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哀しくも美しい、醜くも愛しい…『”異形”の恋』特集

10月29日公開の映画「デスノート Light up the NEW world」。

“ノートにを書かれた人間は死ぬ”という斬新な内容と、謎が入り組んだすり路ストーリーに 原作漫画、10年前に公開された藤原竜也、松山ケンイチ主演の映画共に根強い人気を誇る作品です。
そんな「デスノート」シリーズには多くの死神が登場します!地球にデスノートを落とし、混沌とした世界に陥れた張本人「人間て面白ッ!」が口癖のリューク。
弥海砂に対する執着と愛情を見せる真っ白な美しいメスの死神、レム。
そして海砂に死神界から恋をする優しくおとなしいジェラス。登場回数は少ないものの、その”死神なのにピュアな恋をしている”といういじらしい役どころ(?)で印象に残るキャラクターかと思います。

かつて”異形なモノ”が恋をするという恋愛映画はたくさん作られてきました。幼い頃に観た時はただの不思議な物語だなあという感想、でもヒトとは少し違う彼らが心を通わせ、誰かを思う姿にやはり心が動かされたものでした。
ちょっとだけ大人になった今そんな彼らのラブストーリーを観ると、なんとも言えない「めっちゃ良い!」という気持ちに。今回はそんな”異形なモノの恋”の映画の魅力について、改めて考えていきたいと思います。

ジェラス-「デスノート」

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冒頭でもご紹介しました「デスノート」のジェラス。弥海砂にこっそり恋をしている彼は ストーカーに襲われそうになった海砂を助けます。しかし「人間を助けてはいけない」という死神界のルールを破ったがために死んでしまいます。

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http://quotetion.com/anime/quotetion.com/anime/anime-death-note-gelus.html

ジェラスの外見は小さくて(ちょっと汚い)ぬいぐるみのよう。端切れをつなぎ合わせて作られたような、でこぼことした弱そうな見た目が特徴です。
恋をすると誰でも、心に弱さが生まれてしまうものなのではないでしょうか。自分のことをどう思っているのか分からないという寂しさ、焦燥感。やるせない気持ち。嬉しい、楽しいという感情の他にも たくさんの負の感情も生まれることかと思います。
ジェラスは感情の1つ1つを脆くもくっつけた 恋心の擬人化のよう。不安定なバランスをとりながら 片方だけの眼で好きな人を見つめるジェラス・・・「切ない!かわいい!」となってしまうのも納得ですね。

エドワード-「シザーハンズ」

ティム・バートン監督の大ヒットファンタジー「シザーハンズ」。生みの親である博士が死んでしまったため、手がハサミのまま残された人造人間エドワード。彼は引き取られた家の美しい娘、ウィノナ・ライダー演じるキムに恋心を抱くようになります。そしてキムも最初はエドワードを不審がるものの、だんだんと彼の優しさに惹かれていくように。

シザーハンズの名場面といえば、キムがエドワードに「抱きしめて」と言い ハサミで彼女を傷つけていることが分かっているエドワードが「できない」と伝えるシーン。愛する人を抱きしめたいのにその腕で抱くことができない・・・多くの人が涙したシーンかと思います。
エドワードの見た目は普通とは違うものです。顔も青白く、なんていったって手にはハサミが。凶器が備わっているその腕を見て、皆が怖がり遠ざけてしまいます。しかし彼の心は誰よりも純粋無垢で、優しく温かいもの。「シザーハンズ」は偏見や差別を越えて、心と心を通わせる大切さを教えてくれる物語なのです。

好きな人を優しく包みこんであげたいという思いやりの気持ち、そして好きな人を傷つけてしまうかもしれないという恐怖は人間全員が持っているもの。恋をする人皆の心の中に、エドワードは存在しているのかもしれません。

ファントム-「オペラ座の怪人」

“異形の恋”と聞いて、真っ先にこの作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。幾度となく映画化され、ミュージカルは何十年も愛されている不朽の名作です。
オペラ座に住み着く、その容貌から怪人と呼ばれる男ファントム。彼は美しい若手歌手、クリスティーヌに恋をしていて 彼女を助けようともし、また無理にでも自分のものにしようと恐ろしい行動をとるようになります。

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怪人、ファントムの仮面の下の醜い顔。嫉妬、孤独、憎悪・・・ファントムが隠しているのは自らの恵まれない生い立ちから生まれてしまった悲しい感情です。
彼は最初”優しさ””思いやり”といった感情ではなく、圧力でクリスティーヌを自分のものにしようとします。
彼が抱えている自分に対する大きなコンプレックス、そして自分の中の邪悪な気持ちと 彼女を思う一途な愛の間での葛藤。
私達は誰でもコンプレックスを抱えています。時にはそこから他の人に対する妬みや嫉みも生まれてしまうこともあるはずです。ファントムの抱える苦悩や寂しさ。怪人という外見ではありますが そんな彼が彼なりに人を愛そうとしもがき続ける。その姿にきっと多くの人が共感し、長年愛されている作品となっているのでしょう。

ここでご紹介した彼らは皆孤独を抱えています。彼らの姿は不思議なものですし、決して現実世界にはいないものですけれど 誰しも恋をすると 彼らのように孤独を感じるもの。悩み、苦しみ、その中でいたわりの気持ちを見つけ、相手と向き合っていく・・・
完璧ではないからこそ応援したくなる、いじらしくなる。弱さが見えているからこそ共感できる。
寂しく美しく不思議な”異形のモノ”の恋。ぜひいま一度観返してみてはいかがでしょうか?

Writer

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Moeka Kotaki

フリーライター(1995生まれ/マグル)