『アバター』の3Dが疲れにくい理由 ─ 「目ではなく脳の疲れ」キャメロン、HFR処理で負担を軽減

ジェームズ・キャメロン監督『アバター』シリーズといえば、映画の世界にそのまま没入するような異次元の3D映像が最大の魅力。観客は劇場で3Dメガネをかけることで、パンドラの世界に飛び込むような体験ができる。
一方、「3D映画を観ると疲れる」という懸念も少なくない。筆者も乗り物酔いにめっぽう弱く、3D鑑賞を躊躇う気持ちはわかる。とりわけ『アバター』シリーズは長尺で、最新の『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は3時間15分もある。
ところが『ファイヤー・アンド・アッシュ』を鑑賞してみると、これまでの3D映画に比べて“3D酔い”や“3D疲れ”を感じにくかった印象がある。

キャメロンによれば、人間の脳には多様な役割を持つニューロン(神経細胞)が存在するが、その中には左右の目のズレ=視差を専門に処理するニューロンがあるという。一般に「3D映画は目が疲れる」と言われがちだが、キャメロンはそれを否定する。問題は目ではなく、視覚野で立体情報を統合する脳の処理負荷にあるのだ。
“3D酔い”や“3D疲れ”の正体を突き止めたキャメロンは、これを軽減するためにハイフレームレート(HFR)処理を採用。映像のフレーム数を増やすことで動きの間が細かく補間され、脳が無理なく立体情報を統合できる状態を作り出すことで、3D体験そのものの質を向上させている。
キャメロンはこのアプローチについて、米Discussing Filmで次のように語っている。
「人間には、難しい処理をたくさんするニューロン(神経細胞)がたくさんあるんです。そして、視差を専門に処理するニューロンもある。だから、“3Dを見ると目が疲れる”というのは、実際には目の疲れではなく、脳の疲れなんです。なぜなら人間は、視覚野において世界を立体的に認識するための情報統合を行っているから。
ところが、物体の垂直方向の輪郭が飛び跳ねている場合、視差に敏感なニューロンは発火できない。脳がそれを処理できなくなるんです。だから、3D体験を損なうようなストロボ効果があるのなら、そこはハイフレームレートを使っています。そうすれば映像が補完されて、我々が実際に3D映像として処理できるレベルになり、脳の疲労もなくなるからです。」
『アバター』シリーズの3D映像が、長尺でありながらも高い没入感を保ち続けられる理由は、ここにある。それは観客が無理を強いられていないからであり、気づかぬうちに脳が自然とパンドラの世界を受け入れているからだ。
『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は公開中。
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Source:Discussing Film


























