気鋭監督コゴナダが『スター・ウォーズ』を撮った理由 ─ 「小津安二郎のような作品を撮りたくても、アメリカでは理解してもらえない」
『コロンバス』(2017)『アフター・ヤン』(2021)の気鋭監督コゴナダは、なぜ『スター・ウォーズ』の世界に挑んだのか。
マーゴット・ロビー&コリン・ファレル主演の監督最新作『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』は、『コロンバス』(2017)『アフター・ヤン』(2021)というインディペンデント映画で注目されたコゴナダにとって初めてのスタジオ映画。製作にあたっては、「スター・ウォーズ:アコライト」(2024)における経験が影響を与えていたという。

コゴナダが監督を務めたのは、ドラマシリーズ「スター・ウォーズ:アコライト」の第3話『運命』と、第7話『選択』の2エピソード。THE RIVERの取材に対し、「とても興味深い経験でした」と振り返っている。
「(『スター・ウォーズ』は)スケールやツール、機材がまったく違いました。自分にとっては、可能性を探るための実験だったと思います。いずれスケールの大きい作品を撮りたいと思ったとき、どんなものになるのか、自分に何ができるのかを知る訓練をさせていただいた気持ちです。」
『スター・ウォーズ』のオファーが届いたことは、コゴナダ自身にとっても驚きだったという。引き受けた理由のひとつは、「監督としての力を伸ばすため」だった。
「僕が本当に作りたい映画──たとえば小津(安二郎)映画のような作品を撮りたくても、アメリカでは誰にも理解してもらえないし、なかなか難しいのが現実です。それに(『アコライト』では)『アフター・ヤン』に出演してくれたジョディ・ターナー=スミスとも再び仕事をしたいと思いました。」

「アコライト」でマザー・アニセヤ役を演じたターナー=スミスは、『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』にも出演。友人の結婚式で偶然出会ったデヴィッド(ファレル)とサラ(ロビー)は“不思議なドア”をくぐって自らの過去を再体験するのだが、そのドアに導くGPSの声を演じている。
CGやVFXを駆使した『スター・ウォーズ』の世界を経て、『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』では再び実写撮影に回帰し、CGではなく観客の想像力に委ねる手法を多用した。「実際にやってみて感じたのは、やはり僕はCGの世界よりも物理的でミニマルな作品が好きだということ。再び映画に戻ってきて、もっと削ぎ落とされた、想像力に委ねる作品をつくりたいと強く思いました」。
コゴナダは『スター・ウォーズ』を貴重な経験として受け止めつつ、映画作家としては現在の路線を今後も続けていく意志を示した。「『スター・ウォーズ』を撮り、スタジオ映画を作ったあと、またインディペンデント映画をやりたいと思ったのです。(次回作は)具体的には言えませんが、自分が映画監督になりたいと願った、まるで原点回帰のような作品になります」という。

『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』を撮ったことで、コゴナダは「どこかほっとしました」と語る。もっとも、本作にも自分なりのチャレンジはあった。『コロンバス』『アフター・ヤン』とは異なり、長編映画では初めて、自分の手で編集を担当していない。
「僕の目指すリズムは独特なので、本当は編集作業が大好きで、とても大切にしているんです。けれど『スター・ウォーズ』と本作では、自分で編集しませんでした。テレビドラマは監督が編集を担当できないという条件があったわけですが、今回も“自分以外が編集したらどうなるか”という実験だった。もちろん監督として作業には立ち会いましたが、とても良い勉強になりました。」
映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』は、2025年12月19日(金)公開。

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