1度観れば抜け出せない、醒めない。『美しい悪夢』を描いた映画特集

11月26日より公開の、ルシール・アザリロヴィック監督による映画「エヴォリューション」
その島には少年と女性しかおらず、少年たちは”何かの行為”の対象となっている。その謎を解明しようとした時、悪夢は始まった・・・美しい映像とともに送られる衝撃的なストーリーに、公開前から早くも話題となっています。

“美”と”恐怖”、両極端に存在するものですが、切っても切り離せない存在といえます。美しいものが恐ろしく見えるのか、美しさから恐怖が生まれるのか、悪に美しさを感じてしまうものなのか。

今回は「エヴォリューション」前に観たい、様々な”美しい悪夢”が描かれた作品を振り返っていきたいと思います。

エコール

ルシール・アザリロヴィック監督といえばまずこの映画でしょう。「エコール」。
森の中の学校に連れてこられる少女たち。外界との関わりはほぼ無し。唯一あるとすれば、定期的に行われるバレエの発表会ぐらい。

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深い深い森の中に少女たちが締め切られて生活している!なんて、背徳感にゾクゾク震えるまさに”美しい悪夢”ですよね。
とても静かで、不気味で、映像が美しい作品です。美少女たちが身にまとう白い制服や色分けされたリボン、陶器のようになめらかな足。少女期の純真無垢な心と、外界=大人の世界への興味。成長することによって少しずつ失われていくであろう清らかさ。異性への憧れ。そんなものが詰め込まれた映画だと思います。

幻想的で美しい映像と、意識しなくともどこか官能的に見えてしまう少女たち。どこか罪悪感を覚え、見てはいけないものをずっと覗いているかのような感覚・・・かわいらしく、無垢で残酷な世界にどっぷりと浸かることができるのが「エコール」なのです。

蠅の王

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疎開中に飛行機が攻撃を受け無人島に墜落し、取り残されたのは少年たちだけ。最初は大人がいない世界を自由に堪能していた彼らでしたが、だんだんと仲間割れしやがて悲劇は起こる・・・
スティーブン・キングも絶句したと言われているまさに”裏十五少年漂流記”です。

様々なキャラクターの少年たちから見る人間社会の縮図や、誰しも持っているであろう”野蛮性””残酷さ”について描かれている「蠅の王」。

なぜこの”少年少女たちだけでどこかに閉じ込められている系映画”に人々はひどく惹かれるのでしょうか。まだ世の中のことをよく分からない、無垢な状態だからこそ見える人間の本能、大人になった時には忘れてしまっている 成長途中の複雑な心理状態。解明できないような、言い表せないような感情や行動に どこか底知れない恐怖を覚え、興味を感じるからでしょうか。

この「蠅の王」「エコール」と同じ状態も、もし登場人物たちが大人だったらこんなに”悪夢”のような作品ではなかったでしょう。おそらくある種のエロティック作品か、ホラーサスペンスですよね。子供たちだからこそそこまで感情移入もせず、どこかファンタジックで、儚く幻想的 まさに”悪夢”を見ている状態におちいるのだと思います。

パンズ・ラビリンス

ダークファンタジーの代表作、「パンズ・ラビリンス」。
舞台は内戦後のスペイン。母親とともに継父が立てこもる山奥に越してきた少女オフェリア。そこで彼女は1匹の妖精と出会い、不思議な世界へいざなわれることになります。

子供の時に観たらトラウマになるんじゃないかというぐらい、ファンタジーにしては恐ろしい生物が登場します。目が手のひらについている怪物、ペイルマンに追いかけられるシーンは私もトラウマになりかけました。オフェリアを導く妖精、パンもぱっと見は悪魔のような出で立ちです。

ところで子供の頃、まだ世の中の事や大人の事情なんてよく分からない頃でも”不穏な空気”って敏感に感じ取っていたと思いませんか?例えば両親の喧嘩や、大人たちが深刻そうに話し合っている姿・・・全ては理解できていなくても、幼心にふと”現実を見つめる瞬間”があったと思います。
主人公オフェリアの継父はかなり残忍な性格。母親もなかば彼に依存している状態で、きちんとオフェリアのことを見ようとしていない。そしてオフェリアも、それをちゃんと感じ取っている。

彼女は摩訶不思議な世界に迷いこむことによって、悪夢のような現実世界をなんとか耐え そして不思議な夢のおとぎの国の住人となっていったのでしょう。夢見がちな少女の頃に降りかかる、孤独で残酷な厳しい現実。「パンズ・ラビリンス」悪夢なのはおとぎの世界か、現実か。恐ろしいのは化け物か、人間か・・・人間の欲や卑劣さを具現化した、醜く幻想的な物語だと思います。

子供のファンタジックな世界と大人の現実的な世界。それがある空間に混在した時、”美しい悪夢”は生まれるのかもしれません。もっとも「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のような 楽しい悪夢は大歓迎ですけれど。

About the author

フリーライター(1995生まれ/マグル)

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