング・アーサー』(2017)が2017年6月17日に日本で公開されます。
タイトル通り同作は、1000年以上にわたりヨーロッパで伝承されてきたアーサー王伝説を下敷きにしたもので、亡き王の息子と知らずにスラム暮らしを送る青年アーサーが伝説の聖剣エクスカリバーを手に王位奪還を目指す冒険活劇です。
アーサー王伝説はヨーロッパで成立した中世の騎士道物語で、物語は2つの側面を持ちます。
1つはファンタジックな英雄伝説としての側面。
もう1つは歴史的事実として考証されている英雄譚としての側面です。
今回は『キング・アーサー』公開前の予習として、アーサー王伝説とそれを描いた映像作品をいくつか取り上げていこうと思います。
ファンタジーとしてのアーサー王伝説
ウェールズの修道僧ネンニウスの記した『ブリトン人の歴史』(紀元800年頃)には「アーサー王の一撃で960人が倒れた」との記述があるそうです。
アーサー王の助言者であった魔術師マーリンは魔術で度々アーサー王を救い、ストーンヘンジはマーリンが魔術で組み上げたものであるとの逸話が残っています。
円卓の騎士の1人で、アーサー王の甥にあたるガウェインは朝から正午まで持てる力が3倍になったそうです。
円卓最強の騎士と誉れ高いランスロットは2度に渡る一騎打ちでそのガウェインを退けたそうです。
同じく円卓の騎士の1人であるベイリンはロンギヌスの槍をそれとは知らずに振るって一振りで城を崩壊させ、円卓の騎士トリスタンの弓フェイルノートは狙った相手に必中したとの逸話が残っています。
トリスタンとパロミデスはイゾルデという女性を巡って争うライバルでしたが、のちに2人は友情を育むようになります。
少年漫画もかくやというような展開です。
こういった物語の毛色が大作映画と相性が悪いはずもありません。
実際、アーサー王と円卓の騎士の物語は直接的、間接的に映画やアニメ、テレビドラマなどの題材に度々なっています。
実写映画の代表例としてジョン・ブアマン監督の『エクスカリバー』(1981)が挙げられます。
トマス・マロリーの『アーサー王の死』(1470年頃)をベースとした同作は、魔術があり妖精が存在し、アーサー王が聖剣エクスカリバーを
振るって戦う典型的なファンタジーとしてのアーサー王伝説の映画化です。
また、アーサー王の助言者であるマーリンを主人公としたイギリスのテレビドラマ『魔術師 MERLIN』(2008-2010)も毛色こそ違いますが
ファンタジーとしてのアーサー王伝説と言えます。
アーサー王伝説のこうしたファンタジックな要素は日本が得意とするアニメ、ゲームとも大変に相性が良いです。
その代表例と言えるのが「Fate」シリーズでしょう。
コンピューターゲーム『Fate/stay night』(2004)を皮切りに数々のスピンオフ作品を生み出し、様々な媒体にメディアミックスが展開されている同シリーズは10年以上にわたって愛されている息の長いコンテンツです。
美少女ゲームというフォーマットに合わせるために、アーサー王が金髪碧眼の美少女だったという大胆なアレンジがなされていますが、ベースとなったアーサー王伝説が2次元メディアと好相性である例と言えるでしょう。
歴史的事実としてのアーサー王伝説
一般的にアーサー王は複数の人物をモデルとした架空の人物であるとの説が根強いです。
が、その一方で実在の人物であったという歴史的考証が行われている存在でもあります。
実際、アーサーについて触れられている歴史書も存在します。
最も古いものは紀元600年頃にウェールズの詩人アナイリンが記した『ゴッディン』という詩で、多くの敵を倒したある英雄の話が、「アーサーではないが」という注釈付きで記されており間接的にアーサー王の存在に言及しています。
直接的に「アーサー」という名前の英雄に言及したものでは紀元700年頃にアダム・ナンという人物が記した『聖コロンバ伝』が存在します。アーサーはダルリアダ国のアエダン・マック・ガブライエンの息子で他部族と勇ましく戦い若くして戦死したと記されています。
アーサー王伝説の発祥は紀元500年頃と言われていますが、元々西ローマ帝国の支配下にあったブリテン島は西ローマの衰退によりサクソン人の侵略に晒されていました。
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